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第5話
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キレた! さしものあの冷静な第二王子のレオン様もわなわなと怒りが沸いてきて仕方なかったのだろう。
実の兄の頬を思い切り殴りつけ吹き飛ばす。殴られたアホはそのまま水平に飛んでいき、そのまま壁に激突して白目を剥いて気絶していた。
誰も心配になって駆け寄らない辺り、それがもうあの男の人望なんだろう。
「いっそ王家の恥として処刑でもした方がマシなくらいだ!!」
レオン様はかなり本気でお怒りらしく、拳を握りしめて震えている。
何を見せられたのか? この場に居る全員がそう思った事だろう。
かくして問題を起こした男は連行され、その後も何事も無かったかのようにパーティは再開され無事に終了した。
それから数日後、ティムとヴェラの婚約が正式に破棄されたと噂で聞いた。
また、この件で途轍もない恥を晒したティムは、事の詳細を聞いてブチ切れた父親によって王位継承権をはく奪され、何処か遠くの僻地に追いやられることも決まったのだと。
その話を聞いて「そりゃそうだろう」と密かに思う。あんな馬鹿を誰が次の王にしたいか。
けれど私はその話には興味はない。ただティムから解き放たれて良かったな、と思うだけだ。
(それはそうと……)
自宅の庭、そこにあるテーブルの向こう側をチラリと見る。
そこには可憐な乙女の姿があって、その目はキラキラと輝いているように見えた。
「マーシャさん! 私、決めましたわ! 今回の件でレオン様の高潔さに感服し、将来あの方のお傍で手伝いをするべく大学ではより一層政治について学ぶことにしました!」
「そ、そうですか……」
何故かあの出来事を切っ掛けにして、学園を卒業した今更になって交友が始まった私とヴェラ。
彼女が進学、それも私と同じ所に行くなんて今まで知りもしなかったのだけれど。
まあいいか、新しい友達が出来たと思えば。
「そういえばマーシャさん、貴女の婚約者様とはどのようなお方なのです? 貴女があれ程情熱的に語るのだから余程素敵なお方なのでしょうね」
あの時の言い分が情熱的に聞こえたのか。ただの一般論を語っただけなのに。
やっぱりあの元婚約者の非常識加減に中てられて、ちょっとその辺りが緩くなってるのかも。
「う~ん、まあそれほど熱く語るような関係では無いと思いますが……」
なんて遠慮がちに切り出すも、ぶっちゃけて言えば彼の事は好きだ。
だからその後、普通に惚気てしまってヴェラを感激させてしまった。
は、恥ずかしからその内容は割愛させて頂くって事で。ね?
そういえば、最近思い出した事があった。
前世でやっていた乙女ゲームの一つ、その内容だ。
学園の卒業パーティー、そこで起こったちょっとした事件から物語は始まる。
そこで出会った主人公と攻略相手の名前が――。
実の兄の頬を思い切り殴りつけ吹き飛ばす。殴られたアホはそのまま水平に飛んでいき、そのまま壁に激突して白目を剥いて気絶していた。
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レオン様はかなり本気でお怒りらしく、拳を握りしめて震えている。
何を見せられたのか? この場に居る全員がそう思った事だろう。
かくして問題を起こした男は連行され、その後も何事も無かったかのようにパーティは再開され無事に終了した。
それから数日後、ティムとヴェラの婚約が正式に破棄されたと噂で聞いた。
また、この件で途轍もない恥を晒したティムは、事の詳細を聞いてブチ切れた父親によって王位継承権をはく奪され、何処か遠くの僻地に追いやられることも決まったのだと。
その話を聞いて「そりゃそうだろう」と密かに思う。あんな馬鹿を誰が次の王にしたいか。
けれど私はその話には興味はない。ただティムから解き放たれて良かったな、と思うだけだ。
(それはそうと……)
自宅の庭、そこにあるテーブルの向こう側をチラリと見る。
そこには可憐な乙女の姿があって、その目はキラキラと輝いているように見えた。
「マーシャさん! 私、決めましたわ! 今回の件でレオン様の高潔さに感服し、将来あの方のお傍で手伝いをするべく大学ではより一層政治について学ぶことにしました!」
「そ、そうですか……」
何故かあの出来事を切っ掛けにして、学園を卒業した今更になって交友が始まった私とヴェラ。
彼女が進学、それも私と同じ所に行くなんて今まで知りもしなかったのだけれど。
まあいいか、新しい友達が出来たと思えば。
「そういえばマーシャさん、貴女の婚約者様とはどのようなお方なのです? 貴女があれ程情熱的に語るのだから余程素敵なお方なのでしょうね」
あの時の言い分が情熱的に聞こえたのか。ただの一般論を語っただけなのに。
やっぱりあの元婚約者の非常識加減に中てられて、ちょっとその辺りが緩くなってるのかも。
「う~ん、まあそれほど熱く語るような関係では無いと思いますが……」
なんて遠慮がちに切り出すも、ぶっちゃけて言えば彼の事は好きだ。
だからその後、普通に惚気てしまってヴェラを感激させてしまった。
は、恥ずかしからその内容は割愛させて頂くって事で。ね?
そういえば、最近思い出した事があった。
前世でやっていた乙女ゲームの一つ、その内容だ。
学園の卒業パーティー、そこで起こったちょっとした事件から物語は始まる。
そこで出会った主人公と攻略相手の名前が――。
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