イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛

文字の大きさ
101 / 105
番外編

7 世界が君に気づいた日-3

しおりを挟む
☆北門視点です。

 ドアモニターに映っていたのはエントランスに佇む燈真先輩の姿だった。

『こ、こんにちは。ごめん……。勝手に来た』

 そう言ったきり、なんか居心地悪そうな感じで先輩は下を向いた。

『あの……、邪魔だったら、帰る』

「あっ、上がってください。お願いします!」

(帰らせてたまるか!)
 
 俺は必死にエントランスの扉を開いた。

(あああ、先輩が来た。嬉しい、嬉しいけど)

 くしゃくしゃの髪を両手でさらに乱す。
 部屋の中はそもそも、父も自分も散らかす方ではないので人を上げても大して問題はない。

(こんな寝起きの姿、とても先輩に見せられない)

 慌てすぎて廊下に出る前に扉の端に小指を打ち付けてしまった。

「うっ……」

 地味にひどいダメージに呻いている場合ではない。リビングダイニングの隣にある自室に戻り、とりあえず寝巻代わりのくたくたのTシャツを脱ぎ捨て、クローゼットの端にかかっていた黒いTシャツを頭からかぶる。
 下はもう部屋着の灰色のスウェットでよしとした。そのまま部屋を出て廊下のすぐ隣にある洗面所に駆け込んで顔をバシャバシャと洗う。もっと丹念に洗いたかったが時間がない。一通り顔のチェック。
 寝起き感はあまりないが、唇がかさついているし、目ヤニなんてついてるところを先輩に見られたら死んでしまう。もう一度顔を良く洗って、保湿液を付けた。口はいつものリップバウム。髪も濡らして整髪料をつけてボリュームを抑えた。
 それでなんとかましになった。廊下をかけて、玄関前でベルが鳴るのを今か今かと胸を抑えながら待つ。
 
 玄関の呼び鈴が鳴った瞬間、俺は扉をゆっくりと開けた。

「先輩、いらっしゃい」

 余裕ありげな、声を必死で出した。
 先輩は、なんというか……。すごい荷物だった。

 大きなリュックを背負い、紙袋を両手に下げてる。そう、控えめに言ってこれは……。
 先輩は頬を擦りながら、照れくさそうな顔を下。

「あはは、家でもするのかって、駅前でバスに乗る前に職務質問されちゃったよ」
「どうぞ。中入ってください」

 心臓が高鳴る。先輩がうちに来たのは初めてじゃないけど、だけどなんだかすごく緊張をするのは夢見が悪かったせいだろう。

「お邪魔します」

 まずは部屋ではなくて、リビングに通した。

「お前、体調大丈夫なのか?」
「体調?」
「ほら、声今もかすれてる。顔いろは思ったよりよさそうだけど」

 先輩が俺の頬を指先で撫ぜる。上目遣いに見つめる目が、心配げに揺れてる。
 指摘されるまで自分の声がざらついていることに気が付かなかった。「失礼します」と誰とはなしに声をかけてから、リュックを下ろす。続けてローテーブルの上に色々と品物を取り出していった。

「四次元ポケットみたいですね」
「あー。うん。母さんに聞いて色々持ってきたんだよね。腹減ってるよな? これちょっと整理したらご飯用意するから。お前そこ座って」

 リュックの外側についていた小さなポケットから、先輩は体温計を取り出した。その後続けて、経口補水液、麦茶、レトルトお粥のパック、レジ袋からはプリン、林檎。紙袋から出してきたのはアルミホイルで包まれた真ん丸の塊、プラスチック容器の中にはゆで卵と肉を煮たようなものも見えた。

 目を見張る俺の前に、先輩が体温計を差しだす。

「まずこれ、お前熱測ってみ」
「あ……。ええ」

 体温計はもちろんうちにもあるが、持参してきた。
 テーブルの上いっぱいに広げられたグッズは明らかに病人を看病するためにグッズで……、俺は一生懸命な先輩の背中を見て涙が滲みそうになってしまった。

「ぐ、具合悪そうなら。俺。今日ここ、泊まってくからな」
(な、なんだって?!)
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

この変態、規格外につき。

perari
BL
俺と坂本瑞生は、犬猿の仲だ。 理由は山ほどある。 高校三年間、俺が勝ち取るはずだった“校内一のイケメン”の称号を、あいつがかっさらっていった。 身長も俺より一回り高くて、しかも―― 俺が三年間片想いしていた女子に、坂本が告白しやがったんだ! ……でも、一番許せないのは大学に入ってからのことだ。 ある日、ふとした拍子に気づいてしまった。 坂本瑞生は、俺の“アレ”を使って……あんなことをしていたなんて!

【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。

或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。 自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい! そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。 瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。 圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって…… ̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶ 【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ 番外編、牛歩更新です🙇‍♀️ ※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。 少しですが百合要素があります。 ☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話

ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。 海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。 夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。 ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。 翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……

処理中です...