オマエが俺の犬になるのなら

第31話 陽キャなリア充

にこにこしながら浜井をトモのところまで連れてきた由良は
「結羽ゆうくんもトモくんと仲良くなりたいって言ってるんだけど…」
屋上へ置き去りにされたこともあってか気まずそうな表情でそんなことを言う。

あぁ、うざい。

やっぱり陽キャでリア充なヤツと関わるとこういうことになる。
そうそう、こういうふうになるのが嫌だったから由良とは関わりたくなかったんだ。

しかも“結羽”って…。

トモは過去を思い出し、自分が独占したくてたまらなかった水島大和の幼馴染みでいちばん仲が良かったユウと同じ読み仮名であることに気づいた途端に襲ってくる吐き気。

ユウにも酷いことをした。

こいつと関わったりなんかしたら、名前を呼ぶたびにいろいろと思い出して仕方ない。
絶対に無理だ。

「俺、浜井結羽はまいゆう。仲良くしてよ」

笑うと急に人懐っこくなる結羽がトモに手を差し出す。
無視をするわけにはいかないが、仲良くなるつもりもないため戸惑ってしまうトモ。

すると結羽はサッと手を引っ込めて
「あ、ごめん。いきなり握手とかきついよね？俺、ちょっと人との距離感バグってるとこあるからさ、変なことしてたら注意して」
笑顔で言う。

それにしても、由良とはまったくと言っていいほど見た目のカテゴリーが異なる。
何キッカケで仲良くなったんだ？

でもまぁ2人も陽キャなリア充ってところは似てるし、仲は良さそうだし…。
良さそう…だし…？

だったらなおさら…。
なおさら？

こんなヤツと仲良くなれるわけがない。

トモが無視している隣で
「俺のことは結羽って呼んで。俺はトモって呼ぶね」
「え…？呼び捨て？僕だってまだトモくんって“くん”付けなのに？」
結羽と由良がモメはじめた。

なのでトモは
「うるさい。あっちへ行け。そして俺はお前のことは浜井と呼ぶ。永遠にな」
シッシと手で追い払った。