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第Ⅲ.5章 番外:『勾玉チャレンジ』
番外【勾玉チャレンジ:智颯編】智颯の憂鬱②
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智颯が住んでいるマンションは白金台にある。桜谷家が古くから所有する物件だ。学校は世田谷区で、警察庁は霞ヶ関だから、自宅が大体中間地点、警察庁の方が近い。
陽人の部屋の前で、扉を眺める。
同じマンションながら、最上階には陽人が住む部屋しかない。一人で住むには確かに広いだろうが。
(僕ですら陽人兄様とは、ほとんど話す機会すらないのに。なんで保輔は一緒に住んでるんだろう)
事情は重々理解しているが、改めて考えると、とても不思議だ。
兄様と言っても、陽人とは親子ほども年が離れている。智颯が生まれる前に陽人は集落を出てしまっているから、話す機会は正月くらいだった。
13課に所属した今では上官だ。感覚としては、まるで身内とは思えない。
(保輔は、僕の大事な人たちにどんどん近付いていくんだな。陽人兄様も、瑞悠も、直桜様も、円だって)
突然に現れた異分子は、自分の大事な人たちの心を取り込んで内側に入り込んでいく。それがとても不快で、薄ら怖い。
いつか自分の居場所が奪われてしまいそうで不安になる。だからきっと、自分は保輔を好きになれないでいる。
(本当は悪い奴じゃないって知ってる。だから余計に嫌なんだ)
項垂れながらインターホンを押した。
「僕は絆されないぞ。ちゃんと、保輔がどんな奴か見極めないと。瑞悠や円が過大評価してる可能性だって」
あまりないだろうなと思う。
直桜や陽人まで騙せるほど、保輔が遣り手なら、話は別だが。
智颯だって惟神だ。人間の嘘も本音も、性根だって、ある程度は感じ取れる。
「……出てこない。いないのかな」
もう何度かインターホンを押してみるが、やっぱり反応がない。
手を掛けると、扉が開いた。
(キーロックされてない。他に入ってくる人がいないから? そんなに不用心とは思えない)
嫌な予感がして、智颯は中に入った。
「保輔、僕だ、智颯だ。担任の先生に頼まれて、届け物に来た。どこにいるんだ」
初めて入る陽人の部屋は広いし部屋数も多い。
智颯たちが住んでいる部屋の倍あるから、間取りも微妙に違う。
居間を通り越してすぐの部屋の扉が開いていた。
「ぁ、ん、はぁ、ぁ……」
密かに聞こえる声は、保輔だと思った。
苦しそうに声を殺しているように聞こえる。
慌てて扉を開き、中を確認した。
「保輔! どうしたんだ、何があった……」
「は……、智颯君、なんで、おるん……」
ベッドに横たわった保輔が智颯を見上げる。
上気した顔と潤んだ瞳に浅くて速い呼吸。それだけでも十分、艶っぽいのに、その手は自分の股間に伸びていた。
「……ぁ、ごめん。調子が悪くて、倒れているのかと」
どうしたらいいかわからなくて、固まった。
(えっと、自慰、自慰行為をしていたんだよな、多分。見られたくないよな、そんなとこ。早く出て行かないと。え、でも、何て言ったらいいんだ。そもそも何で僕、ここにいるんだっけ)
頭の中が大混乱した。
動けずに固まっている智颯をぼんやりと眺めていた保輔が、顔を顰めた。
「んっ、ぁ、ぁっ」
保輔が体を小さく丸めて、耐えている。
その様子が尋常じゃなく見えて、智颯は思わず保輔に近付いた。
「やっぱりどこか悪いのか? 何かの術なら浄化して……」
保輔の手が智颯に伸びた。
顔を摑まえられて引き寄せられる。そのまま唇に噛み付かれた。
「んっ、何やってんだ、やすす……、んんっ」
噛んだ唇を舐めて食んで、優しく吸い上げられる。
熱い舌が探るように智颯の舌を絡めとる。
(何で、コイツ、キス、うまい……)
抗えないまま体の力が抜けていく。
今の智颯は惟神の力を抑えられていないから、保輔のフェロモンはきかないはずだ。甘い匂いもしない。なのに、抵抗できない。
「んっ、ぁ、ぁん……」
自分の口から声が漏れて、ドキリとした。
(なんで、保輔のキスで感じてるんだ、僕の馬鹿、早く、振り払わないと)
体を押し返そうとして伸ばした腕を摑まえられる。ベッドに引き上げられた。
保輔が馬乗りになって、智颯の両手首を押さえつける。その間も唇を離さずにずっと舌を絡めて吸っている。
「んんっ、やだ、やめっ」
唇が離れる合間に声をあげても、保輔は止まらない。
股間が押し付けられて、熱いモノが触れた。
「智颯君も、勃っとるよ。俺と、気持ちよくならへん?」
保輔とは思えないほど、声が甘い。
股間を執拗に押し付けながら、保輔が智颯を見下ろす。
いつもの表情と違う。目も蕩けて、何かに毒されいるみたいだ。
「どうしたんだ? まるで、保輔がフェロモンにやられてるみたいに見える」
「せやんな。発情すると、自分のフェロモンに、欲情煽られんねん。出すまで収まれへんから、智颯君の中に出さして」
保輔が首に噛み付いた。
「ぃっ……」
噛んだ場所を丁寧に舐めあげる。智颯の股間に伸びた手が男根を優しく撫でる。ぞわぞわした気持ちのよさが背筋を駆け上がった。
「待って、ちょっと、まってっ……」
保輔の頭を両手で掴んで、神力を流し込んだ。フェロモンのせいなら、浄化できるかもしれない。
動きを止めた保輔の体が力なく智颯の上に倒れ込んだ。
「保輔! 大丈夫か、意識あるか?」
背中をトントン叩く。
「ぅん……、あるよ……」
呻くような小さな声で保輔が返事した。
「いくら発情したかて、男を押し倒したんは初めてや。俺、女でしか勃たんはずやのに。智颯君なら抱けるらしい……」
「嬉しくない」
保輔も本気でショックを受けているような言い方だったが、慰めてやる気になれなかった。
「大体、円に出したんだろ。円相手でも勃ったってことだろ」
bugsの隠れ家で発見した円は保輔の精子のせいで感情をコントロールされ、かなり混乱していた。
(中出ししたのかフェラで飲ませたのか知らないけど、一生、許さない)
その辺りの話は円もしてくれないし、智颯もうまく聞けないから詳細を知らない。
「あれは、頑張って勃たせたのや。円の顔が可愛くてフェラ上手やってんから出せただけや。自発的に押し倒したんは智颯君が初めてやわ」
知りたかったような知りたくなかったような事実を聞かされて、気持ちの処理に悩む。
「俺ら少子化対策の被験体は、子孫繁栄が本能にプログラミングされとるから、不定期で発情すんのや。発情するとフェロモンがいつもの倍以上出るさけ、自分も飲まれてまう時があんねん」
保輔が大きく息を吸って呼吸を整える。
射精したワケではないから、まだ収まりきっていないのかもしれない。
「オナって何とかすんのやけど、基本は人間の中に出さんと収まらんのよ。けど、俺が女に出したらほぼ完で孕ませてまうし、ゴムも絶対やないきに、今は適当に女引っ掛けるって訳にもいかん。陽人さんに迷惑かけるき」
陽人さん、という呼び方が気になった。
陽人は保輔に自分を名前で呼ぶことを許しているのだ。それくらい、保輔を気に入っているのだろう。
胸の内側が、ざわりとした。
智颯は保輔の体を押し上げた。
「いい加減、僕から離れろ。いつまでも上に乗られていたら、重い」
「うん、せやね。けど、智颯君、ええ匂いする。もう少し、こうさせてんか」
保輔が智颯の体を抑え込んで抱き締めた。
やけに力が強くて、抵抗できない。
(伊吹山の鬼の遺伝子があるんだっけ。馬鹿力も受け継いでるのか?)
ちらりと、保輔を窺う。
智颯の胸に顔を寄せて目を閉じている顔が、いつもより幼く見えた。
「俺は、何でこんな体なんやろな。瑞悠とキスしたいなぁ」
「はぁ⁉」
突然飛び出したとんでも発言に、思わず首を起こした。
「けど、できん。キスしたら、それ以上したなる。瑞悠、孕ませるわけにはいかん。俺の精子の受精率は猫並や。傷付けたない。大事にしたいねん」
まるで寝言のように、保輔が語る。
智颯は顔を降ろした。
(そんな風に言われたら、何も言えなくなるじゃないか)
自分の気持ちを自覚して、フェロモンに煽られても、瑞悠に手を出さない理性だけは残している。そこは評価してやろうと思った。
「お前の体質は、別にお前が悪いわけじゃない。被験体じゃなくても性欲が強い奴も節操がない人間もいるだろ。悲観がる必要ない」
智颯なりの最大限の励ましだ。
保輔が小さく笑った。
「智颯君、優しなぁ。俺は、こないな自分が嫌いや。子孫残すんは、誰彼構わず種撒くんとは違う。好きな相手でも、タイミングもある。そういうの自分で選べん自分の本能が、嫌いやわ」
それはきっと間違いなく保輔の本音で、自分ではどうにもしようがない自分なのだろう。頭で考えて自分をコントロールしているタイプの人間だからこそ、余計に感じる自分への嫌悪かもしれない。
「今みたいに、フェロモンを浄化するだけじゃ、ダメ、なんだよな」
きっとフェロモンを浄化しても根本的な解決にはならない。保輔の話し振りから察するに、異性に種を撒く行為か、或いは脳がそう勘違いするくらいの類似的な行為をしないと収まらないのだろう。
陽人の部屋の前で、扉を眺める。
同じマンションながら、最上階には陽人が住む部屋しかない。一人で住むには確かに広いだろうが。
(僕ですら陽人兄様とは、ほとんど話す機会すらないのに。なんで保輔は一緒に住んでるんだろう)
事情は重々理解しているが、改めて考えると、とても不思議だ。
兄様と言っても、陽人とは親子ほども年が離れている。智颯が生まれる前に陽人は集落を出てしまっているから、話す機会は正月くらいだった。
13課に所属した今では上官だ。感覚としては、まるで身内とは思えない。
(保輔は、僕の大事な人たちにどんどん近付いていくんだな。陽人兄様も、瑞悠も、直桜様も、円だって)
突然に現れた異分子は、自分の大事な人たちの心を取り込んで内側に入り込んでいく。それがとても不快で、薄ら怖い。
いつか自分の居場所が奪われてしまいそうで不安になる。だからきっと、自分は保輔を好きになれないでいる。
(本当は悪い奴じゃないって知ってる。だから余計に嫌なんだ)
項垂れながらインターホンを押した。
「僕は絆されないぞ。ちゃんと、保輔がどんな奴か見極めないと。瑞悠や円が過大評価してる可能性だって」
あまりないだろうなと思う。
直桜や陽人まで騙せるほど、保輔が遣り手なら、話は別だが。
智颯だって惟神だ。人間の嘘も本音も、性根だって、ある程度は感じ取れる。
「……出てこない。いないのかな」
もう何度かインターホンを押してみるが、やっぱり反応がない。
手を掛けると、扉が開いた。
(キーロックされてない。他に入ってくる人がいないから? そんなに不用心とは思えない)
嫌な予感がして、智颯は中に入った。
「保輔、僕だ、智颯だ。担任の先生に頼まれて、届け物に来た。どこにいるんだ」
初めて入る陽人の部屋は広いし部屋数も多い。
智颯たちが住んでいる部屋の倍あるから、間取りも微妙に違う。
居間を通り越してすぐの部屋の扉が開いていた。
「ぁ、ん、はぁ、ぁ……」
密かに聞こえる声は、保輔だと思った。
苦しそうに声を殺しているように聞こえる。
慌てて扉を開き、中を確認した。
「保輔! どうしたんだ、何があった……」
「は……、智颯君、なんで、おるん……」
ベッドに横たわった保輔が智颯を見上げる。
上気した顔と潤んだ瞳に浅くて速い呼吸。それだけでも十分、艶っぽいのに、その手は自分の股間に伸びていた。
「……ぁ、ごめん。調子が悪くて、倒れているのかと」
どうしたらいいかわからなくて、固まった。
(えっと、自慰、自慰行為をしていたんだよな、多分。見られたくないよな、そんなとこ。早く出て行かないと。え、でも、何て言ったらいいんだ。そもそも何で僕、ここにいるんだっけ)
頭の中が大混乱した。
動けずに固まっている智颯をぼんやりと眺めていた保輔が、顔を顰めた。
「んっ、ぁ、ぁっ」
保輔が体を小さく丸めて、耐えている。
その様子が尋常じゃなく見えて、智颯は思わず保輔に近付いた。
「やっぱりどこか悪いのか? 何かの術なら浄化して……」
保輔の手が智颯に伸びた。
顔を摑まえられて引き寄せられる。そのまま唇に噛み付かれた。
「んっ、何やってんだ、やすす……、んんっ」
噛んだ唇を舐めて食んで、優しく吸い上げられる。
熱い舌が探るように智颯の舌を絡めとる。
(何で、コイツ、キス、うまい……)
抗えないまま体の力が抜けていく。
今の智颯は惟神の力を抑えられていないから、保輔のフェロモンはきかないはずだ。甘い匂いもしない。なのに、抵抗できない。
「んっ、ぁ、ぁん……」
自分の口から声が漏れて、ドキリとした。
(なんで、保輔のキスで感じてるんだ、僕の馬鹿、早く、振り払わないと)
体を押し返そうとして伸ばした腕を摑まえられる。ベッドに引き上げられた。
保輔が馬乗りになって、智颯の両手首を押さえつける。その間も唇を離さずにずっと舌を絡めて吸っている。
「んんっ、やだ、やめっ」
唇が離れる合間に声をあげても、保輔は止まらない。
股間が押し付けられて、熱いモノが触れた。
「智颯君も、勃っとるよ。俺と、気持ちよくならへん?」
保輔とは思えないほど、声が甘い。
股間を執拗に押し付けながら、保輔が智颯を見下ろす。
いつもの表情と違う。目も蕩けて、何かに毒されいるみたいだ。
「どうしたんだ? まるで、保輔がフェロモンにやられてるみたいに見える」
「せやんな。発情すると、自分のフェロモンに、欲情煽られんねん。出すまで収まれへんから、智颯君の中に出さして」
保輔が首に噛み付いた。
「ぃっ……」
噛んだ場所を丁寧に舐めあげる。智颯の股間に伸びた手が男根を優しく撫でる。ぞわぞわした気持ちのよさが背筋を駆け上がった。
「待って、ちょっと、まってっ……」
保輔の頭を両手で掴んで、神力を流し込んだ。フェロモンのせいなら、浄化できるかもしれない。
動きを止めた保輔の体が力なく智颯の上に倒れ込んだ。
「保輔! 大丈夫か、意識あるか?」
背中をトントン叩く。
「ぅん……、あるよ……」
呻くような小さな声で保輔が返事した。
「いくら発情したかて、男を押し倒したんは初めてや。俺、女でしか勃たんはずやのに。智颯君なら抱けるらしい……」
「嬉しくない」
保輔も本気でショックを受けているような言い方だったが、慰めてやる気になれなかった。
「大体、円に出したんだろ。円相手でも勃ったってことだろ」
bugsの隠れ家で発見した円は保輔の精子のせいで感情をコントロールされ、かなり混乱していた。
(中出ししたのかフェラで飲ませたのか知らないけど、一生、許さない)
その辺りの話は円もしてくれないし、智颯もうまく聞けないから詳細を知らない。
「あれは、頑張って勃たせたのや。円の顔が可愛くてフェラ上手やってんから出せただけや。自発的に押し倒したんは智颯君が初めてやわ」
知りたかったような知りたくなかったような事実を聞かされて、気持ちの処理に悩む。
「俺ら少子化対策の被験体は、子孫繁栄が本能にプログラミングされとるから、不定期で発情すんのや。発情するとフェロモンがいつもの倍以上出るさけ、自分も飲まれてまう時があんねん」
保輔が大きく息を吸って呼吸を整える。
射精したワケではないから、まだ収まりきっていないのかもしれない。
「オナって何とかすんのやけど、基本は人間の中に出さんと収まらんのよ。けど、俺が女に出したらほぼ完で孕ませてまうし、ゴムも絶対やないきに、今は適当に女引っ掛けるって訳にもいかん。陽人さんに迷惑かけるき」
陽人さん、という呼び方が気になった。
陽人は保輔に自分を名前で呼ぶことを許しているのだ。それくらい、保輔を気に入っているのだろう。
胸の内側が、ざわりとした。
智颯は保輔の体を押し上げた。
「いい加減、僕から離れろ。いつまでも上に乗られていたら、重い」
「うん、せやね。けど、智颯君、ええ匂いする。もう少し、こうさせてんか」
保輔が智颯の体を抑え込んで抱き締めた。
やけに力が強くて、抵抗できない。
(伊吹山の鬼の遺伝子があるんだっけ。馬鹿力も受け継いでるのか?)
ちらりと、保輔を窺う。
智颯の胸に顔を寄せて目を閉じている顔が、いつもより幼く見えた。
「俺は、何でこんな体なんやろな。瑞悠とキスしたいなぁ」
「はぁ⁉」
突然飛び出したとんでも発言に、思わず首を起こした。
「けど、できん。キスしたら、それ以上したなる。瑞悠、孕ませるわけにはいかん。俺の精子の受精率は猫並や。傷付けたない。大事にしたいねん」
まるで寝言のように、保輔が語る。
智颯は顔を降ろした。
(そんな風に言われたら、何も言えなくなるじゃないか)
自分の気持ちを自覚して、フェロモンに煽られても、瑞悠に手を出さない理性だけは残している。そこは評価してやろうと思った。
「お前の体質は、別にお前が悪いわけじゃない。被験体じゃなくても性欲が強い奴も節操がない人間もいるだろ。悲観がる必要ない」
智颯なりの最大限の励ましだ。
保輔が小さく笑った。
「智颯君、優しなぁ。俺は、こないな自分が嫌いや。子孫残すんは、誰彼構わず種撒くんとは違う。好きな相手でも、タイミングもある。そういうの自分で選べん自分の本能が、嫌いやわ」
それはきっと間違いなく保輔の本音で、自分ではどうにもしようがない自分なのだろう。頭で考えて自分をコントロールしているタイプの人間だからこそ、余計に感じる自分への嫌悪かもしれない。
「今みたいに、フェロモンを浄化するだけじゃ、ダメ、なんだよな」
きっとフェロモンを浄化しても根本的な解決にはならない。保輔の話し振りから察するに、異性に種を撒く行為か、或いは脳がそう勘違いするくらいの類似的な行為をしないと収まらないのだろう。
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