オマエが俺の犬になるのなら

第37話 あんたドMだろ？

「どう考えてもあんたは命令する側じゃなくて、服従するほうだよね？」

目の前にいるのは、確かに由良。
でも雰囲気はまるで違う。

普段は柴犬みたいに愛想を振りまく草食系男子。
けれど、いま目の前には鋭い目つきをした猛獣みたいな由良がいる。

怖い顔をしてじっとトモを見つめていた由良はフッと嗤ってペロリと耳を舐めた。

「…ひゃぁっ…」
思わず変な声が漏れてビビる。

きのう屋上で強引なキスをされたときよりも、もっと鋭い威圧感。
じっとこちらを見つめている目から視線が逸らせない。

喉の奥に不自然な感じで溜まっていく空気すら上手く呑み込めずに焦る。

…待って。
なんで俺、いま、こんなことになってんの？

人畜無害みたいな由良が俺のことをドM扱いしてるとか、おかしいだろ。

俺は命令する側じゃなくて服従するほう…？
ふざけんな。
そんなこと、考えたこともなかったわ！

いまなら防犯ブザーやスタンガンも取り出せる位置にある。
すぐに手が届く場所。
なのに…。

「信じられないって表情しててウケる」

クスリと由良に嗤われて
「なんなら俺が証明してあげようか？あんたがドMだってこと」
そう言われたとき、背筋がゾクゾクっとした。