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セークスバッコン国にて

さんわめ

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 ジュークさんは騎士達への指示を出して、俺の為に時間を作ってくれた。
 いい人だわぁ。
 鑑定で知った情報もあるし、俺がこの国を出る時に付いてきて欲しい、ホント。

「お待たせいたしました。何をお知りになりたいのですか?」
「俺、戦争とか魔物とかと無縁の世界から来たんですよ。なので外に出る前に簡単に実物を触らせてもらえないかな、って」
「実物を、ですか」
「はい、そしてその武器の長所とか短所とかも簡単でいいので教えてもらえたら、と思いまして……」
「…………では、こちらへ」

 何やら悩んでいたジュークさんは、それでも俺に武器を見せてくれると言ってくれたので彼と一緒に歩き出す。
 俺達の後ろにはお付き君もちゃんといます。

 そして連れてこられたのは広場から遠くない所に建てられていた掘っ建て小屋みたいな倉庫とおぼしき小屋である。

「実物と勇者様はおっしゃいましたが、危険ですので鍛錬用の刃を潰した物でご容赦ください」
「いえいえ、どんなものかわかればいいので!そうですよね、初心者が実物とか危なすぎですよね。ありがとうございます、ジュークさん」

 俺が刃を持つ危険性を色々考えた末の模造品を見せてくれるらしい。
 確かに危険だよね。
 未知の人間が刃物持った時って。
 俺も危ないし、彼らも危ない。

「まず、こちらが基本の長剣になります」

 倉庫にはやっぱり剣が多かった。
 騎士団の倉庫だしね。
 持たせてもらって重さを確認したり、魔物によっては鈍器がー、とか色々説明も受けた。
 俺、こうやって実際に武器見て思ったんだけど、これ使ったら接近戦になるってことなんだよね、とふと気が付いた。
 それもカッコイイとは思うけど、危険なのは極力避けたい気持ちも沸いてくる。
 やっぱり事前に情報集めるのって大事だー。
 買ったはいいけど肥やしにしちゃったりしたら勿体ないしね!

 倉庫にある武器の説明の後は予備らしい防具も見せてもらった。
 めっちゃ臭かった……。
 凹みとかは綺麗にしてあったけど、臭いが、うん。
 染み込んでそのまま置いておかれたからだろうなぁ……。
 試しに着させてくれたけど、ある意味拷問だわこれ。

 この国では、お風呂、湯船に浸かるという概念がない。
 部屋にお湯の入った盥を運び、布で体を拭くだけだ。
 俺も昨日自分で拭いたよ。
 お風呂入りたい。

 慣れてるらしいジュークさんは平然としてたけど、お付き君はちょっと臭そうにしてた。
 君はいつも綺麗にしてるもんね。

「ありがとうございました、ジュークさん」
「いえ、これぐらいなんのことはありません」
「あ、後聞きたいことあるんですけど……まだお時間あります?」
「大丈夫ですよ、なんですか?」
「魔物と遭遇した時に気を付けるべきこととか、ですね」

 そう言ったら次に案内されたのは、ジュークさんの執務室でした。
 MAPで周囲を確認、よし。
 お付き君はお茶淹れにいった、よし。

 2人きりになって、これみよがしに溜め息を吐く。
 隣に居たジュークさんはどうしたのかと首を傾げて俺を見る。
 ごめんね、めちゃくちゃつけ込んでます!
 でも俺も綺麗な心ではいられないんです!

 きょろりと周囲を確認する素振りを見せて、ジュークさんに手招きしてみせるとちゃんと意図を読んで腰を屈めてくれた。
 そんなジュークさんの耳元に顔を寄せてそっと呟く。

「下手すると俺命危ないんで、気を張りっぱなしなんです」

 ジュークさんは驚いて目を丸くし、俺を見つめた。
 秘密ですよ、と込めて人差し指を自分の唇に当てる。

「魔王討伐はしますけど、早目にここ、出たいんです」

 そう言って1歩距離をとる。
 コンコンとノック音がしてお付き君が戻って来た。

「……入れ」
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「……では勇者様はこちらへどうぞ」

 少し雰囲気が固くなったジュークさんだけど、俺は気にせず勧められたソファーに腰掛けお付き君の淹れてくれたお茶の入ったカップに視線を向ける。
 流石にここで何か入れては来なかったか。
 それでもほんの一瞬躊躇する素振りを見せてからカップを傾ける。
 これはジュークさんに見せているのだ。
 実際は加護のおかげで気を張ってもいないんだけどね。

「……ふぅ、ありがとうね」
「いいえ」
「それじゃあジュークさん、まずこの近辺の魔物を教えてください」
「……わかりました」

 ジュークさんが用意してくれたのは巻き物でした。
 羊皮紙ってやつかな?
 紙ではなかった。
 そこに書かれた文字を俺に見せてくれながら説明してくれる。

 はい、恒例の勇者チートの紹介!
 てっててーん!
 言語翻訳ー!
 この国の人の口元をじーっと見ていると気付きます。
 俺の耳に届く『日本語』と違う口の動きをしているんですねー。
 俺の日本語は彼らの世界の言葉に変換されているのでしょう。
 そしてジュークさんが見せてくれた羊皮紙に書かれた文字は日本語じゃなかった。
 その下に日本語で翻訳された物が書かれていましたよ。
 ……これ俺が日本語書いたらどうなるんだろうね?
 痕跡を残すつもりはないから書かないけど。
 ジュークさんの説明をどれだけか受けて、俺は部屋へと戻った。
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