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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編
55.それが出来ないから悩んでるんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!(SIDE:クラーラ)
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「それで、改めて聞きますけど大丈夫でしょうか?よもや昔よく見ていたという暗闇の中で取り残されてる悪夢を」
「むぐむぐ……そっちは違う。あれは病が完治してからさっぱり見なくなってるし、さっきまで見てたのは別の夢だから……もぐもぐ」
クラーラを始めとするスタッフ達への差し入れとして用意されていた軽食、サンドイッチを食べてる最中、心配そうに問いかけてくるメイ。
彼女は親の代からアムル家に仕えてくれる忠臣だ。その忠誠はアーデルだけでなくクラーラにも向けてくれる。
だからクラーラもいらぬ心配をかけないよう、あえて見せつけるかのように盛んな食欲をみせているのだ。
それに……
(うん、やっぱりお義姉ちゃんの料理はおいしいよね~)
アーデルは自ら不器用と宣言するも、料理だけは例外だった。
彼女は昔から病で食の細いクラーラのために、味やら栄養やら食べやすさを徹底的に追及した病人食を自らの手で調理していたのだ。
その過程で自分や家族の分、さらに使用人やら私兵からもリクエストされたら生来の面倒見の良さもあって断る事なく作ったりするので、いつのまにか料理得意へとなってしまったらしい。
その特技は王太子妃に不必要なので宝の持ち腐れと化してる部分はあれど、サンドイッチの出来具合からして腕は落ちるどころかさらに上げてるようだ。
王太子妃教育と平行してこれだから、もし料理に専念すれば王国を代表する料理人になってたかもしれない。
ただ、アーデルの料理には決して無視できない欠点がある。
(このハンバーグ……隠し味にならないぐらい虫を混ぜ込んでるね。それにこのピクルスも毒あるやつじゃなかったけ?一応漬け込む過程で毒抜きされてるようだけど、後始末はちゃんとやってくれてるのかなぁ……)
アーデルは虫だろうが毒だろうがおいしければ平然と食するという、いわゆる悪食なのだ。そのため、使われる食材や調理法は知ったらちょっと後悔してしまうものが稀によくある。
そんな一般人なら忌避したいアーデルお手製サンドイッチを平然と食べるクラーラに安心したのか、メイは好奇心から一つ質問しようとする。
「ちなみにどんな夢……いえ、忘れてください。悪夢なんてさっさと忘れたいもの……ですものね」
「別にいいよ。悪夢といっても私の命日となりかけたあの日の追体験みたいな……って、これまずいかな?」
「問題ありません。お嬢様が唐突に屋敷を飛び出してそのまま行方不明なんて、いつもの事といえば……」
「やめよう!この話題やめよう!!」
クラーラの命日になりかねたあの日、珍しくクラーラのそばに寄り添わなかったアーデルがどこにいたかというと……
なんでも『お母さんのお母さんのお母さんならクラーラの病気治してもらえるんだよね!!だったら今すぐ連れてくる!!』とかで外に飛び出し、そのまま1週間も行方不明だったのだ。
身内にとってはクラーラだけでなくアーデルすらも……になりかけただけあって、大騒ぎだったらしい。
特にメイはいきなり屋敷を飛び出したアーデルを連れ戻すため、大人に報告する時間も惜しいっとばかりに後を追いかけるも、途中で見失うどころか帰り道すらもわからなくなってアーデル共々1週間行方不明という二重遭難をやらかしたのだ。
最終的には皆助かったとはいえ、大失態を侵したメイにとってこの話題はあまり思い出したくないものといえる。
だからクラーラは慌てて話題を変える。
「夢の事より現実問題。私はこれからお養父さん達にクズ達と害虫貴族の駆除の協力求めるわけだけど……どう言えば穏便に済ませてもらえると思う?」
「穏便に済ませる必要、あります?」
「下手したらクズや害虫ごと王都消し飛ばしかねないからあるって!!」
「いいじゃないですか。あんな穢れた街は徹底的に消毒すべきです」
「やめてー!!王都が壊滅なんてしたら、復興費がとんでもない額に膨れ上がっちゃうからぁぁぁぁ!!!!」
「それが何か問題でも?」
「あぁぁ……だめだ……アムル家の中では比較的常識があるメイさんですらこうなんだから、絶対穏便にならない……どうしよう」
「クラーラ様も諦めて、皆で一緒に燃やしましょう。跡形もなくきれいさっぱりになれば、きっと悩みもきれいさっぱり」
「それが出来ないから悩んでるんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ちょ、馬車の中で暴れるのはやめてって!!馬が興奮して制御ができな……アーッ!!」
準備ではなく財務部に居たために比較的体力が余っていたので馬車の御者を引き受けていたユキの悲痛の叫びとは裏腹に、馬車の中では商売人気質故に大量破壊の際に発する金銭的被害を無視できないクラーラの突っ込みが飛びまくる……
メイはいつも通りの調子に戻ったはいいが、その代償として普段は振り回す側であるクラーラが逆に振り回される非常に珍しい一幕となった。
そんなこんなと順調なのかそうでないのかわからない馬車の旅は続くのであった。
「むぐむぐ……そっちは違う。あれは病が完治してからさっぱり見なくなってるし、さっきまで見てたのは別の夢だから……もぐもぐ」
クラーラを始めとするスタッフ達への差し入れとして用意されていた軽食、サンドイッチを食べてる最中、心配そうに問いかけてくるメイ。
彼女は親の代からアムル家に仕えてくれる忠臣だ。その忠誠はアーデルだけでなくクラーラにも向けてくれる。
だからクラーラもいらぬ心配をかけないよう、あえて見せつけるかのように盛んな食欲をみせているのだ。
それに……
(うん、やっぱりお義姉ちゃんの料理はおいしいよね~)
アーデルは自ら不器用と宣言するも、料理だけは例外だった。
彼女は昔から病で食の細いクラーラのために、味やら栄養やら食べやすさを徹底的に追及した病人食を自らの手で調理していたのだ。
その過程で自分や家族の分、さらに使用人やら私兵からもリクエストされたら生来の面倒見の良さもあって断る事なく作ったりするので、いつのまにか料理得意へとなってしまったらしい。
その特技は王太子妃に不必要なので宝の持ち腐れと化してる部分はあれど、サンドイッチの出来具合からして腕は落ちるどころかさらに上げてるようだ。
王太子妃教育と平行してこれだから、もし料理に専念すれば王国を代表する料理人になってたかもしれない。
ただ、アーデルの料理には決して無視できない欠点がある。
(このハンバーグ……隠し味にならないぐらい虫を混ぜ込んでるね。それにこのピクルスも毒あるやつじゃなかったけ?一応漬け込む過程で毒抜きされてるようだけど、後始末はちゃんとやってくれてるのかなぁ……)
アーデルは虫だろうが毒だろうがおいしければ平然と食するという、いわゆる悪食なのだ。そのため、使われる食材や調理法は知ったらちょっと後悔してしまうものが稀によくある。
そんな一般人なら忌避したいアーデルお手製サンドイッチを平然と食べるクラーラに安心したのか、メイは好奇心から一つ質問しようとする。
「ちなみにどんな夢……いえ、忘れてください。悪夢なんてさっさと忘れたいもの……ですものね」
「別にいいよ。悪夢といっても私の命日となりかけたあの日の追体験みたいな……って、これまずいかな?」
「問題ありません。お嬢様が唐突に屋敷を飛び出してそのまま行方不明なんて、いつもの事といえば……」
「やめよう!この話題やめよう!!」
クラーラの命日になりかねたあの日、珍しくクラーラのそばに寄り添わなかったアーデルがどこにいたかというと……
なんでも『お母さんのお母さんのお母さんならクラーラの病気治してもらえるんだよね!!だったら今すぐ連れてくる!!』とかで外に飛び出し、そのまま1週間も行方不明だったのだ。
身内にとってはクラーラだけでなくアーデルすらも……になりかけただけあって、大騒ぎだったらしい。
特にメイはいきなり屋敷を飛び出したアーデルを連れ戻すため、大人に報告する時間も惜しいっとばかりに後を追いかけるも、途中で見失うどころか帰り道すらもわからなくなってアーデル共々1週間行方不明という二重遭難をやらかしたのだ。
最終的には皆助かったとはいえ、大失態を侵したメイにとってこの話題はあまり思い出したくないものといえる。
だからクラーラは慌てて話題を変える。
「夢の事より現実問題。私はこれからお養父さん達にクズ達と害虫貴族の駆除の協力求めるわけだけど……どう言えば穏便に済ませてもらえると思う?」
「穏便に済ませる必要、あります?」
「下手したらクズや害虫ごと王都消し飛ばしかねないからあるって!!」
「いいじゃないですか。あんな穢れた街は徹底的に消毒すべきです」
「やめてー!!王都が壊滅なんてしたら、復興費がとんでもない額に膨れ上がっちゃうからぁぁぁぁ!!!!」
「それが何か問題でも?」
「あぁぁ……だめだ……アムル家の中では比較的常識があるメイさんですらこうなんだから、絶対穏便にならない……どうしよう」
「クラーラ様も諦めて、皆で一緒に燃やしましょう。跡形もなくきれいさっぱりになれば、きっと悩みもきれいさっぱり」
「それが出来ないから悩んでるんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ちょ、馬車の中で暴れるのはやめてって!!馬が興奮して制御ができな……アーッ!!」
準備ではなく財務部に居たために比較的体力が余っていたので馬車の御者を引き受けていたユキの悲痛の叫びとは裏腹に、馬車の中では商売人気質故に大量破壊の際に発する金銭的被害を無視できないクラーラの突っ込みが飛びまくる……
メイはいつも通りの調子に戻ったはいいが、その代償として普段は振り回す側であるクラーラが逆に振り回される非常に珍しい一幕となった。
そんなこんなと順調なのかそうでないのかわからない馬車の旅は続くのであった。
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