54 / 96
【第二部】
54、人のことより自分のことをどうにかして
しおりを挟む
「ねぇ一花、」
やたらスマホばっかり見ている一花が気になって、何気なく一花のスマホの画面を見る。
「いっちゃん、昨日はありがとう。すごく楽しかったよ。まさかいっちゃんがデートOKしてくれるとは———」
「! か、勝手に見ないでよ」
画面に表示されていたメッセージを読み上げると、一花はあわてて画面を隠す。その横顔はほんのり赤い。んん?
「え、何デートって。聞いてないんだけど」
「言おうと思ったけど、アンタが慧とばっかりいちゃついてたから話す暇なかったの」
「何でよ~。電話でもメッセージでもしてくれたらよかったじゃん。一花のためならいつでも時間作るのに。言ってよ~」
誰とデートしたのか知らないけど、話してもらえなかったことがちょっとショックでむくれていると、一花はそんな私を横目で見る。
「ごめんって。急に決まったしさ。まだ付き合ってるわけじゃないから」
「まだってことはこれから付き合う可能性あるってこと~?」
「それはまだ分からないけど。一回デートしただけだし、どうなるか分からない」
「で? 誰? 私の知ってる人?」
「慧と同じ経済学部だから、たぶんのんは知らないと思う。バイト先が同じなの」
「経済か、じゃあ知らないかな。写真とかないの?」
「ない」
考える素振りもなく、即答されてしまってちょっと凹む。どんな人か知りたいのに~。
「でもデートOKしたってことは、その人は一花的にはナシではないんだ?」
「そうなるかな。一年の時にも一回告白されてその時は断ったんだけど、ずっと友だちでいてくれたんだ。松尾先輩と完全に切れたって話したら、また告白してくれてね。松尾先輩とも終わったし、そんなに言ってくれるんだったら、まずはデートしてみようかなって」
「なるほどね。その人は一花のことずっと好きだったわけね」
「ニヤニヤするのやめてもらっていい?」
一花の話を聞いてるうちに、勝手に顔がニヤニヤしてたらしい。だって、さいっこうに楽しいじゃん。
一花嫌そうな顔しながらも、ちょっと照れて顔赤くなってるし。なんか可愛い♡
「ごめんね、いっちゃん♡」
「……。アンタって、本当に人煽るの大好きだよね」
「今頃気づいた?」
呆れたような目を向けてきた一花にえへっと笑いかけると、顔をしかめられてしまった。意外とシャイなとこあるよね、一花も。
「ね、デートは楽しかったの?」
「まあ……、うん。でも大学入ってからずっと松尾先輩と付き合ったり別れたりしてたから、松尾先輩以外の男の人と二人で遊ぶの久しぶりなんだよね。高校の時以来? 久しぶりすぎて、どんなテンションで行けばいいのか分からなかった」
「分かる」
こういうのって間が空いちゃうと、どうすればいいのか分からなくなるんだよね。私も慧と付き合ってから初めてしたデートは半端なく緊張してたし。
「付き合うことになったら紹介してね」
「もし付き合うことになったらね」
「次もありそうなんでしょ?」
「たぶんね」
「また感想聞かせてね。楽しみ~♡」
「何でアンタがそんなに楽しそうなの?」
「だって、人の恋の話って楽しいじゃん。聞いてるだけでワクワクしちゃう」
「人のことより、まずは自分のことをどうにかして」
「それね~、自分のことになると急に気が重くなるんだよね。
真面目な付き合いって、やっぱり苦手だなぁ。身体だけの関係の方がずっと楽」
そう言うと、一花は両手を上げてため息をつく。もう何言っても無駄だと思われてるよね、これは。
そんなことを話しているうちに先生がきて、クーラーがガンガンに効いた教室で新学期最初の授業が始まった。
やたらスマホばっかり見ている一花が気になって、何気なく一花のスマホの画面を見る。
「いっちゃん、昨日はありがとう。すごく楽しかったよ。まさかいっちゃんがデートOKしてくれるとは———」
「! か、勝手に見ないでよ」
画面に表示されていたメッセージを読み上げると、一花はあわてて画面を隠す。その横顔はほんのり赤い。んん?
「え、何デートって。聞いてないんだけど」
「言おうと思ったけど、アンタが慧とばっかりいちゃついてたから話す暇なかったの」
「何でよ~。電話でもメッセージでもしてくれたらよかったじゃん。一花のためならいつでも時間作るのに。言ってよ~」
誰とデートしたのか知らないけど、話してもらえなかったことがちょっとショックでむくれていると、一花はそんな私を横目で見る。
「ごめんって。急に決まったしさ。まだ付き合ってるわけじゃないから」
「まだってことはこれから付き合う可能性あるってこと~?」
「それはまだ分からないけど。一回デートしただけだし、どうなるか分からない」
「で? 誰? 私の知ってる人?」
「慧と同じ経済学部だから、たぶんのんは知らないと思う。バイト先が同じなの」
「経済か、じゃあ知らないかな。写真とかないの?」
「ない」
考える素振りもなく、即答されてしまってちょっと凹む。どんな人か知りたいのに~。
「でもデートOKしたってことは、その人は一花的にはナシではないんだ?」
「そうなるかな。一年の時にも一回告白されてその時は断ったんだけど、ずっと友だちでいてくれたんだ。松尾先輩と完全に切れたって話したら、また告白してくれてね。松尾先輩とも終わったし、そんなに言ってくれるんだったら、まずはデートしてみようかなって」
「なるほどね。その人は一花のことずっと好きだったわけね」
「ニヤニヤするのやめてもらっていい?」
一花の話を聞いてるうちに、勝手に顔がニヤニヤしてたらしい。だって、さいっこうに楽しいじゃん。
一花嫌そうな顔しながらも、ちょっと照れて顔赤くなってるし。なんか可愛い♡
「ごめんね、いっちゃん♡」
「……。アンタって、本当に人煽るの大好きだよね」
「今頃気づいた?」
呆れたような目を向けてきた一花にえへっと笑いかけると、顔をしかめられてしまった。意外とシャイなとこあるよね、一花も。
「ね、デートは楽しかったの?」
「まあ……、うん。でも大学入ってからずっと松尾先輩と付き合ったり別れたりしてたから、松尾先輩以外の男の人と二人で遊ぶの久しぶりなんだよね。高校の時以来? 久しぶりすぎて、どんなテンションで行けばいいのか分からなかった」
「分かる」
こういうのって間が空いちゃうと、どうすればいいのか分からなくなるんだよね。私も慧と付き合ってから初めてしたデートは半端なく緊張してたし。
「付き合うことになったら紹介してね」
「もし付き合うことになったらね」
「次もありそうなんでしょ?」
「たぶんね」
「また感想聞かせてね。楽しみ~♡」
「何でアンタがそんなに楽しそうなの?」
「だって、人の恋の話って楽しいじゃん。聞いてるだけでワクワクしちゃう」
「人のことより、まずは自分のことをどうにかして」
「それね~、自分のことになると急に気が重くなるんだよね。
真面目な付き合いって、やっぱり苦手だなぁ。身体だけの関係の方がずっと楽」
そう言うと、一花は両手を上げてため息をつく。もう何言っても無駄だと思われてるよね、これは。
そんなことを話しているうちに先生がきて、クーラーがガンガンに効いた教室で新学期最初の授業が始まった。
0
あなたにおすすめの小説
桜に集う龍と獅子【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
産まれてから親の顔を知らない松本櫻子。孤児院で育ち、保育士として働く26歳。
同じ孤児院で育った大和と結婚を控えていた。だが、結婚式を控え、幸せの絶頂期、黒塗りの高級外車に乗る男達に拉致されてしまう。
とあるマンションに連れて行かれ、「お前の結婚を阻止する」と言われた。
その男の名は高嶺桜也。そして、櫻子の本名は龍崎櫻子なのだと言い放つ。
櫻子を取り巻く2人の男はどう櫻子を取り合うのか………。
※♡付はHシーンです
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
堅物上司の不埒な激愛
結城由真《ガジュマル》
恋愛
望月かなめは、皆からオカンと呼ばれ慕われている人当たりが良い会社員。
恋愛は奥手で興味もなかったが、同じ部署の上司、鎌田課長のさり気ない優しさに一目ぼれ。
次第に鎌田課長に熱中するようになったかなめは、自分でも知らぬうちに小悪魔女子へと変貌していく。
しかし鎌田課長は堅物で、アプローチに全く動じなくて……
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる