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第14章 裏切り
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噂は、確かに消えた。
学園の空気も、社交界の視線も――何事もなかったように、静まっていた。
それでも。
何かが、変わってしまった気がしてならない。
「殿下は、今週ずっと王宮に詰めておられるそうですよ。」
そう告げた友人の声が、どこか遠くに聞こえた。
「……そう、ですか。」
アランは、教室の窓越しに空を見上げる。
春の陽射しが眩しい。
けれど、その光の中に――金の瞳がいない。
思えば、ここ数日、殿下の姿をまったく見ていない。
授業にもいない。
視察も延期になった。
王太子としての務めがあるのだろう。
彼が国を背負う存在であることは、誰よりも知っている。
けれど、
それでも――少し、胸が痛かった。
「……やっぱり、俺のせいか?」
思わず、呟いてしまう。
あの噂。
殿下の立場を危うくしかねない軽率な話題。
自分の不用意な行動のせいで、彼が不必要な距離を置いたのだとしたら――
(本当に、俺は何をしてるんだ。)
机の上に、殿下から借りた資料が置かれていた。
視察用の報告書。
几帳面な文字が並ぶその紙面を指でなぞる。
「……あの人は、きっと怒ってる。いや、怒るのも当然だ。」
(それに、彼は知らないだろうけど、王太子と庶民出のヒロインの間を、悪役令息が掻き乱したっていう……)
自分で言って、苦笑が漏れた。
どんな筋書きだ。
ゲームだったら、完全にバッドエンド確定じゃないか。
――それでも。
殿下の声が、脳裏に蘇る。
「君を守りたい。」
あの言葉を思い出すたび、胸の奥が熱くなる。
苦しくて、息が詰まりそうで。
「……いやいやいや、落ち着け俺。
これは誤解だ。恋とかじゃなくて、妹のためで――」
言い訳の途中で、自分でも気づく。
その“妹のため”を、いつからこうも繰り返しているのか。
窓の外で、鐘が鳴った。
放課の音が、やけに遠い。
机の上に手を置き、ゆっくりと息を吐く。
(殿下……あなたは、いまどこで、何を考えているんですか。)
その問いは風に溶け、答えは返らなかった。
学園の空気も、社交界の視線も――何事もなかったように、静まっていた。
それでも。
何かが、変わってしまった気がしてならない。
「殿下は、今週ずっと王宮に詰めておられるそうですよ。」
そう告げた友人の声が、どこか遠くに聞こえた。
「……そう、ですか。」
アランは、教室の窓越しに空を見上げる。
春の陽射しが眩しい。
けれど、その光の中に――金の瞳がいない。
思えば、ここ数日、殿下の姿をまったく見ていない。
授業にもいない。
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王太子としての務めがあるのだろう。
彼が国を背負う存在であることは、誰よりも知っている。
けれど、
それでも――少し、胸が痛かった。
「……やっぱり、俺のせいか?」
思わず、呟いてしまう。
あの噂。
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(本当に、俺は何をしてるんだ。)
机の上に、殿下から借りた資料が置かれていた。
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几帳面な文字が並ぶその紙面を指でなぞる。
「……あの人は、きっと怒ってる。いや、怒るのも当然だ。」
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「……いやいやいや、落ち着け俺。
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言い訳の途中で、自分でも気づく。
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窓の外で、鐘が鳴った。
放課の音が、やけに遠い。
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その問いは風に溶け、答えは返らなかった。
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