57 / 401
第三章 新入生交流会
2
しおりを挟むこれは3チームが体育館から解き放たれ開始合図から30分を過ぎたころのこと。
「あれ?お前って俺と同じクラスだったよな」
「えっ!?あ、うんそうだね。確か....田中君だっけ?」
「おう、お前は中田だっけか」
「うん。同じ黒チーム同士頑張ろうね」
「ああ」
「.....」
「.....」
「.....ね、ねぇ、田中君って人狼?」
「なわけねぇだろ。俺が人狼だったら声かける前にお前を殴って気絶させてたよ」
「確かに.....」
「....あー......。まぁ互いに生き残ろうな」
そう言って気まずげに田中君は中田君に背を向けた。
僕はそれをなんとも言えない顔で見る。
(無防備に背中を見せるなんてナンセンス)
現に中田君が腰に下げていたハンマーを背を向けた田中君目掛けて振り下ろしていた。
ガッと鈍い音が鳴る。
(すごい痛そう......死んでないよね?)
木の上からそう心配していると中田君が倒れた田中君のそばにしゃがみこんだ。
「ふふん♪ふったりめ~。馬鹿だなぁ....人狼は僕だっていうのに無防備に背中見せちゃって。よし、これでノルマまであと8人。ノルマ達成までは出会ったヤツら手当り次第狩ろうかな。.....別に自チーム数人狩っても大したことないよね?いや、僕が黒チームなのかわかんないけど。やっぱり誰かに背中を見てもらわなきゃダメかぁ.....流石に自分がどこチームなのか知らないのは困るなー。でも他人に背中を見せるの怖いなぁ。嗚呼どうしよう......」
中田君はブツブツとボヤきながらブチリと田中君のタグを引きちぎり自身のポケットに入れる。
彼は人狼だったようだ。人畜無害そうな顔をして平然と人の頭をハンマーで殴るなんて.....見た目で判断はしちゃいけないな。
そして僕はこの学園に入学する際に支給されたスマホを見る。実は僕、体育館から出てすぐ近くの木の上に登り人狼かどうかのメールが来るのを待っていたんだが.....
ん?メールを見なくても背中ポケットに紙があるかの有無で自分が人狼かわかるんじゃないかって?
.......不思議なことにメールを確認しないと後ろポケットのチャックが開かないんだよね(どういう仕組み?)。
だから待つしかなかったんだ。
うん、待つしかなくて.....待ってたんだけど不覚にも僕はいつの間にか眠ってしまった。
下の方で気配を感じ起きてスマホを見てみれば制限時間のタイマーが既に30分過ぎていたという.....。
それで慌てて人狼メールを見ようとして始まったのが田中君と中田君の腹の探り合い。
それは中田君の勝利に終わったので、僕もやっと自分が人狼かどうか見れるわけだが......。
《貴方は人狼です》
何度見てもスマホにはそう書かれていた。
人狼.....僕が人狼?
........ハズレくじを引いてしまった。
取り敢えず僕もノルマを達成しなきゃね。スマホに届いていたケーキ君からの物凄い量のメールをスルーして――
「次はどこに行こう.....3人目を狩らなくちゃ」
最初の獲物である中田君を見下ろした。
「狩らせてもらうよ.....」
「ん?何か聞こえたような――がは!?!?」
静かに飛び降り、その落下の重力を使いそのまま切り裂く刃の柄で殴る。
倒れた中田君のタグをちぎり、ついでに彼が狩った2人のタグも回収した。これで計3つのタグが僕の手の中にある。同じ黒チームだが、中田君が言っていたように数人くらい影響ないだろう。
人狼の数はそう多くないだろうし......
ん?
「人狼の数が多くない....?」
自分の思ったことに違和感を覚える。
どこもおかしくない言葉のはずだが何かが引っかかる。しかしその引っかかりは倒れた田中君を見てさらに強まった。
中田君にハンマーで殴られた田中君はよく見ると右手に魂写棒を握っていた。彼らは話していた時無手だった。それなのに倒れている田中君は魂写棒を握っている.....。
まず、なんで彼らは無手だったんだろうか?
普通はいつ襲われてもいいように手に持っているか、それか他人にで会った瞬間異能を始動して警戒するべきだろう。
「.....ああ、なんてことだ」
まさかと思い田中君のポケットを探ると2つのタグがでてきた。
つまり彼も人狼。
2人ともずっと無手だったのは相手を油断させるため。今までもそうやって相手を油断させて狩ってきたのだろう。
さて、この場に人狼が3人居たというのはどうなんだろう?
ここで話が変わるが『人狼』という言葉がつくゲームをあげるなら何がありますか?と聞くと、ほとんどの人が『人狼ゲーム』を思い浮かべるだろう。
人狼ゲームは簡単に言えば村人を食い殺す人狼を探し当て吊るすゲームだ。人数の配分は村人10人に対して人狼2人などが普通である。
では話を戻して、この人狼狩りに参加している新入生の数は約500人ほど。
人狼ゲームを踏まえて考えると約500人の中に潜む人狼は約100人かそれ以下......。だが、人狼のノルマが最低10人狩ることから人狼の数は50人以下の可能性が高い。脳筋仕様の生徒のことも考えるとその方がバランスが取れる。
......僕はさっきまでそう考えていた。
「人狼ゲームを知ってるからなまじそう思い込んでしまった」
これは、調べる必要があるな。
「おっと~ここに脱落者発見.....なんだよ2人も居るじゃねぇか。めんどくせぇー.....」
声が聞こえて振り向けば、中田君のそばに音もなく望月先生が立っていた。
「んあ?えーっと、いち、いち.....」
「一条です」
このやり取りデジャブ.....。
望月先生はいつものアロハシャツは着ておらず、茶色いジャージを着ていた。ダルそうな表情は変わらないが、少し疲労の色が見える気がする。先生でも苦労してることがあるのかな?
「望月先生は脱落者の回収をしているんですか?」
「ああ、めんどくせぇことにな」
「ふむ......。先生ってどこまで話せます?」
「おおっと?うーん、俺は何も話せないぜぇ~」
釣れるな。これは絶対に釣れる。
「先生の雑務手伝いますよ?」
「よし、なんでも聞け。答えれることなら答えよう」
「チョロ....ゴホンっ!では、人狼の人数は全体の1/10以下の人数ですか?」
「いんや」
「.....ありがとうございます。もういいです」
これはもう確定かな。
自分の中で今回のゲームについて整理しながら田中君の背中ポケットに手を入れる。
「一条は賢いな~。こりゃ俺の仕事を減らしてくれるのにおお助かりだ。頼りにしてんぞ?」
「なるほど。紙にはQRコードが書かれているのですね。これを他人のスマホで見なければ自身のチームが分からないと.....面倒臭いですね」
「無視かぁ.....」
今は貴方に構ってる暇ないんですよ望月先生。
「え?」
そして僕はスマホ画面に映し出された文字に一瞬思考停止した。
「......このゲームはクソですね」
その文字の意味を理解した僕はそう吐き捨てるしかなかった。傍らでニヤニヤと笑う先生をひと殴りし、急いでケーキ君へメールを飛ばす。
『美術室で落ち合いましょう』と。
51
あなたにおすすめの小説
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる