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まずはとにかく給付金
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●旧世界持続化給付金
激しい縦揺れを軸に部屋が旋回すると月日も一気に巡っていた。何しろ朝九時に出勤して定時に会社のエントランスで翼竜に出くわした。街並みはすっかり退化しておりすべて石造り。スマホの日付は西暦1970年だ。
ありえない。それから甲冑やら如何にもなローブ姿の老婆が事務所に出入りしてサーバー室や会議室に勝手な変更を加えたたあげく夜半に全員が金縛りから
解放された。魔導士の話では建物ごとレーキ帝国に接収されたらしい。つまり王室直属の機関として21世紀日本のコールセンターが召喚されたという次第だ。その辺の意思疎通は魔法が解決してくれる。
「しかし何故にコールセンター?」
オペレーターの山吹翠が電話線をくるくる弄ぶ。
「釈明しよう!」
マギが呪文を唱えた。窓のカーテンが切って降ろされた。
古来より辺境領にパコラ王国とサタニック魔国の二大勢力あり。王都歴117年。落ち延びようとするパコラ王の転移ゲートに魔王はパワーを注いで妨害した。しかし敵もさるもの。王は魔王を道連れに自爆を図った。かくて辺境領は消失したが転移パワーの暴走は時空の摂理を乱した。結果、日本という異世界にゲートが生じレーキ帝の治世に扉が現れた。
「生活補償とな?」
密偵の報告は寝耳に水だった。だが辺境領消滅を教訓として軍事より経済を優先し賢帝と呼ばれるレーキは善処を図った。日本という国は有事に弱いが経済に強い。おまけに異界の科学技術は願ってもない僥倖だ。従順の術者をありったけ動員せよと魔道省に命じて相手国を丸ごと併合した。
「よかろう。丁重に扱え。衣食住もくれてやれ」
「正気ですか?恵んでやれと仰る」
「彼奴等は金の生る木だ。丁重に扱え」
大臣とやり取りのあと帝国は日本人を難民救済する政策決定をした。
「と、いうわけで閣下、圧倒的にマンパワーが足りません」
センター長に昇格した山吹は窮状を訴えた。
「どういう事だ?」
「残念ながら邪の魔力が注入されておりまする。敵の挟撃かと」
手のひらの水晶玉がどす黒い。
「なんと!万策尽きたか」
王は宙を仰いだ。そして眼光をきらめかせた。
「そうだ!敵はゲートの途中におるのだな?」
「はい。毒々しい濁流が注がれております」、と占師。
「ならば目には目を歯には歯をだ。こちらもありったけの魔力を投入せい!」
「そんなことをすればゲートが壊れます。どころか王都が粉みじんに…」
側近たちがざわめく。
「構うのもか!魔王に渡すぐらいなら臣民と共に散ろうではないか」
檄を飛ばすが聴くものはいない。どころか衛兵が制止しにかかった。
「王様がご乱心あそばれた」
十重二十重にのしかかる兵士達。もまれながら王は決死の呪文を唱えた。
「か、対抗呪文を!」
とっさに占い師たちが無効化を試みる。しかし玉座が白熱した。
強烈な奔流は召喚門を打ち破り王宮を火球に変えた。
【パコラ王国に栄光あれぇええ!】
正邪混然一体となって断末魔の叫びを飲み込んでいく。
王都歴117年。パコラ王国と隣国サタニックを含む辺境領は地図から消えた。
激しい縦揺れを軸に部屋が旋回すると月日も一気に巡っていた。何しろ朝九時に出勤して定時に会社のエントランスで翼竜に出くわした。街並みはすっかり退化しておりすべて石造り。スマホの日付は西暦1970年だ。
ありえない。それから甲冑やら如何にもなローブ姿の老婆が事務所に出入りしてサーバー室や会議室に勝手な変更を加えたたあげく夜半に全員が金縛りから
解放された。魔導士の話では建物ごとレーキ帝国に接収されたらしい。つまり王室直属の機関として21世紀日本のコールセンターが召喚されたという次第だ。その辺の意思疎通は魔法が解決してくれる。
「しかし何故にコールセンター?」
オペレーターの山吹翠が電話線をくるくる弄ぶ。
「釈明しよう!」
マギが呪文を唱えた。窓のカーテンが切って降ろされた。
古来より辺境領にパコラ王国とサタニック魔国の二大勢力あり。王都歴117年。落ち延びようとするパコラ王の転移ゲートに魔王はパワーを注いで妨害した。しかし敵もさるもの。王は魔王を道連れに自爆を図った。かくて辺境領は消失したが転移パワーの暴走は時空の摂理を乱した。結果、日本という異世界にゲートが生じレーキ帝の治世に扉が現れた。
「生活補償とな?」
密偵の報告は寝耳に水だった。だが辺境領消滅を教訓として軍事より経済を優先し賢帝と呼ばれるレーキは善処を図った。日本という国は有事に弱いが経済に強い。おまけに異界の科学技術は願ってもない僥倖だ。従順の術者をありったけ動員せよと魔道省に命じて相手国を丸ごと併合した。
「よかろう。丁重に扱え。衣食住もくれてやれ」
「正気ですか?恵んでやれと仰る」
「彼奴等は金の生る木だ。丁重に扱え」
大臣とやり取りのあと帝国は日本人を難民救済する政策決定をした。
「と、いうわけで閣下、圧倒的にマンパワーが足りません」
センター長に昇格した山吹は窮状を訴えた。
「どういう事だ?」
「残念ながら邪の魔力が注入されておりまする。敵の挟撃かと」
手のひらの水晶玉がどす黒い。
「なんと!万策尽きたか」
王は宙を仰いだ。そして眼光をきらめかせた。
「そうだ!敵はゲートの途中におるのだな?」
「はい。毒々しい濁流が注がれております」、と占師。
「ならば目には目を歯には歯をだ。こちらもありったけの魔力を投入せい!」
「そんなことをすればゲートが壊れます。どころか王都が粉みじんに…」
側近たちがざわめく。
「構うのもか!魔王に渡すぐらいなら臣民と共に散ろうではないか」
檄を飛ばすが聴くものはいない。どころか衛兵が制止しにかかった。
「王様がご乱心あそばれた」
十重二十重にのしかかる兵士達。もまれながら王は決死の呪文を唱えた。
「か、対抗呪文を!」
とっさに占い師たちが無効化を試みる。しかし玉座が白熱した。
強烈な奔流は召喚門を打ち破り王宮を火球に変えた。
【パコラ王国に栄光あれぇええ!】
正邪混然一体となって断末魔の叫びを飲み込んでいく。
王都歴117年。パコラ王国と隣国サタニックを含む辺境領は地図から消えた。
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