絶命必死なポリフェニズム ――Welcome to Xanaduca――

屑歯九十九

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第02章――帰着脳幹編

Phase 161:お前には苦痛を与えるが

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《ストイヤス》昆虫種蟷螂型Sm。発祥はサンスカロリーノー州の州衛生保安局Sm認知センター(旧新技術解析保険管理課)が非管理状態で捕獲した個体。それを解析し、SmNAが企業へ売却され、クダンを母体に移植製造されることとなった。ほかの外科的処置を必要とせず発生するままの機体で運用を可能とする自己完結機体である。その形態は第一世代から辿り4番眷属までは前脚の発達に主眼を置き、カマキリの前脚を付けた蟻のような見た目、と評されてもいた。軍事活用は勿論、民間でも野良Smへの迎撃に使用された。しかし、キネタケット州の企業が、基盤となったSmNAは自社から不当に持ち出されたものだと主張し、各製造販売元への訴訟問題に発展し、後の東海岸事件へと発展することになる。









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 ウォールマッシャーの蟷螂カマキリの前脚を踏み台に走っていたスロウスは、ついに、巨大な人腕の肘鉄ひじてつを喰らい、地面に叩き落とされる。それでも落下の途中で体をひねり、両足で着地し、膝を曲げて衝撃を緩和かんわし、自身を置いて行ってくれた敵の追跡に移行した。

『スロウス待って!』

 首輪から鳴る少女の声にスロウスは止まる。
 なぎ倒された木々の手前で止まったバギーからソーニャが飛び出した。
 バギーの運転手は去っていく巨体を確認しつつ、少女にも周りにも注意を払う。
 ソーニャが目にしたのは、赤紫の液体にまみれたスロウスだ。表皮を染め上げる一抹の液体をゴム手袋越しに指でぬぐい、こすり合わせる。遅れて駆け付けたバギーの運転手は、自警軍の仲間と驚愕の目を交わし、壊れたのか? とたずねた。
 隊員たちは銃を構えて周囲を警戒する。彼らがいるのは巨体が移動によって作った道だ。しかし、その道は強靭きょうじんな足腰で踏破することを念頭にしており、倒木はバイクやバギーを拒み、経路の選択を強いる。
 ソーニャは。指先でこすった液体の匂いをいだ。

「多分、スロウスの出血も混ざってるけど、大部分は敵の返り血だね。敵の工業血液は糖分濃い目にしてあるみたい……。栄養過多の匂いがする。よっぽど燃費が悪いんだ……。スロウス! あいつを追いかけて、直前の命令を履行して」

 ソーニャが巨体を指させば、待ってました、と言わんばかりにスロウスは走り出した。
 運転手は森の対岸を目にして告げる。

「急いで乗って! 木に隠れないと。ここじゃ狙われる」

 うん、とソーニャはバギーに振り返る。その瞬間、彼女が背負っていた鉄の盾が甲高い音を鳴らした。

「当たっちゃったか!?」

 茂みの陰でシェルズが問い質す。小銃による狙撃をした同胞どうほうは覗いたスコープで確認した。

「いや盾に当たった! 直撃しなくてよかったぁ」

 と同胞が安堵を口走った瞬間、彼らが隠れていた茂みに弾丸が飛び込んできた。
 木の陰に隠れたシェルズは、射手である同胞に告げる。

「あぁあ、威嚇のはずだったのにやっこさん怒っちまったぞ?」
 
 一方、その場でうずくまっていたソーニャは、倒木の陰から体を出さない程度に起き上がり、我が身の無事を確かめる。
 大丈夫か!? と心配する運転手は乗ってきたバギーに隠れて射撃に参与した。
 ソーニャは倒れこむようにバギーに飛び乗り。発進して! と告げた。
 了解! そう言って運転手は仲間の援護を頼ってバギーにまたがり、エンジンをうならせ茂みに入る。

「危なかった! 間違いなく、あいつら君を狙ってた! きっとスロウスのことが露見してるんだろう」

 皆を援護したほうが、と心配するソーニャは置いてきた仲間に振り返る。
 しかし運転手は。

「大丈夫! あいつらも馬鹿じゃない! 数も分からない敵に突っ込んでいかないさ」

 その言葉通り、援護してくれた仲間たちも早々に撤退し、バイクでソーニャたちに追従する。
 巨体が突き進んだ場所と違い、直立する木々の間はある程度の起伏を無視すれば進めたし、身を隠せる。
 自警軍の面々は少女に、大丈夫か? と問いただし。大丈夫、の言葉に肩の力を抜くもゴーグルの下で表情が険しくなる。

「あいつら子供を狙いやがって絶対容赦しねぇぞ!」

 銃撃に参加した全員が怒りを爆発させる。
 ソーニャも声を上げる。

「よっしゃ! なら、あのSmを停止に追い込んで、あいつらに目にもの見せてやるぞぉ!」

 おお! と変な興奮と連帯感で小さな部隊は一致団結した。
 しばらたずに先行していた仲間の部隊が見えてくる。
 けっこう進んでたんだな、とソーニャと並行する隊員が呟いた。
 状況は? と合流を果たしたソーニャが既に巨体に対処していた隊員に問う。

「スロウスが再度敵の巨体に突撃してる。ただ背中からの組付きは甲殻によって阻まれた。硬い上に登ろうとしても滑るし、ナイフも通らない。正面からだと真っ先に蟷螂の腕が襲ってきて接近させてもらえないみたいだ」

 ちょうど、攻撃を仕掛けたスロウスが蟷螂の前脚によって弾かれていた。
 その光景に唖然とする合流した面々だったが、後方から銃撃が襲ってくると、意識が切り替わった。
 巨体が突き進んで形成した雑な道は、倒木や枝葉が散乱し、地面が抉れて溝が出来ており、順当に車両が通れる場所ではなかった。しかし、巨大なダンゴムシであるダンプボールにとっては、乗り越えるのが少し億劫おっくうな段差しかなく、速度は出せずとも、並ぶ無数の足で軽快に進み、背中に過積載されたシェルズの面々が続々と降りて、攻撃に出る。

「敵を蹴散らせ! ウォールマッシャーの邪魔をさせるな!」

「相手は小部隊だ! 人員なんてたかが知れてる!」

 先回りするんだ! と密かに同胞同士で示し合わせたシェルズの小隊は、人員を乗せたダンプボールを走らせ、友軍機である巨体へと近づいて行った。
 自警軍の部隊は銃撃で敵の動きを牽制けんせいする。
 部隊を指揮するフレデリックが、イサク! と名で呼んだ相手と目を合わせ、盾の代わりにしていた自身のバイクをひじで小突く。

「俺のバイクでじょうちゃんを連れて巨大Smに近づくでも逃げるでもしてくれ! 俺たちができる限り、巨体と敵兵を引きつける!」

 了解した、そう言ってイサクはバイクへ急ぐ。その途中、仲間が手を出し、お守りだ! と言って擲弾筒てきだんとうを差し出した。
 感謝する、とイサクは言って受け取った武装の掛帯かけおびを肩から下げた。
 ソーニャも事情を察してバギーの運転手の背中に、ご武運を! と告げる。
 首肯しゅこうする運転手の援護射撃も加わり厚くなった弾幕に守られて、ソーニャとイサクはより身軽で細身のバイクで木々の間隙かんげきくぐった。
 バイクの運転うまいね! とソーニャはイサクを称賛する。

「ああ、これなら免許取得もできそうだ!」

 返答に表情を失うソーニャは、運転手の顔を覗き込もうとしたが、バイクは緩やかな坂を全速力で駆け上って岩が作る段差から、飛翔した。
 わぁああ! と驚きの見本めいた声を上げるソーニャは着地の衝撃に沈黙を強いられる。
 イサクが、無駄にしゃべるな舌噛むぞ! と忠告する。

「分かった! 今は何も言うまい! それよりも……」

「逃げる……なんて言ってくれないか。スロウスのところだな! あいつは無事なのか!? 相当激しくぶつかって行ってたが」

「スロウスの動きは? 攻撃の頻度は下がったりした? 動きが止まったり」

 いや全然、の即答に対してソーニャはうなずき。なら深部器官は大丈夫なはず、と楽観的考察を口にした。
 乗り手に急かされたバイクは木々を置き去りにし、やがて右方向にいる巨体を過ぎる。
 敵の観測を請け負うソーニャが、あ! と声を上げた。
 どうした!? と問いただすイサク。
 バイクの速度を緩めて巨体に付かず離れずを心掛けるが。振り回されるウォールマッシャーの人腕による突風が、撤退を要求する。
 左腕でイサクに抱き着くソーニャは、右手で双眼鏡を支え、砂利を噛みつつ言った。

「スロウスがいたよ! あの動き。もしや片腕をかばってる? それと利き足の左より右足の踏み込みが多い気がする……」

 振り降ろされる蟷螂の前脚2本の間をスロウスは飛び回り、時にナイフを敵の複眼へ投じて、上から垂直に迫る前脚のとげを握り、下段からくる前脚を蹴って跳躍し、持ち上がろうとしていた前脚のより高所の棘を捕まえる。さらに握った棘の兄弟を足掛かりに前脚の上に登ると、そこからまた飛び上がって、近づいていたウォールマッシャーの頭に突撃した。しかし、それを阻むのは、巨大な人のてのひら
 スロウスは片手に握るナイフを巨大な手の生命線に突き刺し、自重で分厚い皮膚を切り裂くと、下から迫るもう一方の手を両足で蹴りつけて、握り締めようとする指から離脱する。今度は生命線を切られた掌がつぶそうと降りてくるので、地面から飛び退いて、蟷螂の前脚に手をかけ、横から薙ぎ払ってくるもう1本の前脚を脚で退け、その反動でしがみついた前脚のみねに上った。
 そんな活躍よりもバイクの前方を注視していたイサクは。

「スロウスの動きが変なのは負傷のせいか? いったん引き下がらせるか? ダムの砲台の射程圏内に突入したらどのみち、俺たちも退き下がる必要がある。砲撃に巻き込まれたら敵わないからな」

「あの巨体に対して正確に命中させられるのその砲撃は?」

「……まと自体が大きいから、出来ないわけじゃないだろうが。難しいとは思う。ああも自在に動き回るんじゃ運任せになりそうだ」

 イサクは性急にバイクの方向を変える。その理由はソーニャに迫る影だった。
 ウォールマッシャーは豪快に森の木々を砕き、道がないなら作ってしまう。
 飛び散る土砂と木々の残骸が砲弾の代わりとなってばらかれ、イサクたちを襲う。
 ソーニャが持ち上げた盾は、落下する砂礫されきや枝葉で打ち鳴らされる。
 大丈夫かッ? とイサクが呼びかける。

「大丈夫! イサクは……運転してるってことは無事だね」

「ああ、だがスロウスはどうだろうな」

 前のめりになるウォールマッシャーが振り向きざまに蟷螂の前脚で周辺を薙ぎ払う。えぐられた地面が波となって、進行方向にいたスロウスへと流れ込むが。
 スロウスは身軽に飛び上がり、波を乗り越えると、続いて、巨体の突き出す前脚を踏み台に即席の一里塚いちりづかを超え、しかしウォールマッシャーの人の腕がこぶしを振り下ろして大地を揺さぶった。
 大地と大気に波及する衝撃波は、飛び退くスロウスよりも、傍観するイサク達のほうがより強烈に感じられた。
 2本の鎌脚と2つの手が、間髪入れずに振り下ろされ、森の構成要素を粉々にし、混ぜ合わせる。飛び散る土石が空気を汚し、その中でスロウスが翻弄ほんろうされる。いや、むしろウォールマッシャーの方が自身より小さな敵に有効な攻撃を繰り出せず、無我夢中で力を誇示しているように見える。
 イサクは巨体の猛威から離脱し、ソーニャに問う。

「あの巨体の動き早くなってないか?」

「うん。明らかに最初のころの動きと違う。いったんスロウスを引き離したほうがいいかも。遠巻きに観察するためにも、すきをついて無線で連絡して……」

 土が自然の力で盛り上がった場所で停車したイサクは、現場の様子を観察する。

「ここからスロウスは、見えないな。今近づいたら巻き添えを食らうし。あまり望みたくないがスロウスが殴られるかして、あの虫から離れた瞬間に撤退するよう呼び掛けて合流しよう」

 ソーニャは険しい表情で頷く。彼らの目論見もくろみはすぐに実現した。
 スロウスは交差した腕で、人腕が突き出す拳を防ぐ。その一撃によってスロウスは引き離された。
 すかさずソーニャが無線機で、スロウスいったん下がって、と呼びかける。
 言葉を受領しきびすを返すスロウスだったが、上から振り下ろされた蟷螂の前脚が地に舞い降り、行く手をふさぐ。
 スロウスは振り返り、間近に来ていた複眼と対峙たいじする。
 遠巻きにいたソーニャも前のめりになった。

「逃がさないつもり? スロウスに狙いを定めたの? ダムから意識が逸れたなら、むしろ好都合だけどね!」 

 悪い笑みを浮かべた少女は、直後、表情を驚きに一変する。
 同じとき、提督テイトクは力なく下げていたつらを緩やかに持ち上げ、口角を吊り上げる。

「お前は、ここで、始末するッ」









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