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「もっと早く言ってくれたらよかったのに。そしたら、夏に沢山色んな所に行けたのに。寂しく過ごさなくて良かったのに。俺、お前と行きたいところ、沢山あったんだからな。学校に残って授業全部受けちゃったじゃないか。俺まで石付きの鍵、手に入れちゃったじゃないか」
「それは元々、お前が努力家で優秀だからだよ。あのロイ・グランデの従弟は伊達じゃない。次の夏はお前のいきたいところに一緒に行こう」
「春も秋も冬も、だよ」
「そうだな」
「それから俺、多分明日からキャンキャンしか言えなくなるから、それでも馬鹿にするなよ」
「キャンキャン?」
「お腹すいたらくぅーん。遊びに行きたかったらキャンキャンとかいうから、察してくれ。あ、もしかして腹に魔石がある間は心が読めるとか? 便利だな」
「しー。もう黙れ。照れてるお前も可愛いけど、そろそろお前を全部欲しいんだ」
「エド……」
さっきより早急な仕草で唇を寄せてきた友に、甘い香りがさっきより強くなったと気がついたユーディアは待ったをかけた。
「ねえ、ちょっとまって」
親友の胸を押し返すと、彼が不服げな顔をしたのがなんだか可愛いと思った。
「なんだ?」
「花が咲いたんじゃない?」
身を起こしたエドゥアルドが腕を一振りすると、灯っていた魔石の明かりが消えた。エドゥアルドの上でユーディアは前を向くように体勢を変える。逞しい身体に背中を預けるようにして膝の上に抱き上げられた。周囲の暗さに目が徐々に慣れてくる。
満月が温室に降り注ぎ、月光花を神秘的に照らす。思わずエドゥアルドの膝から飛び降り立ち上がると、ユーディアは花の真下まで歩み寄った。
「綺麗だね」
振り返るとこちらを眺めるエドゥアルドが感慨深げに声を上げた。
「ああ、綺麗だ。まるでその花の精霊が月夜に俺の前に姿を現したみたいに見える」
「それ、さっきも聞いたけど。大げさだなあ」
照れて微笑む顔は柔和で満ち足りていて本当に美しく、エドゥアルドは引き寄せられるようにそのままゆっくりとユーディアに歩みよる。そして佇むユーディアの足元に跪いた。
「エド?」
「俺の月光花。どうか散らずに生涯傍にいてくれ」
そう言うとほっそりしたユーディアの手の甲に魔導騎士がするように口づけてきた。
「大丈夫。俺は花よりずっとしぶといから、絶対にお前の傍で咲き続ける。そう誓うよ」
「ユーディア」
腰をもって高々と抱き上げられたから、ユーディアはエドゥアルドの頭を抱えてそのてっぺんに口づけた。エドゥアルドは軽々とユーディアを抱えたまま歩き、長椅子の上にそっと下ろしてくれる。そのまま自分はローブを脱いで長椅子の背にかけると、シャツをまくって脱ごうとした。
「えええ、エドゥアルド、ここでするの?」
お喋りをする雰囲気ではないと分かってるのに、ついつい焦って聞いてしまった。
「ここで、したい。今すぐお前の事、抱きたい。だめか?」
シャツを頭から脱いだエドゥアルドの顔は期待と少しの焦りであどけなく見えた。彼が初めて告げた我儘がとても愛おしく思えて、ユーディアは胸がいっぱいになった。
(だめか? だって! あのエドゥアルドがすごく可愛いい)
だが可愛いのは表情だけだった。鍛え上げた身体とはこのことだろう。広い胸から脇、腹筋にいたるまでしっかりとついた筋肉が見事で、まだ幼さの残る柔く白い自分の身体とはまるで違う。親友の逞しさを目にして胸の奥が妖しく滾った。
「いいよ。しよ」
「もっと早く言ってくれたらよかったのに。そしたら、夏に沢山色んな所に行けたのに。寂しく過ごさなくて良かったのに。俺、お前と行きたいところ、沢山あったんだからな。学校に残って授業全部受けちゃったじゃないか。俺まで石付きの鍵、手に入れちゃったじゃないか」
「それは元々、お前が努力家で優秀だからだよ。あのロイ・グランデの従弟は伊達じゃない。次の夏はお前のいきたいところに一緒に行こう」
「春も秋も冬も、だよ」
「そうだな」
「それから俺、多分明日からキャンキャンしか言えなくなるから、それでも馬鹿にするなよ」
「キャンキャン?」
「お腹すいたらくぅーん。遊びに行きたかったらキャンキャンとかいうから、察してくれ。あ、もしかして腹に魔石がある間は心が読めるとか? 便利だな」
「しー。もう黙れ。照れてるお前も可愛いけど、そろそろお前を全部欲しいんだ」
「エド……」
さっきより早急な仕草で唇を寄せてきた友に、甘い香りがさっきより強くなったと気がついたユーディアは待ったをかけた。
「ねえ、ちょっとまって」
親友の胸を押し返すと、彼が不服げな顔をしたのがなんだか可愛いと思った。
「なんだ?」
「花が咲いたんじゃない?」
身を起こしたエドゥアルドが腕を一振りすると、灯っていた魔石の明かりが消えた。エドゥアルドの上でユーディアは前を向くように体勢を変える。逞しい身体に背中を預けるようにして膝の上に抱き上げられた。周囲の暗さに目が徐々に慣れてくる。
満月が温室に降り注ぎ、月光花を神秘的に照らす。思わずエドゥアルドの膝から飛び降り立ち上がると、ユーディアは花の真下まで歩み寄った。
「綺麗だね」
振り返るとこちらを眺めるエドゥアルドが感慨深げに声を上げた。
「ああ、綺麗だ。まるでその花の精霊が月夜に俺の前に姿を現したみたいに見える」
「それ、さっきも聞いたけど。大げさだなあ」
照れて微笑む顔は柔和で満ち足りていて本当に美しく、エドゥアルドは引き寄せられるようにそのままゆっくりとユーディアに歩みよる。そして佇むユーディアの足元に跪いた。
「エド?」
「俺の月光花。どうか散らずに生涯傍にいてくれ」
そう言うとほっそりしたユーディアの手の甲に魔導騎士がするように口づけてきた。
「大丈夫。俺は花よりずっとしぶといから、絶対にお前の傍で咲き続ける。そう誓うよ」
「ユーディア」
腰をもって高々と抱き上げられたから、ユーディアはエドゥアルドの頭を抱えてそのてっぺんに口づけた。エドゥアルドは軽々とユーディアを抱えたまま歩き、長椅子の上にそっと下ろしてくれる。そのまま自分はローブを脱いで長椅子の背にかけると、シャツをまくって脱ごうとした。
「えええ、エドゥアルド、ここでするの?」
お喋りをする雰囲気ではないと分かってるのに、ついつい焦って聞いてしまった。
「ここで、したい。今すぐお前の事、抱きたい。だめか?」
シャツを頭から脱いだエドゥアルドの顔は期待と少しの焦りであどけなく見えた。彼が初めて告げた我儘がとても愛おしく思えて、ユーディアは胸がいっぱいになった。
(だめか? だって! あのエドゥアルドがすごく可愛いい)
だが可愛いのは表情だけだった。鍛え上げた身体とはこのことだろう。広い胸から脇、腹筋にいたるまでしっかりとついた筋肉が見事で、まだ幼さの残る柔く白い自分の身体とはまるで違う。親友の逞しさを目にして胸の奥が妖しく滾った。
「いいよ。しよ」
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