オマエが俺の犬になるのなら

第45話 ヒプノセラピー

「うわぁ、広い家！豪邸じゃん…。浜井の家って、お金持ちなの？って思ってるだろ？」
結羽の家に到着するなりニヤニヤしながらそんなことをトモに言ってきたのは、由良。

まだいつもの可愛くて一生懸命な由良ではなく、いつトモの唇やカラダを襲ってくるかもしれないドSなサイコパスのほう。

「…はぁっ…？」

いつもの由良だったら絶対に言わないようなことをベラベラと言って困惑させてくる。

まぁ、広いとも豪邸だとも、お金持ちなのかとも思ったけど。
思ったことを口に出されると、なんだか心の中を読まれているようで恥ずかしい。

そして、
「あ、結羽、俺、あのプレミアムクッキーにして。お取り寄せのやつな。なんだっけ、高田屋？」
図々しすぎる。

でもまぁ、ここまで自由奔放にズバズバ言えたら生きるのもラクなんだろうなぁ…とも思う。

玄関を入ってすぐの吹き抜けに掃除の行き届いた広い空間。
通された部屋へ入ると賞状や表彰式の写真などがたくさん並べられていた。

「それ、結羽のじぃちゃん」
クッキーを準備しに行った結羽の代わりに由良が写真を指さして答える。

「へぇ、なんかすごい人っぽいな」
「あぁ。心理学の権威だった」

「…だった？」
「亡くなったからな。最近」

由良が言ったとき
「だからこのドSなサイコパスの由良に手を焼いてんのよ」
クッキーと紅茶を持った結羽が部屋へ戻ってきた。

「…え？」

「由良が二重人格みたいになってる原因、ウチのじぃちゃんなんだわ。厳密に言うと、ヒプノセラピーってやつが原因」