妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

第26章 フローラの告白

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「いいえ。まだお話の途中ですわ」

フローラのその一言で、俺の心拍数はもう上限突破した。
え、まだ続くの？　何を？　どこまで？　地獄の延長戦ですか！？

「その……続きを、聞いてもいい？」
「ええ。少しだけ、私の気持ちを伝えたくて」

彼女は紅茶のカップを置き、静かに息を吸った。
雨の音がやけに遠く聞こえる。

「最初は驚きました。けれど、見ているうちに……わかったんです」
「わかったって、何を……？」
「お二人の間にあるものが、恋だと」

言ったああああ！！
しかも“お二人”って！　複数形で確定してきた！！

「ま、待って！　そ、それは誤解——」
「いいえ、誤解ではありませんわ」
「いやいや誤解であってくれ頼む！」

フローラは首を振り、真っ直ぐに俺を見つめた。
「最初は、ただの勘違いかと思いました。けれど……見ているうちに、どうしてか胸が熱くなって」

……え、胸が？
やめて、その感想、ちょっと怖い。

「アラン様」
「な、なんだい」
「むしろ、尊いと思ってしまったんです」

……。
…………。

……ちょっと待て。
尊いって言った今！？　しかも“むしろ”ってなんだ、“むしろ”って！！
それ、完全に方向を間違えてる理解じゃないか！？

「え、えっと……それは、どういう意味で？」
「お二人とも、とても真っ直ぐで、誰も傷つけようとしない。
　それって、愛の理想形じゃありませんか？」

真顔でそんなこと言わないでくれ。
“愛の理想形”とか言われたら、ツッコミよりも先に心臓が跳ねる。

「だから、私、応援したいと思ってしまいました」
「応援！？　えっ、えっ、誰を！？　俺？　殿下？　どっち！？」
「両方ですわ」
「まとめるな！」

笑いを堪えるように口元を押さえたフローラが、本当に楽しそうに微笑む。
いや、笑うところじゃない。こっちは人生の倫理観が崩壊してるんだぞ！？

「ふふ、すみません。けれど本当に……素敵なんです」
「す、素敵て……！」
「恋って、形じゃないんですね」

その一言で、俺は完全に沈黙した。
……ああ、この人、どこまでいっても真っ直ぐなんだ。
怒られなくて安堵したと思ったら、今度は尊敬されてる。
なんかもう、世界がバグってる気がする。

「……理解が深すぎる！」

思わず叫んだ俺を見て、フローラはくすりと笑った。
雨はまだ、静かに降り続いている。
だけど、さっきよりもずっと柔らかく聞こえた。