仄暗い灯が迷子の二人を包むまで

霞花怜

文字の大きさ
335 / 354
第Ⅳ.5章 番外:仄暗R18アンソロジー『温かな暗がりが愛する二人を包む夜』

Cp2.開×閉『いつも、だけど、今日も』

しおりを挟む
 いつから好きだったかなんて、わからない。
 ただ、家族や兄弟から恋人になった瞬間なら、知っている。
 怯える弟を強引に押し倒したのは、大学生の時だった。
 閉は常に内緒にしていたが、恋人ができたのだと悟るたび、塞がった心に何かが堪っていくのを感じていた。
 堰を切って崩壊した時には、抱いていた。

 けどそれは、二人にとって良いきっかけだった。
 閉もまた、兄への許されない想いを抱えていたのだと知れた。
 それからは、心置きなく二人だけの秘密を共有できた。

「そうだろうと思ってたけどな。開の閉に対する執着とか異常だったし、恋人って言われた方がむしろ自然だわ」

 幼馴染の清人にカミングアウトしたら、そんな言葉が返ってきた。
 清人はバイセクシャルながら、一人の人を想い続けている。好きになった男も女も同一人物だというのだから、逃げようもない。
 ある意味で自分たちより大変だなと思った。

「跡取りが欲しいなら産んであげるよ。性行為は必要ない。精子だけくれれば受精させて受胎できるからね。結婚も子育ても興味がないが、出産には興味があるんだ」

 解析・回復担当統括の朽木要が、開に面白い提案をした。
 鳥居家は古い呪禁師の家系だから跡取りは必要だし、願ってもない提案だ。こんな風に利害が一致する相手はきっと要くらいだろう。
 開と閉の関係に、いつの間に気付いていたのだろうと不思議に思った。 
 だがそれも「要だからな」の一言で納得できるあたり、要だなと思う。


「ぁ、ぁっ……、開、もっと、ゆっくり……」

 自分の下で喘ぐ愛しい人の声で、開は我に返った。
 閉が目を潤ませて開に腕を伸ばす。

「痛かった? それとも、悦すぎる?」

 顔を近づけて、頬に口付ける。
 開の首に腕を伸ばして閉が絡まる。

「悦すぎて、また、イくっ」

 言いながら、閉の男根の先端から白濁が飛び散る。
 閉の腹を汚した精液を指で掬うと舐め挙げた。

「美味し。何回でもイっていいよ、閉。気持ちよくなって、俺を感じて」

 開は閉の耳元に口を寄せた。

「それとも、化野くんみたいに虐めてほしい?」

 鬼の本能が目覚めて智颯を虐めていた化野護に、閉が心を奪われていたのが気に入らない。

「焦らして、イく直前で止めてあげようか?」

 閉が涙目で開を見上げた。

「開になら、何されても、嬉しい、から。多分、すぐイク……」

 ぎゅっと目を瞑って開の腕を握る。
 目を瞑った拍子に涙が流れた。その顔がいつもより幼くて可愛らしい。
 しっかり者の閉が開の前でだけ見せる、弱い素顔が堪らなく愛おしい。
 開は腰を深く打ち付けた。
 閉が好きな奥を容赦なく突いて擦る。

「ぁぁ! そんなにしたら、すぐ! ぁ、ぁっ……、あぁっ!」

 顎を上げて快楽に耐える閉の首に噛み付いた。

「閉が煽るから悪いんだよ。そうやって、俺が欲しがる言葉を、わかっていて吐くんだから」

 愛しているなんて、百万回言ったって足りない。
 余所見なんかする気すら起きないくらいに、頭の中を自分だけでいっぱいにしてしまいたい。
 閉が開の首の後ろに手を回して、顔を引き寄せた。

「開こそ、シてる時に他の男の名前を呼ぶなよ。俺だけで、頭いっぱいにしてろ」

 潤んだ瞳の奥に確かに灯る愛憎に、開は身震いした。
 腰を引いて、浅い所を緩く擦る。
 じれったい快感に、閉が身を捩った。

「ごめん、お詫びにお仕置きするね。今日も俺を兄さんて呼んだだろ? 閉はいつになったら俺を名前だけで呼べるようになるのかな」

 熱が浮いた顔で、閉が開をねめつけた。

「一日に、一回くらい、呼ばないと、お仕置きしてくれないだろ」

 閉の男根の先から、とろりと白濁が溢れて流れた。
 浅い所を擦り続けると、緩い快楽が続いて流れ続けてしまう。
 イけない快楽に耐え続ける閉の顔を眺めているのが、開は好きだ。

「お仕置きされたくて呼んでるの? 俺が嫌がってるの、わかってるのに? 閉は悪い子だね」
 
 お仕置きというより、シたい時の合図だと知っている。
 セックスで虐めてほしいという閉からの暗黙のサインだ。

「愛してほしくて、呼んでる。兄さんでも、開でも、どっちにも、愛されたい」

 回した腕に力を籠めて顔を上げると、閉が開に口付けた。
 勢いで思い切り奥を突いたら、閉が背中を仰け反らせた。

「閉が可愛いこと言うから、もう我慢できないよ」

 肩に腕を回して、根元まで打ち付ける。
 
「んっ……、ぁ、ぁんっ」

 開の肩に顔を埋めた閉が、くぐもった声を上げた。
 快楽に震える体と嬌声で、開の腰の動きが早まる。

「ぁっ、閉、愛してる」

 腹の中に溜まった快楽が言葉と共に閉の中に吹き出す。
 男根をずるりと引き抜いて、ゴムの先に溜まった白濁を眺めた。
 閉の腹に目をやると、同じように射精したようだ。
 さっきより腹に溜まった精液が増えている。
 息を切らしている閉の隣に寝そべって、愛しい体を抱きくるめた。

「化野くんより開の方が意地悪だから、俺は満足だよ」

 言いながら閉が熱い吐息と共に開の唇を食んだ。

「何それ、閉も思い出してたんじゃない」
「開が言うから、思い出しただけだよ」

 甘えた仕草で閉が開に抱き付く。
 終わった後まで、可愛い。
 結局、閉の仕草や言葉にやられてイかされているのは自分だと、つくづく思う。
 それが好きで幸せだと、体を重ねる度に開は感じていた。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

処理中です...