仄暗い灯が迷子の二人を包むまで

霞花怜

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第55話 【R18】神降ろしの儀式①

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 ぴちゃりくちゃりと卑猥な水音が聞こえる。

「ぁ……、んぁ……」

 漏れ聞こえる声が自分だと気が付いた瞬間、強い快楽が体を襲って身が仰け反った。
 上手く体が動かないのは、腕が鎖で拘束されているからだ。頭上に回された手が降ろせない。
 やけに甘い香りの香が焚きしめられている。

「あぁ、直桜、やっと起きてくれた」

 声の方に顔を向けると、蝋燭の明かりに照らされた楓の顔がぼんやりと見えた。
 真っ白いシーツの上で、服を剥がされ四肢を拘束されている。
 強い快楽は楓が体を動かす度に増していく。
 自分の中に楓が入っているのだとわかった。

「何で、こんな……」

 口も頭も回らなくて、上手く話せない。
 周囲の状況から反魂香と神蝋が使われているのは、わかる。神降ろしの儀式のためだろう。
 だが、楓にハメられている状況が、わからない。

「直桜には少しぼんやりしていて欲しいんだよ。頭が回ると面倒だからさ。気持ちよくなっちゃえば、もっと訳わからなくなるよね」

 楓がぐん、と腰を押し当てる。
 奥にあたって、思わず腰が浮いた。

「ぁ! やめっ、ぁあ!」
「やっと直桜と繋がれた。解してる間も全然起きないから、呪詛を強くかけすぎたかなって心配したんだよ。起きてくれて良かった」

 楓の顔が近付いて、唇を食まれる。
 舌がねっとりと直桜の口内を舐め挙げる。
 護となら気持ちいいキスが、まるで拷問のようだった。

「そんなに嫌がらないで。直桜の中はきゅうきゅう締め付けて、すごく気持ちよさそうだよ。いっぱい突いてあげるね」

 楓が思い切り腰を打ち付ける。
 体がビクリと反応して、波打った。

「ぁあ! やだ、やめて、楓っ、ぁ、ぁっ」

 直桜が嬌声を上げる度、楓の顔が恍惚に歪む。

「直桜の声、可愛い。もっと聞かせて。気持ちよくしてあげるから」

 弱い所を何度も擦られて、腹に快感が堪っていく。嫌で仕方ないのに、気持ちよさだけは増していって、頭がおかしくなりそうだ。

「んっ、ぁ、ぁん……」
「悦い声になってきたね。そのまま、快楽に飲まれていいよ。気持ちよくなることだけ、考えて」

 楓の声が呪文のように脳に響く。

「好きでもない男に犯されて快楽堕ちしながら儀式なんて、楽しいよね、直桜。神様には有り得ない穢れた儀式だと思わない? もうすぐ必要なものが揃うから、気持ちよくなりながら待っていようね」

 嬌声しか零せなくなった口に、楓が口付ける。さっきより快感が増した。
 頭がぼんやりして、視界が霞む。

(護、護……、ごめん)

 ただひたすらに護の名前を呼んで、許しを請うた。
 目尻から流れた涙を、楓の舌が掬い舐めとった。

「泣かないで、直桜。心配しなくても、すぐに何もわからなくなるから。直桜は直桜のまま、堕ちるんだよ。俺たちと一緒に」

 言葉を流し込むように、楓が口付ける。
 差し込まれた舌を直桜の舌が無意識に絡めとった。
 楓の目が嬉しそうに笑んだ。

「直桜、直桜、愛してる。ずっとずっと好きだった。直桜」
「直桜!」

 楓の声と重なった声に、意識が一瞬、浮上した。
 目だけを横に向ける。
 槐に連れられた護が、直桜の姿を凝視していた。

(見られた。護に、この姿、見られた)

 悲しくて悔しくて、視界が涙で歪む。
 ぎゅっと目を瞑った途端に、腰を強く打ちつけられた。

「あぁ!」

 思わず声が漏れても、手が拘束されているので抑えることも出来ない。
 何度も擦られて打たれる快楽に逆らえず、声がどんどん漏れる。

(嫌だ、聞かれたくない。見られたくもないのに)

 否定するほど快楽が増していく。

「直桜、直桜。中に出すよ」

 楓の声が聞こえて、体がビクリと震えた。

「いやだ、出すのは、やめっ」

 腰を押さえつけられて、逃げられない。
 一際強く腰を押しつけられたあと、腹の中に熱いモノが流れ込んだのが分かった。

「何、これ、熱い……」

 腹の中が焼けるように熱い。
 楓が息を荒くして微笑んだ。

「これも儀式に必要な呪具みたいなものだよ。直桜には穢れてもらわないといけないからね。蠱毒の精液で穢れた神なんて、素敵だね」

 うっとりした表情で、楓が直桜の頬を撫でる。
 肌がぞわりと粟立った。
 楓が腰を引いて、モノが抜けた。

「ぅ……ぁ……」

 腹の圧迫が消えて、体から力が抜ける。

「抜く瞬間まで悦い声を漏らすんだね。直桜、可愛い。これからは毎日、その声、聴かせてね。俺の形を覚えるまで、抱き潰してあげるから」

 楓の舌が直桜の首を舐め挙げる。

「楽しみだね、直桜。穢れた体じゃ、もう愛しい恋人の元には、帰れないよ」
「帰れ、ない。もぅ……」

 楓の言葉だけが頭の中をぐるぐると回る。

「そぅ、帰れない。だって直桜はもう、俺のだから」
「楓、の……」

 唇を塞がれて舌を舐めとられても、抵抗できない。
 降りてくる快楽に只々、身を任せた。
 楓が立ち上がり、白い着物を纏う。

「それじゃ、儀式を始めようか。直桜もいい感じに壊れてくれたからね」

 直桜の顔を眺めて、楓が満足そうに笑んだ。
 何も考えられなくなった頭で呆然と楓を眺めていた。
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