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第一章 虐げられた姫
第37話 池のほとりで
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ベル兄様に頼まれたので、エド兄様が向かった方に来ていた。
「セリア。エドにいしゃま、どこ?」
「そうですね……エドニークス皇子殿下が行かれるのは池が多いですね」
「いけ?」
「こちらです」
セリアの案内についていく。しばらく歩くと、木々が生い茂っているところに出た。ここだけ森みたいな空間が広がっている。
「この辺りのほとりにいらっしゃることが多いのですが──あっ、いらっしゃいますよ」
セリアが目線を向けた方を見ると、そこには草が生えている地面に座っている子がいる。エド兄様だ。私も隣に座る。
「エドにいしゃま」
「……なんだ。ついてきたのか」
「ベルにいしゃま、みてきて、いわれた」
「……兄様が、ベル呼びを許すなんて、珍しいね。……女の子みたいだから……嫌だって言ってたのに」
そういえば、私だから許すんだとか言っていたような気がする。なら、他の人達にはそう呼ばないように言っているのかな。
女の子みたいだから嫌だっていう話は、どこかで聞いたことがあるような気がする。
「……どうしたの?」
「おんなのこみたい、いや、ほかにも……」
「あぁ……ローランドのことでしょ。……ローラって、呼ばれるの……嫌がるから。姉様達は……からかってるみたいだけど」
からかう?あの人達もそういうことはするんだ。
「それで君は……普通には、話せないの?」
「れきない」
できたらちゃんと話している。可愛い子ぶるような真似はしない。
「ふーん……」
「……エドにいしゃま、なんで、ここいる?」
「別に……理由はない。なんとなく、落ち着くから」
落ち着く……か。私に落ち着けるような場所なんてあったかな。自分の部屋くらい?使用人達が来たら意味なかったけど、ルメリナからは逃れられた。
「僕は、人づきあいが……苦手だし。外に出るのも……あまり、好きじゃない」
人づきあいが苦手と言っている兄様の周りには、たくさんの光が飛んでいる。フロー姉様よりも多いし、精霊に好かれてたりするのかな。
「……何?じっと見て……」
「にいしゃま、せいえい、の、ひかり、いっぱい」
「あぁ……皇族は、みんなそうだから。精霊に、好かれやすい。君の周りには……いないかも、しれないけど」
確かに、私の周りにはあまりいない。近づいてきたことはあるけど、ずっとそばにいた事はない。
「なんで?」
「姿が見られるのを……嫌うから。なかには、好意的なのも……いるけど」
じゃあ、私が目をそらしたときに見えなくなったのは、逃げてしまったからというのもあるのかな。近づいてきたのは、あの精霊が珍しいだけだったのかも。
今も、もう精霊が兄様の周りからいなくなっている。
「でも、逆に……精霊が頼るのは、自分が……見える者。一匹二匹くらいなら……好奇心から、来るものかもしれない。でも、何十匹も近づいてきたら……頼み事があるということ」
今までそういうのは一度もなかった。なら、あれは好奇心から来るものだったのかも。でも、精霊が頼み事って何なんだろう……?
「君の方にも……行ってない?……気配がそっちに行ったけど」
言われて自分の周りを見てみたら、精霊が周りに近づいてきていた。たくさんいる。小さい人のような姿だ。
確か、父様がこれに触ったらいけないって言ってた。囲まれたら、触れられないから移動できない。
でも、兄様はなんでこっちに来たのに気づいたんだろう。
「にいしゃま、せいえい、みえる?」
「いや。……でも、なんとなく、分かる。他の兄様や、姉様も……やろうと思えば、できる」
「だいいちおうじ、だいいちこうじょ、みえる、きいた」
「フェリクス兄様とトリリウム姉様のことなら……確かに、見えるみたい。本当かは、知らないけど」
最後の一言は言わなくてもいいような気がする。
「じゃあ、僕は課題があるから……部屋に戻る」
すっと立ち上がってどこかに行こうとした。
そういえば、ベル兄様も課題があるからって言っていた。
「セリア。かだい、なに?」
「学園の物じゃないですか?今は長期休暇中ですから」
「がくえん?」
「皇女殿下も問題がなければ来年から通いますよ?ある程度知識を身につけさせてからだと思いますが……」
今の私は5歳。来年は6歳。なら、日本で言う小学校みたいなところなのかな。
「あの人達が許すとは思えませんけど……」
学園に通うのに許しがいるのかな。頼んでまで行きたいわけではないから、別に行かなくてもいいんだけど。
「まだ10ヶ月近くありますから、分かりませんけどね」
すぐにそんなことを言った。別に、わざわざ行かなくてもいいんだけど。行きたいと思われたのかな。静香の記憶があるし、勉強はあまり問題ないと思う。友達は……どうだろう。皇女だからって言っても、人形と仲良くなりたいのはいないだろうな。
「では、帰りましょうか」
「せいえい、いうから、かえーない」
まだ周りには、私の顔を覗き込むように見てくる精霊がいる。私の周りをグルグル飛んでいる精霊がいる。
触れてくることはないけど、動いたら触ってしまいそう。
「精霊達にどいてもらうことはできませんか?」
そう言われたので、どいてって言ってみた。でも、全然動かない。それどころか、横に首を振って拒否された。
「ろいてくえない」
「では、もう少し距離を置いてもらうのは……」
「はなえて」
そう言ったら、ゆっくりとだけど、どいてくれた。立ち上がって、移動しようとする。
そうしたら、バランスを崩して転んでしまった。
「大丈夫ですか?」
「……」
痛みは全然感じない。立ち上がって、宮に戻ろうとしたら、止められた。
「フィレンティア皇女殿下、どうされたのですか?」
「……」
そのとき、急に眠気が襲ってきた。
ここは地面だ。寝たら汚れるかも。……まぁ、いっか。汚れても気にならない。
どうでもいいや。
「セリア。エドにいしゃま、どこ?」
「そうですね……エドニークス皇子殿下が行かれるのは池が多いですね」
「いけ?」
「こちらです」
セリアの案内についていく。しばらく歩くと、木々が生い茂っているところに出た。ここだけ森みたいな空間が広がっている。
「この辺りのほとりにいらっしゃることが多いのですが──あっ、いらっしゃいますよ」
セリアが目線を向けた方を見ると、そこには草が生えている地面に座っている子がいる。エド兄様だ。私も隣に座る。
「エドにいしゃま」
「……なんだ。ついてきたのか」
「ベルにいしゃま、みてきて、いわれた」
「……兄様が、ベル呼びを許すなんて、珍しいね。……女の子みたいだから……嫌だって言ってたのに」
そういえば、私だから許すんだとか言っていたような気がする。なら、他の人達にはそう呼ばないように言っているのかな。
女の子みたいだから嫌だっていう話は、どこかで聞いたことがあるような気がする。
「……どうしたの?」
「おんなのこみたい、いや、ほかにも……」
「あぁ……ローランドのことでしょ。……ローラって、呼ばれるの……嫌がるから。姉様達は……からかってるみたいだけど」
からかう?あの人達もそういうことはするんだ。
「それで君は……普通には、話せないの?」
「れきない」
できたらちゃんと話している。可愛い子ぶるような真似はしない。
「ふーん……」
「……エドにいしゃま、なんで、ここいる?」
「別に……理由はない。なんとなく、落ち着くから」
落ち着く……か。私に落ち着けるような場所なんてあったかな。自分の部屋くらい?使用人達が来たら意味なかったけど、ルメリナからは逃れられた。
「僕は、人づきあいが……苦手だし。外に出るのも……あまり、好きじゃない」
人づきあいが苦手と言っている兄様の周りには、たくさんの光が飛んでいる。フロー姉様よりも多いし、精霊に好かれてたりするのかな。
「……何?じっと見て……」
「にいしゃま、せいえい、の、ひかり、いっぱい」
「あぁ……皇族は、みんなそうだから。精霊に、好かれやすい。君の周りには……いないかも、しれないけど」
確かに、私の周りにはあまりいない。近づいてきたことはあるけど、ずっとそばにいた事はない。
「なんで?」
「姿が見られるのを……嫌うから。なかには、好意的なのも……いるけど」
じゃあ、私が目をそらしたときに見えなくなったのは、逃げてしまったからというのもあるのかな。近づいてきたのは、あの精霊が珍しいだけだったのかも。
今も、もう精霊が兄様の周りからいなくなっている。
「でも、逆に……精霊が頼るのは、自分が……見える者。一匹二匹くらいなら……好奇心から、来るものかもしれない。でも、何十匹も近づいてきたら……頼み事があるということ」
今までそういうのは一度もなかった。なら、あれは好奇心から来るものだったのかも。でも、精霊が頼み事って何なんだろう……?
「君の方にも……行ってない?……気配がそっちに行ったけど」
言われて自分の周りを見てみたら、精霊が周りに近づいてきていた。たくさんいる。小さい人のような姿だ。
確か、父様がこれに触ったらいけないって言ってた。囲まれたら、触れられないから移動できない。
でも、兄様はなんでこっちに来たのに気づいたんだろう。
「にいしゃま、せいえい、みえる?」
「いや。……でも、なんとなく、分かる。他の兄様や、姉様も……やろうと思えば、できる」
「だいいちおうじ、だいいちこうじょ、みえる、きいた」
「フェリクス兄様とトリリウム姉様のことなら……確かに、見えるみたい。本当かは、知らないけど」
最後の一言は言わなくてもいいような気がする。
「じゃあ、僕は課題があるから……部屋に戻る」
すっと立ち上がってどこかに行こうとした。
そういえば、ベル兄様も課題があるからって言っていた。
「セリア。かだい、なに?」
「学園の物じゃないですか?今は長期休暇中ですから」
「がくえん?」
「皇女殿下も問題がなければ来年から通いますよ?ある程度知識を身につけさせてからだと思いますが……」
今の私は5歳。来年は6歳。なら、日本で言う小学校みたいなところなのかな。
「あの人達が許すとは思えませんけど……」
学園に通うのに許しがいるのかな。頼んでまで行きたいわけではないから、別に行かなくてもいいんだけど。
「まだ10ヶ月近くありますから、分かりませんけどね」
すぐにそんなことを言った。別に、わざわざ行かなくてもいいんだけど。行きたいと思われたのかな。静香の記憶があるし、勉強はあまり問題ないと思う。友達は……どうだろう。皇女だからって言っても、人形と仲良くなりたいのはいないだろうな。
「では、帰りましょうか」
「せいえい、いうから、かえーない」
まだ周りには、私の顔を覗き込むように見てくる精霊がいる。私の周りをグルグル飛んでいる精霊がいる。
触れてくることはないけど、動いたら触ってしまいそう。
「精霊達にどいてもらうことはできませんか?」
そう言われたので、どいてって言ってみた。でも、全然動かない。それどころか、横に首を振って拒否された。
「ろいてくえない」
「では、もう少し距離を置いてもらうのは……」
「はなえて」
そう言ったら、ゆっくりとだけど、どいてくれた。立ち上がって、移動しようとする。
そうしたら、バランスを崩して転んでしまった。
「大丈夫ですか?」
「……」
痛みは全然感じない。立ち上がって、宮に戻ろうとしたら、止められた。
「フィレンティア皇女殿下、どうされたのですか?」
「……」
そのとき、急に眠気が襲ってきた。
ここは地面だ。寝たら汚れるかも。……まぁ、いっか。汚れても気にならない。
どうでもいいや。
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