イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛

文字の大きさ
98 / 105
番外編

4 これは恋じゃない、推してるだけ-2

しおりを挟む
 だからひっそりと……。ときめいてた。
 だからどっちを好みって聞かれてもね。違うんだなあ。

(ああああ、この話、もっとつっこんで話してみたい。私もそっちのグループに突りたい)

 もう自分のいるグループの会話が上の空で、後ろのグループの話し声が気になってしょうがなくなった。
 それで放課後、たまたま梶浦さんと昇降口で帰りが一緒になったからさりげなく隣を歩いてみた。

「あ、さゆちゃんさん」
「さゆでいいよ」
「うん」
「あのさ、これ今日までだから、良かったらこれ一緒に行かない?」
 
 たまたまなんだけど、大分下火になったタピオカミルクティーのお店、無料引換券が今週末で切れるところで、二枚だけだからグループ全員誘う訳に行かなかったんだよね。
 梶浦さんは眼鏡の向こうの目をびっくりって感じに大きくしてた。

「え、私でいいの?」
「うん。私梶浦さんとちょっと一回喋ってみたいって思ったんだよね」
「……」

 梶浦さんにすんごく警戒されてて、やんのかステップで後ずさりする猫ちゃんみたいな顔になられた。

「あのさっ、今日昼休みさっ」

 坂道を下りながら喋ると、ちょっとずつ息が弾んだ感じになっちゃう。
 
「南澤君と北門君の事さっ、『運命の番』って言ってなかった?」
「え……」

 何と答えていいのか分からないって感じで、警戒されて口をぎゅって結ばれてしまった。
 これははやいところ警戒を解かないと。

「あの二人、運命的。まるで番みたい、あんな風に教室尋ねてくるほど仲良しってすごくない? 私もそう思ってたんだよね!」
「えええええええ!! さゆちゃんさん、分かるの? BL」
「わかるよおお! うちお姉ちゃんが腐女子なんだよね。その影響」
「わたしもおおお!」

 なんてすぐ意気投合してね。

「あの二人、すごい仲いいよね。磁石でくっついてるみたいじゃん。離れると死ぬ、死ぬの? って毎回声かけたくなる」
「そうそう。授業つまらないときは、昼休みに見かけた二人の脳内動画再生してる。ああ、高校入学した時、舞い散る桜の花びらの下、運命的な出会いを春に遂げた二人は運命の番だった! とか小説書きたくなる」
「わかる。わかりみが深い。それで、北門君が」
「「アルファ!」」
 と元気にはもったあと、顔を見合わせて大笑いした。
「ちょっとさ、高一であの画面は仕上がり過ぎでしょ」
「女子にクールで南澤しか見てないあの感じがいい。勘違い女子とか一刀両断してるの、正直気持ちい」
「わかるうううう」
「それで南澤はさあ」

 ためにため、二人して顔を見合わせていっせいの、せ。みたいなテンポで叫ぶ。

「オメガ!」
「アルファ!」

 おおっと、決裂。

「え、なんでなんで? すらっとしてて腰が細くて、北門君との身長差が激やばく完璧で、目とかくりくりしてて、一生懸命さが健気。オメガってかんじだと私は思う!」
「あああ、そこはね。去年あいつと同じクラスだった私としては譲れないところ。南澤はあれで頭も結構いいし、足もめちゃくちゃ速い。人望がある。だから私はアルファなのに、スーパー攻め様アルファである、北門君が現れて……」
「それってあれですか、さゆちゃんさん」
 
 坂を下り終え、信号で止まって、私たちは顔を見合わせて喉をごくりと鳴らした。

「そうよ。南澤は後天性オメガ!!! 運命の番である北門と出会って開花した!」
「きゃあああ! 最高!」

 なんて意気投合してね。私が梶浦さんのグループと仲良くなったから、女子はなんとなくみんな仲良くなっていってね。
 体育祭の頃にはもう、クラス一丸となって行事を楽しめるぐらいになっていったんだ。これも南澤君と運命の『番』北門君のお陰だね。

                             終
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

この変態、規格外につき。

perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。 理由は山ほどある。 高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。 身長も俺より一回り高くて、しかも―― 俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ! ……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。 ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。 坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話

ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。 海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。 夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。 ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。 翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

処理中です...