私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ

もぐすけ

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護衛の依頼

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 冒険者組合に入って、右から二番目の受付嬢のところに向かった。

 町娘や少年の格好で入った場合、ガラの悪い冒険者に絡まれる。

 貴族のお嬢様の場合は、奇妙な男につけられる。

 青年貴族の場合でも、依頼する冒険者チームによって、冒険者たちや冒険者組合周辺に巣食う悪人たちの餌食となる。

 全くもって治安の悪い国だ。

 為政者側にいたのだが、自分の国がこんな状態になっているなんて考えたこともなかった。

「私はグロリア伯爵だ。貴人警護の依頼をしたい。出来れば、フレグランスにお願いしたいのだが」

 私は出来る限り低い声を出した。グロリアは私の旧姓で、実在する帝国貴族だ。

 受付嬢は一瞬私の顔を見て固まったが、その後は、頬を染めながらも、テキパキと事務処理を開始した。

 この女性が一番仕事が出来るのだ。

「どちらまででしょうか」

「帝国の帝都内の私の邸宅までの警護をオールインクルーシブでお願いしたい」

 オールインクルーシブは護衛馬車、旅支度、道中の食事の手配など全て込み込みのプランだ。

「帝都ハバスまでですね。フレグランスさんの提示価格は100万バーレル以上となりますが、お支払い方法はどうなさいますか」

「前金でこのオパールの指輪、後金は帝都の屋敷に着いてから同等の宝石で支払う。手配してくれるか?」

「少々お待ちください。鑑定士を呼びます」

 シミュレーションでは、指輪の価値は80万バーレルだった。

 ライザーが初めて買ってくれた指輪だが、ここで役に立って貰おう。

 受付嬢がぼんやりとした目をした鑑定士を連れて来た。鑑定士の目が見開かれた。

「これは素晴らしいオパールですね。組合としては、80万バーレルを保証します」

「それはよかった。それで前金になるだろうか?」

 宝石は現金よりも喜ばれる。

 組合で売れば80万だが、町の宝石屋ではもっと高額で引き取ってくれる場合が多いのだ。

「はい、十分だと思います。フレグランスさんに打診しますので、しばらく待合室でお待ちください」

 私は個室に案内され、一時間ほど待つように言われた。

 私はここで出来る限りのシミュレーションを行うつもりでいた。

 フレグランスはシミュレーションで見た感じでは問題なさそうだった。

 それなりに人を見る目は持っていると思うので、恐らく問題ないだろうが、念のため、シミュレーションで色々と隙を見せた時の彼女たちの行動を確認しておきたかったのだ。

 まず、女だとバレた場合のケースだが、全く問題はなかったが、男のままでいた方が大事にされる感じがしたので、出来ればバレずに済まそう。

 次に持ち金が全部見つかってしまった場合のケースだ。私は装飾品をそれなりに王宮から持ち出しており、一度、シミュレーションで質屋に手持ちの宝石を全部見せたときには、拉致されそうになった。

 これもシミュレーションで確認したのだが、組合での鑑定で大騒ぎになったのが、「王国の涙」と呼ばれているダイヤモンドが入ったネックレスと「エメラルドの滝」と呼ばれる数十個のエメラルドをはめ込んだブレスレットだ。

 組合ではとても買い取れない、あなたは一体どなたですか、という事態になったのだ。

 では、フレグランスに見せた場合はどうなったのかというと、結論から言うと合格だったが、見せない方がいいと思った。

 彼女たち全員の私に対する態度がおかしくなって、私を次から次へと誘惑し始めるのだ。

 私は最終判断を下した。

 彼女たちは善良で、仕事に誇りを持っていて、しかも、腕も立つ。

 フレグランスに任せれば安心だろう。

 そう結論づけたとき、フレグランスの連絡係で忍者のニーナと、リーダーの剣士レイモアが個室に案内されて来た。

「初めまして。グロリア伯爵様。フレグランスのリーダーを務めておりますレイモアです。こちらはニーナです」

「初めまして、シーファンです」

 全然初めましての気分ではなかったが、初めましてが妥当だろう。

 私はシーファの男性版のシーファンを名乗ることにした。
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