119 / 229
第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
118.王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その⑨)
しおりを挟む
トリネーからの進言を受けた王は即座にクラーラを呼びつけた。
周囲はクラーラが来るのに時間がかかるのでは思うというか、例の馬鹿貴族子息達はアーデルがクラーラを誘拐監禁までしたという噂を信じていた事もあって批難した。
懲りずにその件でアーデルを責め立てようと騒ぐも、その最中に当の本人が現れた。
時間にしてわずか10分。最初から王宮内に居なければ無理な早さである。
「トビアス国王陛下。お呼びでしょうか?」
壮大な扉から現れたクラーラは貴族令嬢としてカーテシーを行う。
その仕草は完璧ではなくとも、十分に評価できるもの。
まぁ批難できるような稚拙な仕草であっても、クラーラを溺愛するアーデルが見守ってる中で批難しようものなら今夜あたりに暗殺者……いや、アーデル自身が襲撃して明日の朝日が拝めない身体にされるだろう。
そうした独特な緊張感が流れる中、クラーラは呼びに行かせた衛兵にエスコートされる形で王座の前まで案内される。最初に口を開いたのはアーデルだった。
「クラーラ、忙しい中急遽呼び出してごめんなさい」
「別に構いません。まぁ内心では呼び出されるよね~っと思ってたので、正装姿でスタンバっていましたから」
「そう思ってるなら、最初から謁見の間に待機させてればよかったかしら」
「いえいえ、私は政務に関わる人間ではございませんので最初から居る必要性がありません。何かあればその時のみ現れ、用が済めば立ち去るのが筋というものでしょう」
そう言いながら王へと視線を移すクラーラ。
クラーラも謁見の目的やら筋書を知ってたが、ビィトがトビアス国王という正体までは知らされてない。
だからなぜここにトビアス国王が……実父でありながらも自分を捨てた張本人が居る事に内心驚いた。
だが、隣に立つ義姉であり女王(仮)であるアーデルが何も言わないならばっとあえて触れずに姉妹の挨拶をここで打ち切る。
王をいつまでも無視し続ければ不敬になるからっと、姿勢を正して王へと向きなおす。
ただ、不敬といっても周囲は別にクラーラが思うほど不敬と扱ってない。
アーデルとの会話はフランクなモノで少々眉をひそめるところはあれど、先ほどから不敬しまくりな馬鹿貴族子息に比べれば遥かにマシ。
さらにいえばその馬鹿貴族達も目の前の光景が……
監禁された事実も不仲という事実も偽りであるかのような、仲の良い姉妹な姿に驚愕していた。
中には『見せかけだ!!』っとばかりに声をあげようとするも、その声は即座に封じられた。
アーデルは自身の事だと大抵の事はスルーできるも、クラーラが関わると冷静さを失って暴走する。
対してクラーラもアーデルを侮辱する発言を行う者には少々過激な反応を示す。
そんな二人が揃ってる時にアーデルへの批難の声があがると、連鎖反応でアーデル暴走に行き着いての大惨事が引き起こされる可能性が大。
その連鎖の起点になりかねない連中を自由にさせるわけにはいかないっとばかりに、メイが先手を取って動く。衛兵達と協力して彼等にさるぐつわをかませる事で強制的に声を封じたわけだ。
本来なら貴族子息に行う処置ではないが、散々やらかしてきた実績があるだけに誰も咎めない。
むしろ、アーデルの性癖をよく知る者達からグッジョブとばかりに褒めたたえていた。
トビアス国王はそうした処置が終わったのを見計らい、本題を告げた。
「クラーラ嬢よ。用というのは他でもない……クラーラ嬢は王たる余の実子であるため、望めば王位継承権……第一位であるデルフリは廃嫡の予定なので王位にもっとも近しい者ともいえる。王位に付く気はあるか?」
「いえ、私は王位に全く興味ございません。王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております」
何の躊躇なく……人によっては値千金ともいえるべき王の座を、クラーラはきっぱりはっきり拒否した。
その言葉に唖然とするのは馬鹿貴族子息のみ。
大半は予定調和だと言わんばかりである。
「王様、用とはこれだけでしょうか?他になければもう退出して構いませんでしょうか?」
「その通り……と言いたいとこだが、出来るならレーハム侯爵子息を中心とした若手達と話をしてやってほしい」
「レーハム侯爵令息と……ですか?」
「うむ。レーハム侯爵子息は王位の座をめぐって、まず正当な血筋であるクラーラ嬢がどう思うか意見を聞くべきだと進言したのだ。他の若手達もクラーラ嬢が王座に就いてほしいそうなので、当人で説得するのが筋であろう」
「ふ~ん。説得……ですか……」
トビアス国王からの言葉と目線につられて振り向けば、丁度トリネーと目が合う。
その予想外な展開にトリネーが戸惑い、クラーラは少し考えた後……
「わかりました。私も彼等と少なからず交流があります。ですが……説得方法はお任せでいいのでしょうか?」
「問題ない。好きにすればよい。アーデル嬢もそれでよいな」
「もちろんでございます。私には彼等ともう言葉を交わす必要ありません。後の事はクラーラにお任せしましょう」
「承りました。それでは今から早速OHANASHIしてきましょう」
OHANASHI……
その言葉を発した一瞬、クラーラから恐ろしいほどの殺気が籠ったせいで一部は思わず戦慄する……も
(よし、これでクラーラを説得すれば……王の座に就くよう促せばアーデルを蹴落とせる!!奴もついに終わりだ!!!)
馬鹿達は懲りずに都合のよい未来を描くのであった。
周囲はクラーラが来るのに時間がかかるのでは思うというか、例の馬鹿貴族子息達はアーデルがクラーラを誘拐監禁までしたという噂を信じていた事もあって批難した。
懲りずにその件でアーデルを責め立てようと騒ぐも、その最中に当の本人が現れた。
時間にしてわずか10分。最初から王宮内に居なければ無理な早さである。
「トビアス国王陛下。お呼びでしょうか?」
壮大な扉から現れたクラーラは貴族令嬢としてカーテシーを行う。
その仕草は完璧ではなくとも、十分に評価できるもの。
まぁ批難できるような稚拙な仕草であっても、クラーラを溺愛するアーデルが見守ってる中で批難しようものなら今夜あたりに暗殺者……いや、アーデル自身が襲撃して明日の朝日が拝めない身体にされるだろう。
そうした独特な緊張感が流れる中、クラーラは呼びに行かせた衛兵にエスコートされる形で王座の前まで案内される。最初に口を開いたのはアーデルだった。
「クラーラ、忙しい中急遽呼び出してごめんなさい」
「別に構いません。まぁ内心では呼び出されるよね~っと思ってたので、正装姿でスタンバっていましたから」
「そう思ってるなら、最初から謁見の間に待機させてればよかったかしら」
「いえいえ、私は政務に関わる人間ではございませんので最初から居る必要性がありません。何かあればその時のみ現れ、用が済めば立ち去るのが筋というものでしょう」
そう言いながら王へと視線を移すクラーラ。
クラーラも謁見の目的やら筋書を知ってたが、ビィトがトビアス国王という正体までは知らされてない。
だからなぜここにトビアス国王が……実父でありながらも自分を捨てた張本人が居る事に内心驚いた。
だが、隣に立つ義姉であり女王(仮)であるアーデルが何も言わないならばっとあえて触れずに姉妹の挨拶をここで打ち切る。
王をいつまでも無視し続ければ不敬になるからっと、姿勢を正して王へと向きなおす。
ただ、不敬といっても周囲は別にクラーラが思うほど不敬と扱ってない。
アーデルとの会話はフランクなモノで少々眉をひそめるところはあれど、先ほどから不敬しまくりな馬鹿貴族子息に比べれば遥かにマシ。
さらにいえばその馬鹿貴族達も目の前の光景が……
監禁された事実も不仲という事実も偽りであるかのような、仲の良い姉妹な姿に驚愕していた。
中には『見せかけだ!!』っとばかりに声をあげようとするも、その声は即座に封じられた。
アーデルは自身の事だと大抵の事はスルーできるも、クラーラが関わると冷静さを失って暴走する。
対してクラーラもアーデルを侮辱する発言を行う者には少々過激な反応を示す。
そんな二人が揃ってる時にアーデルへの批難の声があがると、連鎖反応でアーデル暴走に行き着いての大惨事が引き起こされる可能性が大。
その連鎖の起点になりかねない連中を自由にさせるわけにはいかないっとばかりに、メイが先手を取って動く。衛兵達と協力して彼等にさるぐつわをかませる事で強制的に声を封じたわけだ。
本来なら貴族子息に行う処置ではないが、散々やらかしてきた実績があるだけに誰も咎めない。
むしろ、アーデルの性癖をよく知る者達からグッジョブとばかりに褒めたたえていた。
トビアス国王はそうした処置が終わったのを見計らい、本題を告げた。
「クラーラ嬢よ。用というのは他でもない……クラーラ嬢は王たる余の実子であるため、望めば王位継承権……第一位であるデルフリは廃嫡の予定なので王位にもっとも近しい者ともいえる。王位に付く気はあるか?」
「いえ、私は王位に全く興味ございません。王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております」
何の躊躇なく……人によっては値千金ともいえるべき王の座を、クラーラはきっぱりはっきり拒否した。
その言葉に唖然とするのは馬鹿貴族子息のみ。
大半は予定調和だと言わんばかりである。
「王様、用とはこれだけでしょうか?他になければもう退出して構いませんでしょうか?」
「その通り……と言いたいとこだが、出来るならレーハム侯爵子息を中心とした若手達と話をしてやってほしい」
「レーハム侯爵令息と……ですか?」
「うむ。レーハム侯爵子息は王位の座をめぐって、まず正当な血筋であるクラーラ嬢がどう思うか意見を聞くべきだと進言したのだ。他の若手達もクラーラ嬢が王座に就いてほしいそうなので、当人で説得するのが筋であろう」
「ふ~ん。説得……ですか……」
トビアス国王からの言葉と目線につられて振り向けば、丁度トリネーと目が合う。
その予想外な展開にトリネーが戸惑い、クラーラは少し考えた後……
「わかりました。私も彼等と少なからず交流があります。ですが……説得方法はお任せでいいのでしょうか?」
「問題ない。好きにすればよい。アーデル嬢もそれでよいな」
「もちろんでございます。私には彼等ともう言葉を交わす必要ありません。後の事はクラーラにお任せしましょう」
「承りました。それでは今から早速OHANASHIしてきましょう」
OHANASHI……
その言葉を発した一瞬、クラーラから恐ろしいほどの殺気が籠ったせいで一部は思わず戦慄する……も
(よし、これでクラーラを説得すれば……王の座に就くよう促せばアーデルを蹴落とせる!!奴もついに終わりだ!!!)
馬鹿達は懲りずに都合のよい未来を描くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる