オマエが俺の犬になるのなら

第32話 面倒臭い2人

由良と結羽に精いっぱい意地悪く言って追い払ったはずだったのに、なぜか2人はいまだにトモの近くで口論を続行。

「どうして先に仲良くなった僕が“クン”付けで、結羽くんが“トモくん”って呼ぶのさ」
「は？別にいいじゃん。由良は呼び捨てとかするキャラじゃないからハードル高いかもしれないけど、俺にとったら“クン”付けのほうが難しいんだよ。慣れなくて」

…いつまで、この呼び捨てするしない論争を続けるつもり？

そう思いながら2人を呆れて見つめていたら
「なぁ、呼び捨てでいいだろ？！」
「ダメだよね？！トモくん！」
ものすごい剣幕で判断を煽ってきた。

はぁ…面倒臭い。

「そんなのもう、どっちでもいいわ」

トモが答えた瞬間
「ほらみろ！へへへ」
結羽が得意気に笑い
「え～！ひどいよ、トモくん！」
由良が嘆く。

あぁ、この面倒臭い感じ誰かに似てると思ったら、洸紀と吉井結香か。
俺の過去を知っているにもかかわらず、声をかけたり心配してくれたりと仲良くしてくれる唯一の存在。

いつも2人セットみたいにいっしょにいて筋肉のことばっかり話している脳筋バカだけど、やさしくていいヤツらだと徐々にわかってきた。
でも、あの2人は俺の過去も知っていて、さらに学校外の人間だから仲良くできるだけのこと。

俺の過去を知ったらこいつらだって…。
だから絶対に仲良くなってはいけない。

トモがチラリと2人を見たとき。

「そんなスネるなって。ヨシヨシしてやるから」

結羽が由良の頭を撫でようとするのが見えて、なぜかトモはその手を掴んでいた。