八尋学園平凡(?)奮闘記

キセイ

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第2話 転校生は王道だってよ

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「あっはっはっはっはっは!! やっぱ面白いなぁ。お前ら愛斗に手出すなよ?手ぇ出したらおっちゃん黙ってないからな。」


先生のこの言葉でクラスがざわめいた。
あの先生が生徒を名前呼びして、あまつさえ俺達に釘を刺したのだ。なんでも適当でやる気のない先生が特別扱いをした。みんな驚いている。因みに俺も驚いてる。
どっかで「王道展開キタコレww」っていうのが聞こえたきがするけど、ほんとブレないね腐男子って。

うわぁ、チワワ男子が歯をギリギリしてるよ。もはやチワワじゃなくてドーベルマンだねあれは。小型犬のだしていい殺気じゃない。


「愛斗の席は猫屋の隣な。」


俺は手を挙げてこっちこっちと手招きをする。先生いつまで俺を猫屋って呼ぶんだろうか、ワザとなんだろうけど。

転校生は俺のほうへ来ようとズンズン歩いてくるが.....。
そんな小学生みたいな意地悪しなくてもいいじゃん。
転校生を敵視する奴らが彼の進路方向に脚を投げ出し引っ掛けようとしていた。

だが、転校生は気づいていないのか口元を緩めて俺の方を見ている。
結果だけ言おう。彼が通ったあとは足を押さえて震える生徒が何故か沢山いたという.....恐ろしい。


「俺砂杜 愛斗すなもり まなと!愛斗でいいぜ!」

「俺は設楽 未途したら みと。」

「??猫屋じゃないのか?」

「いや違うよ。あの先生の記憶力がよろしくないだけだから気にしないで。」

「?わかった。よろしくな未途!」


おぉう、いきなりの名前呼び。これが巷に聞く王道君というやつか。
これが非王道君だったら嫌だなぁ。ぶっちゃけ名前呼びとかされてもう非王道の片鱗を感じちゃったんだけど、いきなり名前呼びしてくる人だっているから決めつけは良くないよね......。
いい子かもしれないし。


「ハァハァハァ王道キタコレ、うぉっほん!砂杜だっけ?俺は三津谷 晃輝みつや こうき!よろしくぅ!」


ハイいつもうるさい腐男子発見。王道君の前の席に座っている男子生徒がこちらを振り向いて話しかけてきた。こんな近くに腐男子が居たとは....三津谷君腐ってるの隠す気ないよね。もろ「王道キタコレ」って言うてるし。なんでこんな近くにいたのに気づかなかったんだろう?


「晃輝な!俺は愛斗でいいぜ。」

「いきなりの名前呼び頂きましたありがとうございます。愛斗ってさもしかして寮の部屋済賀様と同じだったりする?」

「済賀...?あぁ仁哉の事か!!おう、同室だぜ!」

「うっはーあの済賀様を名前で呼ぶなんて流石は王道。でも王道なら済賀様は愛斗に惚れて番犬よろしくそばを離れないはずなんだけど....今日来てないしなぁ。もしかしてフラグ回収できてない?いや、ガッカリするのはまだ早いぞ俺!食堂イベがまだ残っている。それに咲洲さきしま先生はちゃんと名前呼び&お気に入り発言イベしてたし望みはある筈!!」

「....なぁ未途。こいつ大丈夫か?」

「うーん、手遅れかもしれないねぇ。」


王道君ですらドン引く独り言を三津谷君は披露してくれた。見た目可愛い系なのに眼を血走らせ鼻息荒く話す姿は色々と残念だ。黙ってればモテるだろうに。あ、言うけど一応彼親衛隊持ちだからね。


「なぁなぁ。思ったんだけどさ、なんで将弥はあんなキャーキャー言われてんの?」


将弥というのはおっちゃん先生の名前だ。
フルネームは咲洲 将弥さきしま しょうや
ってか年上、しかも先生を名前で呼び捨てってダメだろ....。


「ムフフフ。この八尋やしろ学園はエスカレーター式の学校で、大体が幼等部からの持ち上がり組なんだ。それでね、閉鎖された空間で思春期真っ只中の男子生徒が過ごすとどうなると思う?そう!男同士での恋愛が始まる!」


テンションたっか.....。ちょっと離れよ....あの、王道君?腕を離してくんないかな?
痛い痛い痛い痛いっ

......離れた距離を戻したら掴まれる力が弱まった。
そんなに三津谷君と1対1はいやなのか。まぁわからんでもないけど。


「だからこの学園では生BLがそこらじゅうで見られる、そうパラダイス!....そんで恋愛ってやっぱり顔がいいヤツらがモテるわけなんですよ。」

「だから将弥はキャーキャー言われてたのか。」

「yeah。そんでね、顔がいい奴らには親衛隊っていうのが出来るんだ。所属してるのはチワワ系男子が多いけど。」

「親衛隊?」

「YES!憧れのあの人に近づく奴はボコボコにしてしまえ!あの人の視線を独り占めする奴は強姦してしまえ!みんなで憧れの人を守ろう!ただし抜け駆けしたら.....わかってるね?」


ニコニコ笑顔で親衛隊を語る三津谷君はなんだか怖かった。表情と言っていることがマッチしてないんだよ。


「三津谷君が言うように親衛隊は危ない。だからあんまり先生に近づかないほうがいいよ。あの人も親衛隊あるし。あ、あと役持ちの人も近づくのオススメしない。あそこら辺の親衛隊の制裁はえげつないから。」

「ちょっと設楽君!そんなこと言ったら王道イベ見れないじゃん!?愛斗気にしなくていいからね?気の赴くままに行動するんだ!」


俺がせっかく忠告してるのにこの腐男子は....。
でも本当に役持ちに近づくのはやめた方がいい、特に生徒会。下手すれば死んでしまう。それほどまでに魔窟なんだよね....生徒会の親衛隊達って。


「俺はそんなの気にしねぇよ?だっておかしいじゃねぇか!将弥に近づく奴らが制裁?されるなんて。そんなんじゃ友達作れねぇだろ!?俺はぜってぇ将弥の友達やめねぇから!」

「愛斗.....流石王道だわ。」


うんうん、いい子だねぇ彼。この学園にいる奴らは親衛隊のやることに疑問とか持たないから王道君の意見は新鮮に思える。結構まともなこと言うじゃない彼。
やっぱり王道君の傍は面白いことが起こりそうだ。


「嬉しぃねぇ。おっちゃんと友達のままでいてくれるなんて。猫屋も愛斗みたいにおっちゃんと仲良くしてくれよォ。なんだよ近づかない方がいいって、はっ.....もしかして嫉妬か!?」


どっから湧いたんですか?
なんで済賀君の席に座ってるんですか?


「俺は設楽です。あと俺の背後に座らないでください。」

「はっ!?これはもしや適当系だらしないおっさん×平凡か!?」


よし決めた。三津谷君...いや三津谷よ。貴様は俺の敵だ。
腐男子は見てる分には面白いけど、自分が妄想の対象になると殺意沸くな。


「未途!将弥にそんな酷い事言ったらダメだろ!?」


はい?
俺酷いこと言ったか?
この王道君の頭の中はどうなっているんだ?

.......面白い!さっきまでまともな事を言ってたのに急に切り替わったようにおかしなことを言う彼に凄い興味が湧いたよ!


「.....ごめんね先生。」

「なっ、猫屋が謝っただと!?」


先生は俺の事をなんだと思ってるのかなぁ!?
俺だって謝ることぐらいあるからね!?


「偉いぞ未途!ってかなんで将弥がここにいるんだ?」

「それはもう愛しの愛斗とお喋りしたくてな?」

「いや、授業しろよ。」


はっ!思わず本音が出てしまった。そろりと後ろを見たがどうやら俺の声は聞こえてなかったようで、先生は王道君にちょっかいをかけている。
良かった....ここで拗ねられても面倒臭いだけだからな。このおっさんは。

みんなは何をしているんだろう?と教室内を見渡すとみんな机に向かってなにかプリントのようなものを解いていた。コソコソと隣のヤツに話しかけてプリントを見ているやつもいれば、黙々とペンを動かしている奴もいる。いくつかこっちに憎しみの視線を向けている奴もいたが俺には関係ないと思うから気にしない!

.....あれ?いつの間にか俺の机の上に数学のプリントが。
なになに?
見間違えでなければ『抜き打ちテスト』って書いてあるなぁ。

ばっと時計を見て時間を確認する。
やべぇ、あと10分しかねぇ!!!

あんのクソ教師め!テストならテストって言えよ!......いや、喋ってた俺達が悪いんだろうけどっ。

おっちゃん先生は時々こういうテストを仕掛けてくる。んで、赤点とったら補習か課題。
先生が補習してくれるならラッキーで終わるが、課題はヤバい。何がヤバいって質もそうだし量もヤバいという、両方救いが無いところだ。どっちか片方だけならまだいいんだけど.....意外とSだよなあの先生。

王道君とついでに三津谷の方を見る。

.....うん。テストがあること気づいてないね。

まぁ優しいやつならここで教えてやるんだろうけど、俺はーー教えてやらねぇww

うひひひひ。三津谷の悲壮な顔が楽しみだぜ。

うん?俺は大丈夫なのかって?

ふはははは。俺は特待生でこの学園に入ってきた猛者だぞ?このくらいのテスト御茶の子さいさいよ!!

今回の赤点組は王道君、三津谷、それに来てない済賀君かな。.....済賀君って真面目に補習や課題やるのかな?

思うんだけど不良って馬鹿のイメージあるけどこの学園の不良ってハイスペックだよね。不良=喧嘩強い=動けるだし、この学園にいるということは頭が良いから、勉強もできて運動もできる.....不良ってなんだっけ?
時々不良にゲシュタルト崩壊する。


キーンコーンカーンコーン----

お、終わった!
さてさて、三津谷の反応が楽しみですね(ニヤニヤ)


「よーし、後ろのやつはプリント集めてこっち持ってこい。」


済賀君がいないから1番後ろは俺か。先生いつの間に前行ったの?王道君と喋ってなかったっけ?


「え、プリント?はぁ!?うっそマジで!?」

「え、晃輝どうしたんだよ。そんなに慌てて、ってかいつの間にプリントが机に....?」


うははははははははは!!
三津谷の顔マジおもしれぇ!リアルムンクの叫びじゃねぇか!!

内心そう大爆笑していると三津谷と目が合った。
うわ涙目だ。


「設楽君!なんで教えてくれなかったの!?」

「え、だって楽しそうに話してたから、もうプリント解き終わってるのかと思って....。」

「ぐっ、まさか設楽君が腹黒属性だと!?」


聞こえてるぞこの腐男子が。


「なぁなぁこのプリントなんなんだ?」


未だにわかってない王道君にこのプリントにどんな効果がついているか説明する。するとだんだん顔を青ざめさせ悲壮な雰囲気を出し始めた。


「えぇ....課題だったらどうしよう。俺勉強苦手なんだよなぁ。」

「愛斗は大丈夫!絶対に補習だからっ、咲洲先生の手とり足とり腰とりの2人っきりの補習!!やだ萌える!『こんな問題もわかんねぇの?しょうがねぇなぁ。おら、もっとこっち来いよ。』『将弥っ近ぇよ!んっ、耳はやめろって!』ぷまい!!」


.....三津谷キメェ。
こいつさっきまでorzしてたのにもう復活してるよ。腐男子は強いなぁ。

ゴミを見る目で三津谷を一瞥し俺はプリントをおっちゃん先生に渡す。


「ん?.....なんだよ猫屋は解いてたのか。途中から静かだったのはそのためかぁ~。10分でこの問題を解くなんておっちゃん鼻が高いぜ。」


先生を無視して席に戻る。
何が鼻が高いだ。
プリント集める時気づいたけど俺だけ問題違うじゃねーか!?
しかも難易度高ぇし!
なに?そんなに俺を虐めたいんか?
はぁ.....特待生だからって俺だけムズい問題やらすの酷いわ~。


あの顎髭め.....今度ネガティブ状態見かけたらカラーボール投げつけてやる。



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