狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第十四章 死を願うより生きる痛みを

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最後の難関はやはりヒナちゃん。どうすれば彼の首を縦に振らせることが出来るだろうか?
月鐘君には是非風紀に入って欲しい。今日の働きぶりを見るに風紀は彼の天職だろう。...んん、天職は言い過ぎかもしれないけど、彼は人のいざこざを収めることに凄く向いているのだ。

.....今何か言葉おかしかったかな?

ゴホン、とにかく彼は星菜の特異性を十二分に発揮し、今日の部屋替えのトラブルを全て解決している。それもスムーズに。

これは何がなんでも風紀に――


「ん、問題ないのだよ」


ヒナちゃんをどう誤魔化そうか考えていると、抑揚のない声が耳を通り抜けていった。

ん?今なんて?


「一条風紀は何もしなくていい。俺が緋賀と話そう」

「いえ、だから彼と話したら星菜だとバレますよ」

「一条風紀。何も隠し通すことが、誤魔化すことが全てではないのだよ」
「(*ˊᵕˋ*)」


何やら考えがある様子。プラカードからして '' 悪い笑み '' を浮かべるような策があるらしい。

大丈夫かなぁ。....でもまぁ彼五大家だし。なにか不思議と『彼ならできそう』と思ってしまう。


「ゴホっ、ゴホ....ところで話が変わるのだが、体調はどうだね?」

「体調ですか?咳をする貴方よりは元気ですけど....昨日も聞いてきましたよね、それ。僕ってそんなに気分悪そうに見えますか?」

「そうではない。心配しているのだよ。君は一昨日倒れた。それも誰もいない風紀委員長室で独り倒れたのだ。あの日は朝から体調が悪そうだったが、自分の限界くらい自覚しているだろうと思って俺は何も言わなかった。なのに結果がアレだ。なんだ、君は己の限界を知らぬ小学生かね?」
「(  ・᷅-・᷄ )」


あー、あー、あー聞こえなーい。


「あれほどの痛みをひとり耐えるだなんて不可能だ。....俺としては昨日も、そして今日も薬を飲んで部屋で安静にするべきだと思うのだが」
「(  ・᷅-・᷄ )」


2連チャンの怒りの顔文字。なんなら強調するように顔に近づけられた。

うん...怒ってるところ悪いけど、今の僕はすこぶる調子がいいんだ。倦怠感も、吐き気も、頭痛もない。月鐘君が言うには保健医が処方してくれた薬のおかげだというけど....薬ひとつでこんな早く回復する?

僕としては月鐘君が何かしてくれたんじゃないかと思ったのだが...


「本当に月鐘君は何もしてない?」

「....ふぅ、何度も言うがなにもしていないのだよ。君が顔を見られたくなさそうだったから財前風紀を追い出し、体勢を回復体位にしたくらいだ。そしてどうしたものかと悩んでいたら、ちょうどそこに赤鼠という者が帰ってきて、彼が君を治した。ああもちろん赤鼠を部屋に入れる前に君の変装は直しておいたぞ」


月鐘君は赤鼠が治したと言う。だから僕は昨日赤鼠にお礼を言いに行った。すると赤鼠は


『げっ、幻痛です』

​───幻肢痛は聞いた事ありますが幻痛は聞いたことないですね。なんですそれ?

『え、ぇと....副委員長の身体に損傷はありませんでした。外部も内部も。だ、だから精神的疲労から来る痛みではないかと....。ありもしない傷に痛みだけ感じるというので幻痛としかいいようがない、です。あ、ぁあの!一度!外のちゃんとした機関で検査受けた方がいいと思いますっ。気絶するほどの痛みを感じていながら、げっ原因が分からないなんて、も、もしかしたら次はしっ、死んじゃ――ぅううううううううっ副委員長、あ、安静にしててくださいぃぃぃぃぃ』


ペソペソ泣きながら話す赤鼠。
話をまとめると、痛みに気絶した僕を月鐘君が介抱し、ちょうどそこへ赤鼠が戻ってきて診察&処置。その後、保健医がやってきて僕に薬を処方してくれたと。

保健医にお礼も兼ねてその時の話を聞きに行こうとしたのだが....どこからかゼニ君もやってきて、保健医は今居ないやら、あの変態がお礼はいならないと言っていたやら、安静にしてろとか、心配したとか赤鼠と同じことをワーワー騒がれた。

2人の様子からして内容は本当なのだろう。

ただどうしても飲み薬一つでここまで身体が楽になるのが腑に落ちなくて....。うーん、不思議。赤鼠は次は死ぬかもと心配していたが、もう次はないんじゃないかと思うくらい身体が元気だ。

あ~、考えるのめんどくさくなった。些細なことでも疑う自分の性格が憎らしい。


「....元気になったしもういいか」

「ゴホン!そう、気にしすぎもよくない。治った。それでいいのだよ」

「はいはいそうですねー」


背もたれに首を預けて天井を仰ぎ見る。
眩い光源に目を細めながら「ふーっ」と肺腑の中の空気を全て吐き出せば途端に身体が重くなった。

まとわりつく倦怠感に身を委ねながら考える。

この学園に入って色々なことを体験した。良くも悪くも本当に色々と。あと数日で1年が経つが、振り返ってみるとシンドい日々の連続だったような気がする。学園に入ったことが良かったことなのか、悪かったことなのか…...現状を見るとあきらかに後者だなぁ。

僕はこの学園にくるべきではなかった。


​────チビちゃんが居ないのなら、この学園に在籍する意味が無いのでは?

​────罪を負い自主退学するべきだ

​────誰にも迷惑かけないようひっそりと暮らすのがいい



「んふっ」

「....どうした一条風紀。何か面白いことでもあったのかね?」

「いえ。魅力的な言葉ほど耳を貸してはいけないものはないなと思いまして」

「なぜだ。当人にとって都合のいい内容だから魅力的に聞こえるのだろう?当然聞くべきだ」

「僕は普通なんですよ月鐘君。悪い事をしたのなら、その悪い事をした分苦しみたい。じゃないと公正に生きられない」

「ん....あぁ、なるほど。亡くした友人に対する懺悔かね」


ぇ、なんで知ってる??
話したことないよね?


「精神的疲労もそのせいだろ。友人が死ぬと人は気絶するほどの痛みを抱えることになるのかね?一条風紀のように不安と後悔で頭がいっぱいになるのかね?」

「....」

「俺も....一条風紀を失えば悲しみに涙を流せるのだろうか。喪失感に発狂できるだろうか。友を亡くした痛みに気を失えるだろうか」

「僕が死んだ時に確かめてください、それは」

「ん、そうだな。​─────一条風紀が死ぬ時が楽しみに思えてきたのだよ」
「(*ˊᵕˋ*)」



ははは。
泣いてくれたら嬉しいよ。

.....うん、月鐘君に泣いてもらうためにも、頑張って生きようかな。







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