妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊

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第25章 リリィの静かな理解

25-5

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王城のバルコニーに立つと、ちょうど日の名残が王都を赤く染めていた。
政務を終えたばかりの私は、深呼吸して胸の緊張をほどく。

隣にいるのは、公爵家のフローラ様。
偶然にも――いえ、“同じ道を目指す者同士”として、最近はこうして自然と肩を並べる機会が増えている。

「……今日も慌ただしかったですわね」

「ええ。でもこうして空を眺める時間があると、すこし心が落ち着きますわね」

フローラ様が優しく笑う。
その視線は、王都のずっと奥に位置する学院の塔を見ていた。

――その頃。
同じ夕空の下、学院では執務を終えた殿下とアランが、星の灯りを背に言葉を交わしているらしい。

そんな噂を聞いたのは、つい先ほどのこと。

「……お兄様と殿下、まだ学院で執務の確認を?」

「ええ。戴冠式の細かな調整をしているそうですわ。殿下も、お兄様も、本当にお忙しいと思います」

胸の奥がそっと熱を帯びる。

――忙しくても、すれ違っても。
それでも、同じ空の下で想い合えるなら。

「フローラ様。……あのお二人の未来を、信じたいですわね」

「ええ。距離があっても、想いは残りますもの」

彼女の言葉は、たおやかで、強い。

その横顔に、私も小さく微笑み返した。

「お兄様……殿下と、きっとまた――」

言葉は風にさらわれる。
だけど、それでいい。想いは言葉より深くあるから。

そして私たちは、沈みゆく空の色の向こうに、未来の光を確かに感じていた。

「……最高の物語にしてみせますわ」

扇の影でそっと口元を隠し、私は静かに呟いた。
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