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第十三章 命尽きるまで貴方を想ふ①
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しおりを挟むチビちゃんと約束の日の前日。僕は食堂に来ていた。
明日も来るのに今日行く必要ないって?それは自分でも思っている。でも色々シミュレーションしたいし、どうせ明日は食事が喉を通らないだろうから今のうちに楽しんでおきたい。
まずドリンク....は烏龍茶で。何食べるかはまだ決まらないあなぁ。
先にシミュレーションでもしよっか。
....たとえば、チビちゃんが「お前弥斗だろ」と言ってきた場合。僕はどうするべき?
肯定か否定。僕としては否定したいが、彼がわざわざクロウちゃんを殺そうとしてまで僕と食事をしたがるってことは、十中八九バレている可能性が高い。だから否定しても弥斗ではない確固たる証拠がない限りチビちゃんは信じないだろう。
───詰んでるね
あ~、詰んでる。どこでバレた?もしかして僕が気づいてないだけで結構バレバレなのかな?僕の振る舞いって。
......頭痛くなってきたから糖分を補給しよう。
チョコレートパフェを選択っと、これでよし。
さて、もうバレてる前提で考えようか明日のこと。僕が弥斗だとバレてるとして、チビちゃんの要求はなに?
昔とここ1年を振り返ってみる。
昔はよく僕のあとを着いてきていたし、この1年では.....思い出したくないな。弥斗として彼と出会った記憶はもはや黒歴史と呼べるものだ。今思い出しても恥ずかしいな。あの時の僕は何を思ってあんなことをしたんだろうか?
コホン。とにかく彼は僕と一緒に居たいというのが望みだろう。彼の言う番だとかそういうのは手段に過ぎない.....と思いたい。
『一緒に居たい』
う~ん、自分で言っといてアレだが、チビちゃんがそんな可愛いこと言うかね?
考えてみれば学祭では青い炎で僕を殺しにかかってきていたし、もしかして僕恨まれてる?
悶々としていると先程頼んだパフェが届いた。
さっそく先っちょのソフトクリームをスプーンで掬って食べる。
ん~~美味。
「───あれま。奇遇やなぁ燈弥君」
もう一口とスプーンを傾けるが、変態の登場により僕の至福の時間は終わりを告げた。
しまったな。声をかけられないよう2階の役員専用席で食べるべきだったか……いや、この変態成績優秀者だから意味ないじゃん。
苦い顔を隠さず顔を上げると――
あら、珍しいメンバー
「文ちゃんは兎も角、兎君.....この変態は君の手に負えませんよ?」
「えっ、颯希って変態なのか?」
「燈弥君限定や」
「なら安心だな!!」
お?お?ゲンコツをご所望かな??
なんか一緒に食べる空気になったので奥に詰めると、僕の隣には兎君が座ってくれた(キャベツ君じゃなくて心底ホッとする)。
「兎君は教室で食べると言ってませんでした?保護者達はどうしたのです」
「保護者って誰だよ。もしかして芙幸と清継のことか?.....あの二人ならテキ先に呼ばれてどっか行った。で、1人で食べるのもなんだし将翔達のクラス行こーって廊下歩いてたら文貴に会って......」
「僕が誘ったんよ。仲間なりたそうにこっち見とったからなぁ。あまりのうるうるおめ目に陥落してもうた」
「誰がうるお目だ。俺は2人の邪魔しちゃ悪いからいいって言ったのに強引に颯希が引っ張ってきたんじゃねーか」
「うるおめ目って、初めて聞いたで....そんな略し方」
「文ちゃんはなんでこの変態と?」
ニコニコ笑顔でタッチパネルを操作していた彼はチラリとキャベツ君を一瞥すると、左手をあげて開いたり閉じたりした。
「これの点検。去年はちょっと点検サボってたから」
「今日はその説教も兼ねて、改良の余地があるんか話聞こ思うてんねん」
へぇ、自分の仕事に対しては真面目なんだねキャベツ君って。もしかしてお客全員にそういうことしてる?もしそうだったらちょっと見直す。
「へぇ!文貴の義手って颯希が作ったんだ。全然そうは見えないけど、お前って凄いやつなんだな!」
「うぅん....なんか僕って余計な一言言われんと褒められへんのかなぁ。褒め言葉だけな時ないような気がする」
義手義足に関しては間違いなく凄い人さ。以前部室で見せてもらったが、それはもう滑らかな手触りで見た目は普通の腕と遜色ないっていう、ね。
余計な一言については君のその性格のせいじゃない?....親しみやすいってことだよ、たぶん。知らんけど。
「さてと。じゃあ食べながら話聞かせてもらおうか~」
文ちゃんは相変わらずのサラダ。兎君は油淋鶏丼。キャベツ君は焼きそば。僕も追加でサンドウィッチを頼んだ。
ペースト状になった玉子の旨味に舌鼓を打ちながら耳を傾ける。
「軽さはどや。実は内緒で軽量化してみてんけど、前のより全然使いやすい!とか感じへんかった?」
「全然」
「指の長さ変えてんねん。前は人差し指より薬指の方が長かってんけど、今つけとるんは逆に人差し指がすこ~し長なってん。どっちが使いやすい?」
「変わんない」
「手首をすこし太くしたんやけど.....」
「変わんない」
「爪を────」
「変わんない」
「......」
珍しくキャベツ君が顔をクシャッと歪めた。それはまるで遊ぼう!と駆け寄ったのにあっち行けと追い返された子犬のようで、どこか哀愁が漂っている。
....まぁ必ずしも自分の情熱が相手に伝わるとは限らないよね。にしても文ちゃんの態度は塩すぎると思うが。キャベツ君嫌われてるんじゃない?だとしたらざまぁww
「作りがいのないやっちゃなぁ。比良山君ならわかってくれるのに.....」
「彼の観察力を他人に求めるのはやめなさい」
アレは異常だ。会う度に僕の体重を当ててきたり、肌の潤いパーセンテージ(そんな数値知らん、でもそれっぽく言ってくる)や最近凝っている部位などを的確に突いてきたりと常人を超えた存在と化している。もう恐怖を通り越えてキモさを感じる。
.....それを一度本人に向かって言ってみたのだが、なぜか恍惚とした表情で「ありがとう」とお礼を言われた。アレは今思い出しても震える。
「比良山って誰だ?」
「変態の仲間なので、つまり変態です」
「変態かぁ。ならいいや」
うん、兎君は会わない方がいいよ。なんせ君は美形(可愛い系)だから。.....いや待てよ?笹ちゃんが兎君にゾッコン(死語)になれば僕の負担が減るのでは?
......ははっ、彼が僕から離れていくイメージがわかない。嗚呼悲しい。
「はぁ、じゃあ鳥羽君の義手はそのままでええな。不便も不満も感じひんなら僕が見るだけでしまいや。てことで左手寄越しや」
「えっ、今??私サラダ食べてるんだけど」
「そんなもん右手あれば十分やろ」
「お皿持てなくなる.....」
「行儀ええな。でも今や。僕も忙しい身やから。この後燈弥君の全身の型取らなアカンねん」
「初耳だし、取らせるわけないでしょうこの変態が。八つ裂きにして土に埋めますよ、キャベツクズのように」
「.....燈弥がこんな当たり強いの初めて見た。本当に颯希って変態なんだな」
「はぁ?燈弥君の肢体を後世に残さへんとか変態はそっちやん。僕は価値あるものを理解するいち芸術家としてやるべき事をやっとるだけやで」
「当人の人権を無視する時点で人間として終わってますがね」
「芸術の前では瑣末事や」
「なんだか燈弥が可哀想になってきた」
「変わってくれてもいいんですよ??あ、キャベツ君!兎君はどうです?彼結構いい身体してますよ」
「おっ、俺を売るなーーーー!!」
と、そんな下らないやり取りをしている内に文ちゃんが義手を外したようだ。小さな音を立て、白いテーブルに義手が置かれた。
それをキャベツ君は箸を置いて手に取り、カチャカチャ、コンコンと弄り始めた。.....食事中に行儀悪いな。
「そういえば文貴!!孝仁先輩のこと誘ってくれたか?学年テストでお世話になったからどうしてもお礼言いたいんだけど....」
「ん?誘ったって何にですか」
急に出てきた『孝仁先輩』に面を食らいながらも兎君にどういう事か聞く。すると彼はキョトン顔で「なにって、鍋パーティー」と驚き発言をした。
文ちゃんの番を誘うなんて初耳なんだが??
.....別に嫌じゃないよ?ただそういうのは参加メンバーに周知するのが常識ではと思っただけ。だって肉の量とか変わってきちゃうじゃん。サプライズ参加とか限られた肉の前では誰も喜ばない(偏見)。
「.....瀧ちゃんに知らせてます?」
「おう!清継はちゃんと7人参加を見越して肉頼んでるぞ!」
「もしかして知らなかったの僕だけですか?」
「あれっ、燈弥知らなかったのか?てっきり知ってると思ってたけど」
.....ハブられてる訳では無いと信じよう。ただの情報伝達ミスだよネ。
「で、文貴返事は?」
「.......本人は乗り気じゃないけど、何としても連れてくから大丈夫」
「乗り気じゃないならやめといた方がいいのでは??無理矢理連れてこられても困るのですが」
というか文ちゃん、参加メンバーの前で「乗り気じゃない」は言っちゃダメだよ.....。当日孝仁先輩が来た時に「来てくれたんだ。でも本当は乗り気じゃないんだよね」って顔見る度に思ってしまうじゃないか。
どう考えても腫れ物扱いになる.....!!
「あぁああっ乗り気じゃないっていうのは嘘だよ!?言葉の綾というか....!そんなっ、うん、嘘!嘘だから!!孝仁すっごい楽しみって言ってた!!」
いや無理があるでしょそれ。
「そっか!俺も文貴の番に会うの楽しみだぜ!」
そして君は文ちゃんの苦しい嘘を信じるのか.....
さすがは兎君と言うべき?
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