2 / 54
2 普通の転生者、普通の人生を語る
しおりを挟む
僕、サミュエル・エマーソンはエマーソン子爵家の三男だ。
上には兄が二人と姉がいる。
ようするに貧乏子爵家の末っ子だ。ちなみに前世の記憶を持つ転生者だ。
物心ついた時に、僕は自分がこの世界では異なる世界で生きていた事を思い出した。
幼馴染みのフィリップにおやつを取られて取り返そうとして転んで頭を打った時だ。椅子から転げ落ちはしたものの、怪我は後頭部のたんこぶ一つ。それでもフィルは彼の両親から大層叱られて、泣きながら謝罪をしてきた事を覚えている。
フィルは領地を持っていない男爵家の長男で、彼の両親は僕の領で仕えている。要するに領主の坊ちゃまに怪我をさせたわけだ。
だけど、おやつも謝罪もその時の僕にはどうでも良くて、何が起きたんだ、ここはどこなんだ、どうしてこんなに小さくなっているんだ‼ っていうパニックしかなかった。
まぁ数日後には異世界転生者かぁって落ち着いちゃったんだけどね。
だって、僕の転生は別に何かの小説やゲームの主人公になっていたわけでも、断罪される予定の悪役になっていたわけでも何でもなくて、ただ、このラスボーンという王国のエマーソンという小さな領持ちの子爵家の末っ子として生まれたってそれだけだったんだもの。
本当にそれだけ。
大事な事だから、二度言っちゃった。
勿論転生者の特典なんてものもなかったよ。チートなんて論外。というかね、転生前の僕自身が平凡だった。取り柄がないというか、ふつー。
何か手に職があったわけでもないし、これと言った特技があったわけでもない。
たとえば、世界的に有名なシェフだったとか、お菓子作りが上手かったとか、有名な建築家だったとか、何かの職人さんだったとか、ものすごく色々な事を知っている学者とか、そういうのだったら、何か役に立ったかもしれないけれど、考えてみたらな~んにもなかったんだよね。
普通に高校いって、なんとか大学に入って、とりあえず引っかかった会社に入った。
そして終わり。お約束みたいな感じでトラックにひかれた……わけでもない。分からないけど、気づいたら5歳児だった。もう何かあまりに平凡過ぎて笑えるよね、
そして今は15歳。こちらの世界でも、大きくなっても平凡な事は変わりなく、普通に育って、普通に貴族が通うという王都にある学校に通っている。魔力も人並みより少しだけ上。体力はちょっと下。
このラスボーン王国は16歳で成人する。あと少しで僕も16歳。
いや、ほんとに何もないただただ普通の人生でした。
あ、これじゃあ人生終わっちゃうみたい。ちがうちがう。これからだよ。
そう、あまりにも普通過ぎて、あまりにも何もなくて過ぎてきてしまったから。だからこれからきっと変化が訪れるって思いたいんだ。そして、それを幸せにしたいんだ。
それをバカの一言ってなにさ!
「くっそー、フィルめ。今頃たんこぶの恨みが甦ってくる気さえするぞ」
とにかく僕は今年の終わり頃に官吏の試験を受けて、来年、学校を卒業。そして王宮で働くんだ。
うん?どうして王国の官吏を目指しているのかって? だって、官吏になれば王都の寄宿舎にタダで入る事ができるんだ。つまり、貧乏子爵家の末っ子は「幸せになる」為に家を出る算段をしているんだ!
----------
上には兄が二人と姉がいる。
ようするに貧乏子爵家の末っ子だ。ちなみに前世の記憶を持つ転生者だ。
物心ついた時に、僕は自分がこの世界では異なる世界で生きていた事を思い出した。
幼馴染みのフィリップにおやつを取られて取り返そうとして転んで頭を打った時だ。椅子から転げ落ちはしたものの、怪我は後頭部のたんこぶ一つ。それでもフィルは彼の両親から大層叱られて、泣きながら謝罪をしてきた事を覚えている。
フィルは領地を持っていない男爵家の長男で、彼の両親は僕の領で仕えている。要するに領主の坊ちゃまに怪我をさせたわけだ。
だけど、おやつも謝罪もその時の僕にはどうでも良くて、何が起きたんだ、ここはどこなんだ、どうしてこんなに小さくなっているんだ‼ っていうパニックしかなかった。
まぁ数日後には異世界転生者かぁって落ち着いちゃったんだけどね。
だって、僕の転生は別に何かの小説やゲームの主人公になっていたわけでも、断罪される予定の悪役になっていたわけでも何でもなくて、ただ、このラスボーンという王国のエマーソンという小さな領持ちの子爵家の末っ子として生まれたってそれだけだったんだもの。
本当にそれだけ。
大事な事だから、二度言っちゃった。
勿論転生者の特典なんてものもなかったよ。チートなんて論外。というかね、転生前の僕自身が平凡だった。取り柄がないというか、ふつー。
何か手に職があったわけでもないし、これと言った特技があったわけでもない。
たとえば、世界的に有名なシェフだったとか、お菓子作りが上手かったとか、有名な建築家だったとか、何かの職人さんだったとか、ものすごく色々な事を知っている学者とか、そういうのだったら、何か役に立ったかもしれないけれど、考えてみたらな~んにもなかったんだよね。
普通に高校いって、なんとか大学に入って、とりあえず引っかかった会社に入った。
そして終わり。お約束みたいな感じでトラックにひかれた……わけでもない。分からないけど、気づいたら5歳児だった。もう何かあまりに平凡過ぎて笑えるよね、
そして今は15歳。こちらの世界でも、大きくなっても平凡な事は変わりなく、普通に育って、普通に貴族が通うという王都にある学校に通っている。魔力も人並みより少しだけ上。体力はちょっと下。
このラスボーン王国は16歳で成人する。あと少しで僕も16歳。
いや、ほんとに何もないただただ普通の人生でした。
あ、これじゃあ人生終わっちゃうみたい。ちがうちがう。これからだよ。
そう、あまりにも普通過ぎて、あまりにも何もなくて過ぎてきてしまったから。だからこれからきっと変化が訪れるって思いたいんだ。そして、それを幸せにしたいんだ。
それをバカの一言ってなにさ!
「くっそー、フィルめ。今頃たんこぶの恨みが甦ってくる気さえするぞ」
とにかく僕は今年の終わり頃に官吏の試験を受けて、来年、学校を卒業。そして王宮で働くんだ。
うん?どうして王国の官吏を目指しているのかって? だって、官吏になれば王都の寄宿舎にタダで入る事ができるんだ。つまり、貧乏子爵家の末っ子は「幸せになる」為に家を出る算段をしているんだ!
----------
116
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる