65 / 105
告白
しおりを挟む
「あなたを守ることはフィルングとの約束だ。彼の最初で最後の願いだ。だから何がなんでも叶えたいと思った。彼の力になれることがあるなら、俺が持つ全ての権力を使って実行しようと決めていた。だが、今は違う。俺があなたを守りたい。フィルングに頼まれたからではなく、俺がこの手で、あなたを守りたいんだ」
手が燃えるように熱い。いつもそうだ。握ってくる彼の手はいつも熱くて。
空気がひんやりしている中で握る彼の手の温度に勘違いしてしまいそうになる。この手に安心しているのだと。
真っ直ぐすぎる気持ちにアストリッドは唇を噛んでかぶりを振った。
いつもなら困った顔をするだけだったが、今日は違う。拒絶のように首を動かすその様子にザファルが表情を歪める。
「……あなたには守るべきものがたくさんあって、私は、その中の一部になる覚悟がありません」
「俺が望んだことではない」
「それでも、今が現実です。あなたが望んだことではなくても、あなたは皇帝で、六人の妻を持ち、大切な息子がいる。それはあなたが望んだことではなくとも、あなたが守るべきものなのです」
「俺が欲しいのはあなただけだ!」
初めて聞くザファルの大きな声にアストリッドは目を見開いた。切実な訴えが自分への想いであることに思わず目を閉じた。
思い出すのはファリドの涙と訴え。子供を不安にさせ、泣かせてまで手に入れていいものなどあるはずがない。
ほんの小さな、それこそ、川底に沈む砂金のように小さな粒なら、押し殺して消してしまえばいい。いっときの迷いさえも起こらないように。
「陛下、そのお気持ちはどうか、勘違いとして処理してください。私はあなたを愛することはできません。私が生涯愛するのはフィルングただ一人ですから」
わかっている。わかっていたことだ。死者に勝てるはずがない。永遠の愛を彼女に植えつけて死んでしまったあの男にはどう足掻いても勝てはしない。
アストリッドはこれからもフィルングを愛し続ける。届かぬ想いだからこそ募っていく。その愛はいつしか恋へと戻るかもしれない。返事のない一方的なもの──片思いとして続いていくのかもしれない。それでも、その想いを抱え続けている。
「それでもいい。俺はそんなあなたを愛している」
だからこそ伝えなければと思った。邪険にされるかもしれない。疎ましさに顔を歪められるかもしれない。それでも、ザファルはもうなりふり構っていられなかった。
この散歩が終われば、アストリッドは距離を取るだろう。
容易に想像がつくからこそ、抱え込んでいた想いを伝えることにした。
「あなたがこれからもフィルングを愛し続けることはわかっている。あの男を忘れられるはずがない。俺もそうだ。彼がくれた笑顔も優しさも全て褪せることなく覚えている。あなたがすぐにフィルングを心の奥にしまい込んで次の恋に走るなんて思ってはいない。一生、彼を愛し、一生、彼に恋をし続けるはずだ」
「陛下……」
「それでいい。私はフィルングを愛し続けるあなたを愛している」
「どうして……」
今にも泣き出しそうな顔で想いを伝えてくるザファルにアストリッドは戸惑っていた。
彼の想いはわかっていたし、充分すぎるほど伝わっていた。でも応えないようにしていた。答えるべきではないとわかっていたから。
親が決めたとしても彼には妻がいる。息子がいる。愛せなくても守るべき存在であることは変わらない。
あの清らかな涙を裏切ってはいけない。その想いがアストリッドの中に根を張ってしまった。
「泣かないで」
手を伸ばして頬に触れると一筋の涙が手を濡らす。
ファリドのように泣きじゃくるわけではないが、その涙はアストリッドの胸を痛いほどに締めつけた。
「愛してくれなくていい。だが、傍にいてくれ。俺があなたの傍にいることを許してほしい」
頬に添えられたアストリッドの手を握り、頬を押し付けるザファルが子供のように見えた。ファリドと同じ、泣いて懇願する子供。
これほどまでに誰かを想ったことはない。アストリッドに恋をしたとき、ザファルはまだ十代だった。誰を見てもアストリッドと比べてしまい、中身も知らないのに「彼女だったら──」と妄想ばかり働かせていた。
手に入れたと傲慢になるつもりはない。だが、手が届く場所に来てくれた、居てくれる相手が自ら立ち去ろうとしているのをスマートに見送ることは情けなくもできなかった。
「私は……」
ザファルの切実な願いが、彼女の心の奥で何かを揺さぶっていた。
フィルングへの愛は確かにある。眩しいほどの思い出も永遠に色褪せることのない、宝石のような宝物として胸に刻まれている。
だが、ラフナディールに来て過ごした時間の中で、深い悲しみを包み込む愛情を感じていたのも確かだ。
「私は、誰かを不幸にしてまで幸せになりたくないんです。でも、あなたといることで得る幸せは多くの人を傷つけてしまうと知っている以上、それは選べません」
その言葉が、ザファルの心に深く刺さった。
アストリッドの優しさ。それは彼が愛した彼女の最も美しい部分でもあった。
でも同時に、それが今、二人を引き裂こうとしている。
「あなたはどうしたいんだ?」
ザファルが静かに問いかける。
「他人のことを考えた上での発言ではなく、あなたの気持ちを聞かせてほしい」
その問いに、アストリッドは開きかけた口を閉じた。
本当はどうしたいのか。心の奥底で何を願っているのか。
言った言葉は嘘ではない。フィルングを愛し続け、その愛が消えることは一生ない。
しかし──
「私は……」
震える声で始めかけた言葉が、途切れる。
「あなたと一緒にいると、安らぎを感じます」
ザファルの目に希望の光が宿り、握る手に力が入る。
「でも、それだけです」
嘘ではない。誤魔化しでもない。これは本音だとザファルにはわかった。とても穏やかな声をしているから。耳心地のいい声で、諦めろと言われているような気分になる。
ザファルの身体がゆっくりと前へと傾き、アストリッドの肩に額が乗った。ずっしりと重たい体重の一部を受け止めながら背中を撫でる。
「ごめんなさい、陛下」
ザファルは返事をしなかった。
二人の間に、重い沈黙が流れる。
ザファルは彼女の手を握ったまま必死に言葉を探していた。
どうすれば、彼女の傍にいさせてもらうことができるのか。
どうすればもっと深くまで自分の想いが届くのか。
「好きだ、アストリッド」
アストリッドは返事をしなかったが、ザファルは気にしなかった。
女々しいと自分でもわかっている。しかし、こんなときだけカトラは何も言わない。ルィムと並んで二人の様子を見守っている。
「好きなんだ」
どこまでいくのか。いつ戻るのか。何も決まっていない夜の散歩。
座れてしまいそうなほど美しい形をした三日月と星空を見上げながら何度も何度も繰り返される告白をアストリッドはただ聞くだけだった。
手が燃えるように熱い。いつもそうだ。握ってくる彼の手はいつも熱くて。
空気がひんやりしている中で握る彼の手の温度に勘違いしてしまいそうになる。この手に安心しているのだと。
真っ直ぐすぎる気持ちにアストリッドは唇を噛んでかぶりを振った。
いつもなら困った顔をするだけだったが、今日は違う。拒絶のように首を動かすその様子にザファルが表情を歪める。
「……あなたには守るべきものがたくさんあって、私は、その中の一部になる覚悟がありません」
「俺が望んだことではない」
「それでも、今が現実です。あなたが望んだことではなくても、あなたは皇帝で、六人の妻を持ち、大切な息子がいる。それはあなたが望んだことではなくとも、あなたが守るべきものなのです」
「俺が欲しいのはあなただけだ!」
初めて聞くザファルの大きな声にアストリッドは目を見開いた。切実な訴えが自分への想いであることに思わず目を閉じた。
思い出すのはファリドの涙と訴え。子供を不安にさせ、泣かせてまで手に入れていいものなどあるはずがない。
ほんの小さな、それこそ、川底に沈む砂金のように小さな粒なら、押し殺して消してしまえばいい。いっときの迷いさえも起こらないように。
「陛下、そのお気持ちはどうか、勘違いとして処理してください。私はあなたを愛することはできません。私が生涯愛するのはフィルングただ一人ですから」
わかっている。わかっていたことだ。死者に勝てるはずがない。永遠の愛を彼女に植えつけて死んでしまったあの男にはどう足掻いても勝てはしない。
アストリッドはこれからもフィルングを愛し続ける。届かぬ想いだからこそ募っていく。その愛はいつしか恋へと戻るかもしれない。返事のない一方的なもの──片思いとして続いていくのかもしれない。それでも、その想いを抱え続けている。
「それでもいい。俺はそんなあなたを愛している」
だからこそ伝えなければと思った。邪険にされるかもしれない。疎ましさに顔を歪められるかもしれない。それでも、ザファルはもうなりふり構っていられなかった。
この散歩が終われば、アストリッドは距離を取るだろう。
容易に想像がつくからこそ、抱え込んでいた想いを伝えることにした。
「あなたがこれからもフィルングを愛し続けることはわかっている。あの男を忘れられるはずがない。俺もそうだ。彼がくれた笑顔も優しさも全て褪せることなく覚えている。あなたがすぐにフィルングを心の奥にしまい込んで次の恋に走るなんて思ってはいない。一生、彼を愛し、一生、彼に恋をし続けるはずだ」
「陛下……」
「それでいい。私はフィルングを愛し続けるあなたを愛している」
「どうして……」
今にも泣き出しそうな顔で想いを伝えてくるザファルにアストリッドは戸惑っていた。
彼の想いはわかっていたし、充分すぎるほど伝わっていた。でも応えないようにしていた。答えるべきではないとわかっていたから。
親が決めたとしても彼には妻がいる。息子がいる。愛せなくても守るべき存在であることは変わらない。
あの清らかな涙を裏切ってはいけない。その想いがアストリッドの中に根を張ってしまった。
「泣かないで」
手を伸ばして頬に触れると一筋の涙が手を濡らす。
ファリドのように泣きじゃくるわけではないが、その涙はアストリッドの胸を痛いほどに締めつけた。
「愛してくれなくていい。だが、傍にいてくれ。俺があなたの傍にいることを許してほしい」
頬に添えられたアストリッドの手を握り、頬を押し付けるザファルが子供のように見えた。ファリドと同じ、泣いて懇願する子供。
これほどまでに誰かを想ったことはない。アストリッドに恋をしたとき、ザファルはまだ十代だった。誰を見てもアストリッドと比べてしまい、中身も知らないのに「彼女だったら──」と妄想ばかり働かせていた。
手に入れたと傲慢になるつもりはない。だが、手が届く場所に来てくれた、居てくれる相手が自ら立ち去ろうとしているのをスマートに見送ることは情けなくもできなかった。
「私は……」
ザファルの切実な願いが、彼女の心の奥で何かを揺さぶっていた。
フィルングへの愛は確かにある。眩しいほどの思い出も永遠に色褪せることのない、宝石のような宝物として胸に刻まれている。
だが、ラフナディールに来て過ごした時間の中で、深い悲しみを包み込む愛情を感じていたのも確かだ。
「私は、誰かを不幸にしてまで幸せになりたくないんです。でも、あなたといることで得る幸せは多くの人を傷つけてしまうと知っている以上、それは選べません」
その言葉が、ザファルの心に深く刺さった。
アストリッドの優しさ。それは彼が愛した彼女の最も美しい部分でもあった。
でも同時に、それが今、二人を引き裂こうとしている。
「あなたはどうしたいんだ?」
ザファルが静かに問いかける。
「他人のことを考えた上での発言ではなく、あなたの気持ちを聞かせてほしい」
その問いに、アストリッドは開きかけた口を閉じた。
本当はどうしたいのか。心の奥底で何を願っているのか。
言った言葉は嘘ではない。フィルングを愛し続け、その愛が消えることは一生ない。
しかし──
「私は……」
震える声で始めかけた言葉が、途切れる。
「あなたと一緒にいると、安らぎを感じます」
ザファルの目に希望の光が宿り、握る手に力が入る。
「でも、それだけです」
嘘ではない。誤魔化しでもない。これは本音だとザファルにはわかった。とても穏やかな声をしているから。耳心地のいい声で、諦めろと言われているような気分になる。
ザファルの身体がゆっくりと前へと傾き、アストリッドの肩に額が乗った。ずっしりと重たい体重の一部を受け止めながら背中を撫でる。
「ごめんなさい、陛下」
ザファルは返事をしなかった。
二人の間に、重い沈黙が流れる。
ザファルは彼女の手を握ったまま必死に言葉を探していた。
どうすれば、彼女の傍にいさせてもらうことができるのか。
どうすればもっと深くまで自分の想いが届くのか。
「好きだ、アストリッド」
アストリッドは返事をしなかったが、ザファルは気にしなかった。
女々しいと自分でもわかっている。しかし、こんなときだけカトラは何も言わない。ルィムと並んで二人の様子を見守っている。
「好きなんだ」
どこまでいくのか。いつ戻るのか。何も決まっていない夜の散歩。
座れてしまいそうなほど美しい形をした三日月と星空を見上げながら何度も何度も繰り返される告白をアストリッドはただ聞くだけだった。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】エレクトラの婚約者
buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー
エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。
父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。
そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。
エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。
もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが……
11万字とちょっと長め。
謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。
タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。
まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います
真理亜
恋愛
ここセントール王国には一風変わった習慣がある。
それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。
要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。
そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、
「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」
と言い放ったのだった。
少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる