17 / 24
17 元副会長、保留にする
しおりを挟むファンクラブ。
親衛隊とは違うのか。
確かに親衛隊という字面よりは、もっとフランクで取っ付き易いイメージではある。
「しの、あると便利だよ。」
ルプスがニコニコしながら言うが、お前…そんな、コンビニか便利グッズみたいに…。
「便利って?」
「ゴハン持ってきてくれる。」
「…そんな事で他人を使っちゃ駄目だろ…。」
「ん~…洗濯してくれたり」
「無償労働を強いるな。」
「だってぇ…」
僕とルプスの遣り取りを見ていた5人は、ソワソワしながら口を挟んできた。
「あのっ!」
ネコチャン。(定着)
君達の方がファンクラブが出来そうな程に可愛いが。
「ファンクラブあると、ルプス様の仰る通り便利だと思います!」
「と言うと?」
僕が彼らに向いて首を傾けると、何故か一瞬場が沸いた。何だ。
それから、コホン、と小さく咳払いして話し出したのは、先程のクール子犬…黒髪の綺麗な日生くんだった。
「例えばのお話ですが、佐藤様をよく思わない人達や、他の親衛隊やファンクラブからの嫌がらせなどが発生しにくいです。
個人ではなく支持団体が背後にあると、折衝を図り易い傾向があるんです。」
「なるほど…?」
それは確かに、そんなものかもしれないな。
例えばの話というより、確実にあの時敵を作ってそうなのだ。
「失礼ながら、生徒会の親衛隊の皆様は、少し面倒な方が多いので 万が一事を構えるとなるとそれはもう、姑息で稚拙な嫌がらせに御身を晒す事になってしまいます…。」
やっぱりそうなんだ~。
叔母の話が真実味を増して来て、意図せず遠い目になってしまう。逃げたい。逃げられないなら、引き篭もりたい。
「しかし万が一の有事の際にも僕らファンクラブがいれば何かと細やかなケアを…。」
「しかしそれは、君達の負担が増えるという事では?」
僕が一番引っかかるのはその点だ。
すると日生君は答えた。
「そこはご心配無く。
推し活なので。」
「趣味ですのでっ!」
「御姿を拝見できますだけで眼福!」
「お声を聴ければ涅槃に遊ぶが如き心地!」
「息して下さってるだけで至福!」
「「「「「生まれてくださりありがとうございます!!!」」」」」
「………。」
「わぁ~、すご~い!熱烈~!」
「…………。」
ルプスは傍でキャッキャしているが、僕は半目になってしまう。
嘘だろ。
この世に生まれて17年、呼吸してる事をこんなに褒められた事は無かった。
有り難いけど、伯父さんの次くらいにこのノリきっついな。
いや、そういうのってもっとこう…生徒会役員かルプスか、何なら園田君達くらいのルックス偏差値ならば納得もできようものを、何故僕。
それを質問したら、
「何を仰るのですかっ!!
佐藤様はお美しいですっ!!」
もうおわかりだと思うけど、今のセリフはネコチャンだ。
その後に他の子達が続ける。
「小さな頭、ノーブルさを感じる端正なお顔立ち、知的差を演出するお眼鏡…」
「演出じゃないからね?僕、本当に近視だから。
神薙副会長の伊達とは括らないで?」
「すらりとした長身に、長い手足。我が校の制服をそれ程迄に着こなせるお方は、日本中で貴方様くらい!」
「そうかなあ…結構な確率でいると思うけど…。何なら直ぐ横のルプス見て?」
「しかも、編入試験はほぼ満点に近かったとか!
御姿だけでなく頭脳も明晰でいらっしゃる!」
「誰から聞いたの?」
「理事長です。」
そこは答えるんだ。
というか、そんなの漏洩しないで伯父さん…。
僕は、ついさっき別れたばかりの伯父の所に戻って苦情を言おうかと思ったが、思い留まった。
今日はもうあのテンションには触れたくない。
冷静にならなければ、と眼鏡のブリッジを中指で押し上げると、何故かそれに過剰反応されて困惑する。
「佐藤様の長く美しいそのお指…どこ迄届くんだろう…。」
顔を紅潮させている5人。
僕は今、一体彼らの頭の中で指をどうされているんだろうか。
「……ちょっと、時間を下さい。」
ファンクラブの件は保留にして帰ってもらった。
部屋に帰ってから手洗いとうがいをしたが、特に中指を念入りに洗う僕に、ルプスは不思議そうにしていた。
33
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる