普通の転生者は幸せになる計画を立てる。でも幸せって何?

tamura-k

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23 普通の転生者、初めて聞いた事に驚く(改稿)

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 「とりあえず食べましょう」っていう母様の声に、僕たちは料理の並んでいるテーブルの席についた。

「サミュエル、改めて官吏の試験の合格おめでとう」
「ありがとう」

 父様からそう言われてやっぱり嬉しいなって思った。何だか本当に合格したんだなって改めて思う。うん。幸せ集めは順調だね。

「合格者は3人だけだったんだって。自分でも良く通ったなって思ったけど、やっぱり嬉しい。僕、あ、うん、私もこれから頑張ります。沢山お給金がいただけるようになったら家にも入れるね」

 最初は難しいと思うけど、でももしこのまま文官の道を順調に突き進んで、万が一にでも宰相府の役人になれたら、お給金だって全然違うと思うんだ。
 そうしたらお金だけでなくブラッドの所みたいにお家に美味しいお菓子とか差し入れもして、皆にももう少し楽をしてもらおう。
 その為には幸せ集めを続行して、さらなる幸せを掴みつつ、宰相府を目指す!
 ちなみに僕は宰相になりたいわけじゃないよ。子爵家の三男が宰相になんてなれないのは分かっている。でも宰相府の文官ってやっぱりちょっと憧れるでしょう?

 食事をしながらそんな事を考えていたら、兄様がムッとしたように口を開いた。

「それは有難いが、サミー、無理をしてはいけないよ。うちは確かに余裕があるとは言えないけれど、そんなにカツカツで困っているわけでもないんだ。だから昼食を抜いているなんて聞いた時は本当にびっくりしたんだよ。私の時にはちゃんと三食出ていたのにどうしてそんな風になったのか。とにかくサミー」
「ああ、ええっと、すみません。本代につぎ込むことが多くて……今は、ちゃんと食べてます」
「お小遣いが欲しいから市場で働くと言われたのも、私としては本当に自分が不甲斐なくて」
「まぁまぁ、アーネスト。市場で働く事は以前話し合いをして社会勉強という事で納得したはずですよ。それくらいにしましょう。サミー沢山食べなさいね」
「ありがとうございます」

 ううう、母様ありがとう。助かった。そうなんだよ。この家で兄様が一番僕が働くっていう事に反対していた。だから食堂での方は実は内緒にしていたんだ。これで食堂で夜に働いていたなんて知れたら、最悪学園をやめさせられたかもしれない。

「それにしてもあの市場での件は大変だったね。その後は大丈夫なんだろう?」
「え?」

 黙り込んでしまった兄様の代わりに口を開いた父様に僕は思わず声を失ってしまった。ちょっと待ってなんで父様がマルシェの件を知っているの?
 そんな僕の様子に父様はしまったという様な顔をした。それを見て再び母様が口を開く。

「貴方が夏休みにこちらに戻ってこないというから、どんな様子なのか、大丈夫なのかを知らせるようにフィリップに頼んでいたの。そうしたら厄介な者につけ回されているとか。その相手が公爵家などというから皆で心配していたんですよ」

 フィルか。そういえば何度か本当に帰らないのか言われたな。まさか報告するように言われているとは思わなかった。でもこれは仕方がないよね。だって、フィルもエマーソン家に雇われているわけだしね。

「お祖父じい様がご自分のお友達にどんな人間なのかとそれとなく聞いて下さったんだよ。お付き合いをきっぱりと断っているのについて回るなんて、たとえ公爵家の子息だといってもロクな者ではないからな。まぁ、話が公爵まで届いて近づけないようになったのなら良かった」
「これからは王城の中で務めるようになるのですから、もっと注意をしなければなりませんよ」

 父様と母様の言葉にコクコクと頷いていると、兄様がゆっくりと口を開いた。

「ああ、それからね、サミー。何だか誘拐事件があったらしいね」
「へ?」
「王都に乗り込んでいこうと思ったが、官吏の試験が近いので我慢をしていたんだ。どういう事なのか食事の後にしっかりと聞かせてもらおう」

 兄様、こめかみの辺りに何だか怖いマークが浮いています。
 普段は優しくてちょっと過保護かなっていうくらいの面倒見の良い兄なんだけど、怒らせるととても怖いんだよね。ここに二番目のマクシミリアン兄様がいなくて良かった。あっちはもっと脳筋というか、筋力なんだ。

「貴方が未成年なので、王都の警ら隊の方から私たちにも報告が来たのですよ。念の為にフィリップにどういう事なのか確認もしました」
「…………ご心配をおかけいたしました」

 うぅぅ、全部知られている感じだ。そうか、未成年だと家にお知らせがいっちゃうのか。

「今だから言うけどね、サミー。君がつけているその腕輪はお祖父様が作ったんだ。何かがあるとこちらへ知らせるようになっている。その知らせの後にフィリップが魔法陣を使っただろう? 緊急用の魔法陣が使われたから、こちらでは大騒ぎになってね。まぁ、警ら隊からきちんと報告が入ったので、そのままにしたけれどね」
「………………」

 もう声も出ない。何それ初耳だよ! っていうかお祖父様って何者? ううう、それだけ分かっているなら僕の説明要らなくない? 
 そんな気持ちでちらりと兄様を見たら、ものすごく綺麗な顔で笑われた。うん。僕の家族ものすごく美形ぞろいなんだよね。僕を除いて。そして美形の人の有無を言わせない的な微笑みって本当に怖い!
 隣に座っている兄嫁さんも少しだけ気の毒そうな顔をしたけど口をはさむことはしない。なんならその隣の甥っ子も静かに食事を続けている。
 あああああ、集めている幸せが逃げていきそう。
 話題を変えよう。このままではダメだ。

「あ、あの、試験官の方から、お祖父様はお元気かと言われたのですが」
「ああ、お祖父様は昔は王城に務めていらしたからね」
「は、初耳です!」
「あら、そうなの? てっきりお祖父様に憧れて官吏になるって言っているのかと思ったわ」

 驚きの中で食事が進んでいく。
 でもね、デザートが出てきた頃に聞こえてきた言葉はそれまでの驚きをはるかに超えるものだった。

大祖母様おおおばあさまが王族だったから、未だに色々ありますからね」
「え!」
「何だいサミー、それも知らなかったのかい? 話していなかったかな。肖像画が飾ってあるだろう?」

 待って、待ってよ兄様、父様! その知っていて当り前な感じ何? いつ教わった? え? もしかしてたんこぶ作った時に元の記憶がいくつか零れ落ちていた?

「大祖母様が大祖父様おおおじいさまに恋をして、家を出て勝手についてきてしまったのよ。それで大騒ぎになったの。当時は大ロマンスとか言われて大変だったみたいよ」
「ああ、結局王家を出て、平民としてエマーソンに嫁いでいらしたと聞いている。末娘だったからお父上である陛下はとてもご心配されたとか。陛下は元々大祖母様を他国へやる事は考えず、降下して公爵位を与え、入り婿をさせるご予定だったらしいから大祖父様には公爵にならないかって何度もお話があったようだね。まぁ、子爵家の息子が公爵家に婿入りするというのはどう考えても難しいから、最低伯爵家、出来れば侯爵家と養子縁組をして、それからって事になるだろうが」
「公爵………」

 大祖父様、どうしてその時に公爵家にならなかったんでしょうか。

「だけどその時はエマーソン家も跡継ぎが大祖父様お一人だったし、その予定で届けを出していたし、公爵家の入り婿など自分にはとてもって身を引いたのよね。だけど大祖母様は大祖父様以外の方とは絶対に結婚しないって」

 大祖母様もすごい………

「それで、まぁ、色々あったらしいけど、無事結婚して子供も出来て、お祖父様が生まれたのよ。だけどまた、それも大変でね。お祖父様も大祖父様を凌ぐほどの魔法量で、文武に優れていてねぇ。大祖母様の血筋をどうしても入れたいって陛下がごね……仰って、やはり王家から降下をした公爵家に養子へと望まれたそうなんだけれど、大祖母様は認めなくて。結局、学園の卒業後はお祖父様は王宮で務めていたけれど、こちらへ帰ってきてお祖母様と結婚をしたのよ」

 知らなかった。全然知らなかった。って言うか、そんなに大きなコネ、もといバックがいるのにどうしてうちの領はこんなにビンボーなんだろう?
 っていうか、ごねたって言いかけたよね? 陛下……



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