仄暗い灯が迷子の二人を包むまで

霞花怜

文字の大きさ
192 / 354
第Ⅲ章

第24話 【R15】本当の目的は

しおりを挟む
 ぴちゃくちゃと水音を立てて、円は智颯の胸の突起に吸い付いていた。開けたシャツが汗と唾液で湿っている。
 智颯も円も手足を触手で拘束されている。後ろの口に入り込んだ触手が前立腺の良い所を刺激し続ける。陰茎を扱かれて、射精が止まらない。
 服を全部脱がされていないせいで、布が擦れる刺激すら快感に変わる。息を吸うだけでも、欲情が溢れた。

(何回、出したかも、わからない。なのに、まだ出したりなくて疼く)

 また快感が背中を駆け上って、腹の中の疼きが陰茎の先から流れ出た。それらは総て、陰茎に絡まり先を咥え込んだ触手に呑まれている。

「はぁ、美味しいね。智颯君も、もっと出して。いっぱい出せるように、しっかり舐めて気持ち良くしてあげてね、花笑くん」

 促されて、円はまた智颯の胸の突起を舐め挙げた。

「んぁ、ぁぁんっ……」

 声が零れて、智颯の腰がビクリと震える。射精したのだろう。絡まった触手が搾取する動きをしている。
 円の淫水の効果は薄れてきている。だが、不定期で時々腸内に流し込まれるせいで、完全に効果が切れない。

(耐性はできてきているはずだ。もう少し力が入れば、動けるようになる)

 保輔に連れていかれた瑞悠のことも気になっていた。

(保輔の精子の効果、本当に小一時間で切れた。あの時の会話を考えれば、瑞悠ちゃんは無事だと考えていいけど、甘いかな)

 護衛に付いていた初と稀が潜入してきているかもしれない。せめて瑞悠だけでも救い出してほしいと思った。

(俺のせいで智颯君や瑞悠ちゃんを危険に巻き込んだ。一番、守らなきゃいけない人たちだ。本当なら、連れ去られた時点で死んでおくべきだったのに)

 草とは本来、そういう生き物だ。使い捨てる駒だから、兄弟も多い。捕縛された時の対処法も、嫌というほど叩き込まれている。

(未練が多すぎて、死ねなかったな。せめてこの命を懸けて、智颯君と瑞悠ちゃんを救い出さないと)

 智颯という未練が、円を生き留まらせた。ならばこの命は大切な人のために使う。
 暗かった部屋に一筋の明かりが入った。誰かが入ってきたのだとわかった。

「六黒~、食事まだぁ? 私もそろそろ智颯君と遊びたいんだけどぉ」

 不満そうな声で、美鈴が入ってきた。

「そんなに時間、経ったかい? じゃぁ、智颯君だけあげようか。いやでも、惟神の精子は格別だから、もうちょっといいかな」

 六黒が愉悦たっぷりに触手を動かす。
 
「ぁ! んんっ、ぁ、や、また、でちゃぅ、んっ」

 陰茎を扱かれて、智颯が腰を振った。
 体をビクビク揺らして、突っ張った体が脱力する。

「智颯君、可愛い~。犯されてる顔、最高。涙目なとこがポイント高い~。私と寝たら少しは雄の顔するのかなぁ? 楽しみぃ」

 美鈴が智颯の顔を撫でて、頬を舐め挙げた。
 思わず逆立ちそうになる怒りを必死に耐える。

「保輔は、どう? 処女嫌いって言ってたけど、ちゃんと抱けたかな?」

 智颯の体が、ビクンと強張った。

「さっき部屋覗いたら~、二人で布団被ってヤスが思いっきり腰振ってたよ~。口は蜘蛛の糸で塞いでたみたいでぇ。瑞悠ちゃんの、あのくぐもった声は何回もイかされて疲れちゃった声だねぇ。拘束レイプ楽しそうだった~」

 美鈴が至極、楽しそうに笑った。
 智颯の体が震えている。体の内側から熱くなっているのがわかる。

「へぇ、案外、楽しんでるようで、良かったね。保輔も、瑞悠ちゃんも。快楽に目覚めちゃうかな、ついさっきまで処女だったのにね」

 六黒の言葉は、わざと煽っているように聞こえる。
 案の定、言葉に乗っかって、美鈴がケラケラと笑った。

「あんな風に犯されたら、もう普通のエッチできないよねぇ。ビッチ確定じゃん? 瑞悠ちゃん、可愛いから男漁りには困らなそうだし、ヤり放題でしょ」

 智颯の内側から発する熱が、大きさを増していく。
 淫水で意識は朦朧としているはずなのに、怒りが伝わってくる。

(この温かいの、神力だ。封じの鎖で抑え込まれてるはずなのに。こんなのが飛び出したら、まずい)

 内側から今にも吹き出しそうな神力の圧力を感じて、思わず智颯を見上げる。
 目は虚ろなままなのに、表情がない。
 視線を感じて、六黒を振り返った。口端がニヤリと上がる。

「保輔に交代してもらおうかな。俺も瑞悠ちゃん、食べてみたいな。最近は、男の精子ばっかりで、女の愛液を飲んでないから、ちょうどいいや」
「六黒って女も食えるんだ。男の精子だけかと思ってた。卵子食べるの?」
「いいや。女の淫水、愛液とか言うけど、そういうのを飲むだけだよ。俺の触手だと、何度も絶頂しちゃうから、もっとビッチになっちゃうね」

 六黒の目は明らかに智颯に向いている。
 智颯の無意識の怒りを煽っているのだと感じた。
 円は、つい最近、直桜に聞いた智颯の本来の神力の話を思い出した。

(コイツ、まさか知ってて煽ってるのか? いやでも、何で知って)

 知っていても、おかしくはない。
 反魂儀呪のリーダー・八張槐は桜谷集落出身だ。直桜と同じように惟神の事情を知っていてもおかしくはない。
 護衛団の六黒がその話を槐から聞いて知っていても不思議ではない。

(今回のターゲットは智颯君と瑞悠ちゃん。乗り気でなかった理研関連の依頼に乗っかって、槐がやりたかった本当の目的は、まさか智颯君の本来の力の解放)

 八張槐の直桜や護への執着も藤埜清人を奪取する計画も、13課では最早共通認識だ。八張槐の惟神への執着は、異常だ。
 そんな槐が今更、智颯に手を出しても不思議には思わない。むしろ今までノーマークだったことの方が不思議だ。

(直桜様が13課所属になってからの今までの反魂儀呪の動向や八張槐の行動を考えたら、有り得る目的だ。もっと早くに気が付くべきだった)

 保輔は反魂儀呪に関わるヒントを多く残してくれていたのに。
 円は智颯に体当たりした。

「智颯君、起きて! 瑞悠ちゃんは大丈夫だ。だから!」

 すぐに触手が飛んできて、円の口を塞いだ。

「やっぱり、正気に戻ってたか。草って頑丈なんだね。自我が強いのかな。花笑くんはもっとビッチにならないとダメだね。淫水、濃いのあげようね」

 どろりとした液体を喉の奥に流し込まれる。
 まるで精液に似た匂いのソレが生き物のように体内に入り込む。

「んっ、んっ……、はぁ、もっと、美味しい精子、もっとくらはい……」

 視界が揺れて、頭が真っ白になる。
 何もかもがどうでも良くて、ただ、気持ち良くなりたい。
 視界の先で、智颯の首に巻かれた封じの鎖に罅が入ったのが見えた。それすらも、何とも思わない。

「えー、私と遊ぼうよ。私の愛液、たくさん飲みたいでしょ?」

 美鈴に唇を寄せられた。自分から噛み付くように吸い付いた。
 舌を吸い上げて、唾液を飲み込む。

「たくさん飲みたい。抱かせて、美鈴さん」

 我慢できなくて美鈴の頬に舌を這わせる。
 六黒が触手を解いて、円を解放した。

「じゃ、あげるよ。美鈴の好みは花笑くんの方だろ?」
「やったぁ! 六黒のお陰で保輔の精子効果、抜けたっぽいし、貰う!」

 美鈴に抱き付いて、下着の上から陰部を優しく撫であげた。
 愛液で湿った布が指に纏わりついて、円の欲情がせり上がる。

「ここ、早く挿れたい。はぁ、飲みたい。いっぱい舐めていい? 早くクンニさせて。服、脱がせていいよね」

 自分でも驚くほど、スラスラと言葉が出てくる。
 普段は女の体になど興味がないのに、今は美鈴を抱きたくて仕方がない。
 その場で美鈴を押し倒して、服の上から胸を揉み上げ、吸い付いた。

「花笑くん、エロくて最高。巧そうだから期待しちゃうなぁ。ここで始めちゃうの? 我慢できないの、可愛いけど」
「ここでシてあげなよ。智颯君に、自分の恋人が女を抱いているところ、見せてあげるといい。学校で保輔にフェラされてる円くんの声にも興奮していたし、寝取られ好きそうだから、きっといっぱい精子出してくれるよ」
「えー? 智颯君、変態気味だね。仲良くなれそう。私も興奮しちゃう。いっぱい気持ち良くしてね、花笑くん」

 美鈴が円の唇を舐め挙げた。

「ん、早く、しよ……。俺もう、勃ちすぎて、痛い。美鈴さんの中、いっぱい、突き回したい」

 円の指が美鈴の下着の中を弄る。
 指が勝手に美鈴の奥まで入り込む。水音が部屋の中に響いた。
 言葉も体も、まるで自分のモノではないように動く。自分の意識が何処にあるのか、わからなくなった。

「あぁあ、花笑くん、もう美鈴に夢中だね。女の味を覚えたら、男は抱けなくなっちゃうかもね」

 六黒が楽しそうに笑う。きっと煽っているんだとわかるのに、どうでもいい。早く気持ち良くなりたい。
 美鈴が嬉しそうに笑った。その声だけで、陰茎が硬くなる。体が勝手に美鈴に欲情する。

(この体、今、俺のじゃないんだ。さっきの濃い淫水は、六黒の、分身か何か、か……)

 乗っ取られているのだとわかっても、対処の仕様がない。なけなしの自我が現状をかろうじて把握する程度だ。

「別にいいよねぇ、男なんか抱けなくても。花笑くん、可愛いから私の奴隷にしてあげる。峪口君より気持ち善くしてあげるね。男同士でヤるより、女の体の方が絶対、気持ちいいよ」
「そ、だね。男より女の体、欲しい。美鈴さんの奴隷になれるの、嬉し……」

 美鈴の股間に顔を埋める。
 頭上で、大きな力が膨らんでいく気配がする。

 パリン、と何かが割れる音がして、大きな力が弾けた。

 瞬間に、溢れんばかりの金色の神力が部屋を覆いつくした。
 あまりの眩しさに目が眩んで、何も見えなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

機械に吊るされ男は容赦無く弄ばれる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...