彼氏の優先順位[本編完結]

セイ

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茜の出会い編

5.天使との新たな距離

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「玲央…?」
「!?あ…」

バサバサ

勉強していたのだろう。道具を片付け始めその場から立ち去ろうとする玲央の腕を思わず取ってしまった。

「!!は…離してくださ…」
「俺は君と話がしたい」
「な…なぜ?」

「取り敢えず二人とも座ったらどうだ?」

俺の珈琲とサンドイッチを持って側まで来ていたマスターに焦っていた玲央も落ち着いたのか大人しく座った。

マスターの声がけが有り難かった。
逃げられるところだった…。

「玲央もたまには俺達だけじゃなくて同世代の子とも喋りなさい」
「で…でも…」
「もう一度言うけど…俺は君と話したい」

真っ直ぐ玲央の目を見てお願いしてみた。

「う…す…少しだけ…ですよ?」
「うん!ありがとう!」
「……」
「マスター!玲央にも珈琲のおかわりを!」
「あいよ」

玲央は緊張しているのか俺の顔を見ない。
俺をみて欲しくて思わず玲央の顎に指を添えて優しく上へ引き上げる。突然触ってしまったからかビクリと身体を硬直させた。

「…っ!!」

その顔は茹でダコのように真っ赤にさせて少し涙目だった。
上目遣いの涙目で見つめられるとは思わず、俺もビクリと目を見開いて驚いてしまった。あまりにも可愛い過ぎてどうにかなりそうだったからだ。

「茜…俺の孫に手ぇ出したらただじゃおかんぞ…」
「へ…?え!?」

急に耳元でマスターの声がしてドキッとしてしまい、俺は慌てて玲央から手を離した。
玲央の分であろう珈琲を置いてその場を離れる。

「ご…ごめんね玲央…」
「い…いえ…」
「前に会った時に朝図書室にいるって言ってたから会いに行ったんだけど全然会えないから避けられてるのかなぁーって思ってた。学校休んでたんだね…。」
「あ…ご…ごめんなさい…」
「あ…いや、謝らなくていいよ。俺が勝手に会いに行ってただけだから…」
「な…なんで僕なんかに…?」
「君と…話したい、仲良くなりたいって思ったから…かな?」
「ぼ…僕と話してると…疲れると思うから…辞めた方がいい…よ…」
「…何で?」
「え…あ…あの…僕…吃音症…で、喋る時に吃ったり、言葉が詰まったり…話すの遅くなる…からたぶん聞いてて…疲れちゃう…よ?」
「…俺はそんなの気にしないよ?好きに喋ってくれていいよ。ゆっくりでいい。君の話聞きたいな」
「~…っ!そんな事…言ってくれた人青空くん以来…」

嬉しかったのか頬を赤く染めてほにゃっと笑う玲央に俺も嬉しくなって微笑んだ。

「…青空くんが初めて?俺は2人目ってこと?」
「…そう。そ…青空くん…のお友達?」
「俺の幼馴染の恋人になったからその流れでお友達になったんだよー」
「こい…びと…」
「それで青空くんから少しだけ玲央の話聞いたんだよね…」
「…!!」
「詳しくは聞いてないから青空くんを怒らないであげてね?」
「おこ…りません」
「…不登校って…聞いたけどその吃音症と関係があるのかな?」
「あ…そうです…僕イギリス人の父と日本…人の…母とのハーフで…中学生の時に…日本へ来て…日本語を覚えた…ので当時はカタコトだった事も…あって今…みたいなゆっくりした喋り方を…していたらイジメにあ…あう…ように…なって…が…学校…に行くのがこ…怖く…なっちゃっ…て…これ…がきっかけ…?で、吃音症に…もなっちゃって…」

当時を思い出したからか声が段々震えてきたのがわかった。

「…っごめん!辛いこと話させてごめんっ!もうわかったから…」
「…んーん…ぼ…僕が貴方に…知って欲しいと…お…思って話した…ので…大丈夫…」

涙を流しながら笑う玲央に思わず頭を撫でてしまった。

「…よく頑張ったね…」

にっこり笑って労うと玲央もにっこり笑ってくれた。


この笑顔を守りたい。
玲央とずっと一緒に居たい。
玲央の手助けができたら幸せ…。

そんな思いが溢れてきてしまった。


「でも玲央すごいね!日本語も上手だし、日本語勉強しながら中学の勉強もしてたんでしょ?頭いいんだね。俺ならどっちかになって人と喋る事すら出来ないかも!玲央は頑張り屋さんさんだね」
「…っ」

そう褒めたら余計に泣き出してしまった…。

「…えっ!?な…何で…ごめんっ!何か変な事言った!?え…ホントごめん!泣かないでぇ~!!」

焦り過ぎてかなり情けない声を出してしまった…。
玲央に泣かれるの辛いっ!

「茜…それは嬉し泣きだと思うから大丈夫だ」
「…へ?」
「ご…ごめん…なさい。嬉しくて…貴方に褒められて嬉しくて…」
「ほっ…良かった…」
「あ…の…あ…茜…くん?改めて…僕と仲良くしてください…」

そう言って手を差し出してきた。握手を求めたのだろうが、俺はその手を取って指先へキスを送る。
玲央はびっくりして手を離そうとするが、俺は力を込めてそのまま逃さなかった。

「…俺は君が好きだ。友達でなく…恋人に…なりたい…」

ゆっくりとキチンと理解できるように言った。
ビクリとその言葉に顔を赤くする玲央。

「おい…茜?さっき言ったことわかって言ってんだろうな?」

さっきマスターに釘を刺されたばかりだが、そんなの構ってらんなかった。

「俺は玲央を悲しませたりしない。ずっと一緒にいて笑い合いたいし、触れ合いたい」

俺の気持ちを知って欲しい。

「俺は友愛ではなく恋人としての愛情を持っている。玲央が他の奴と付き合うのを見ていられる程心は広くない。玲央の横に居るのは俺でいたい」
「あ…あの…」
「返事は直ぐに欲しいわけじゃない。急だったし、ゆっくり考えてくれればいい。それまではお友達の距離でいい。でも逃げないで欲しい」
「あ…はい…」
「ありがとう…」
「さて、今日はこの辺にしようか…。そろそろ帰るよ…玲央…連絡先交換しない?」
「あ…うん…」

スマホを差し出してくれる玲央。やっと連絡先交換できた。
これでいつでも連絡できる。

「連絡するから…」
「ん…」

「…かわい…」

少し嬉しそう…かな?
頬を赤くするのが可愛すぎ。抱きしめたい。
けどまだ告白しただけ。性急に進めてはいけない。
マスターの目もあるし…。

目の前でLIMEにメッセージを送ってみる。

"玲央 好き"

メッセージが届いたようでスマホに目をやる玲央の顔がみるみるうちに赤くなっていく。少しは意識してもらえると嬉しい。

「じゃあまたね玲央…」

バイバイと手を降って店を出た。

俺は初恋に胸を踊らせ家に足を向けた。










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