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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
120.さっきは選択肢を間違えたから駄目だったんだ。次こそは間違えない!(SIDE:トリネー) ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その11)
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「も、もちろん……だ」
トリネーは諦めなかった。
というか、今まで散々辛酸を嘗めてきた人生を思えば諦めるという選択肢が取れなかった。
トリネーも自分の命が風前の灯だという事ぐらいはわかっている。
だが、ここでクラーラに王位を就かせるよう説得し、さらに伴侶となれば……
まさしく、ピンチはチャンスであった。
(さっきは選択肢を間違えたから駄目だったんだ。次こそは間違えない!間違えなければ糞みたいな人生のすべてを覆せるような栄光が手に入る。だから……最初に言う言葉は………これだ!!)
呼吸を整えたトリネーは立ち上がる。
これから真摯に向かう相手にうずくまった状態では失礼にあたる。
(大丈夫だ。クラーラは王族なのだから、王族としての責務を理解してるはず!!
それに、クラーラはやさしいんだ!俺のような不遇な立場にある者の気持ちをわかってくれるのだから、きっと俺の手を取ってくれるはずなんだ!!!)
そう思い、告白の言葉をつむごうとするも……
ガシッ!!
その言葉は発せられなかった。
「あ……が……」
先ほどの焼き直しかのごとく、再度右手で首を締められながら持ち上げられるトリネー。
一体なぜっと思うも、クラーラからはもうそんな疑問を解決させてくれるような余暇を与えてくれなかった。
余暇の代わりに与えてくれたのは、ただ一言。たった一言の……
「 死 ぬ が よ い 」
死の宣告であった。
ごきゃぁ!!
首から何かが砕けるような音が響く。
何が砕けたのか、わからない。
いや、本当はわかってるが、認めればその瞬間全てが終わると思い込んでいた。
だが、トリネーは勘違いしていた。クラーラの粛清はまだ全て終わってなかったのだ。
ぼやける視線がいきなり回転したと思うと
どごぉ!!!
「ガフッ!?」
全身に凄まじい衝撃が走った。
一体何が起きたかわからないまま、大理石と共に全身の骨が砕かれる音が響く。
口から大量の血が吐き出されたというのに、ほとんど痛みを感じない身体に自分の運命を悟らされてしまった。
“……そ……そんな……おれは………おれ……は”
死を覚悟していたはずなのに、いざその時が来ればつい怖気づく。
意識が死の淵へと沈んで行く中、辛うじて動く右手を必死に伸ばす。
何かを求めるかのように伸ばした手。
最期につかみ取ったもの、それは……
“あぁ……そうか……俺はまた選択肢を………道を……間違えたんだ”
トリネーは伸ばした手を掴んでくれた者……
自身に引導を渡した、王族としての決意を固めた王女としてのクラーラではなく……
自身の境遇に同情し、共に憤慨しつつも決して道を間違えないよう助言を与えてくれていた辺境伯令嬢としてのクラーラに看取られながら……
「クラーラ……すまない……許されるなら……アーデル様の治世に……俺のような者を生まないよう……進言を……」
後悔こそあれど、恨み辛みを抱くことなくその生涯を終えた。
……………………
トリネーは死んだ。
クラーラに首をへし折られ、大理石で出来た床に叩きつけられて死んだ。
虫を殺さないような、常に微笑んでいる癒しの女神とも称されるクラーラが人を殺した。
そんな事実を馬鹿達は信じられなかった。
これが悪い夢だと思い込もうとするも、そうは問屋が降ろさないっとばかりにクラーラの口が開く。
「私が人を殺す事がそんなに意外でしたか?」
死の直前に伸ばしたトリネーの手を両手で優しく握り返しながら、その最期を見届けたクラーラはくすっと笑う。
その際の笑顔は彼等の記憶にあるクラーラの笑顔。
皆の心を癒してくれる女神のごとき笑顔のはずだが、トリネーが死に際に吐き出した血反吐が顔や服にべったりと降りかかったせいで死神の笑顔にみえてしまった。
目に見えておびえだすも、クラーラは顔についてる血をぬぐい取りながら淡々と話しはじめる。
「王位をめぐっての争いで殺人沙汰がないなんて、ありえないでしょう。今までの王国の歴史からみて、一切の血が流れず王に就けた者はほんの一握り。
表向き平和でも裏では王位継承者とその派閥間での凄惨な殺し合いなんて日常茶飯事。無数の屍の上で築かれた血まみれの王座に座る事だってある。
30年前の大粛清によって血塗られた事実上の王座に就いたブリギッテ王妃様がまさにそれ。その王妃様から私の出自を明かされると同時に決断を迫られ、悩んだ末に私はアーデルお義姉様と共に誓いを立てました。
お義姉様が国の実権を握る覚悟を決めたのであれば、私はお義姉様が絶対の権力を手に入れられるように、お義姉様の治世を万全とするために、不安要素を……
私の王家の血筋を利用して権力を握ろうとする不埒者を………この手で潰す覚悟を」
クラーラは血をぬぐった事で赤く染まった右手を……つい先ほど、トリネーの命を奪い去った右手の指をごきごきと鳴らしながら馬鹿達に問いかけた。
「では、貴方達にも問いましょうか。これでもなお、私が王位に就くべきと進言する人はいますか?」
トリネーは諦めなかった。
というか、今まで散々辛酸を嘗めてきた人生を思えば諦めるという選択肢が取れなかった。
トリネーも自分の命が風前の灯だという事ぐらいはわかっている。
だが、ここでクラーラに王位を就かせるよう説得し、さらに伴侶となれば……
まさしく、ピンチはチャンスであった。
(さっきは選択肢を間違えたから駄目だったんだ。次こそは間違えない!間違えなければ糞みたいな人生のすべてを覆せるような栄光が手に入る。だから……最初に言う言葉は………これだ!!)
呼吸を整えたトリネーは立ち上がる。
これから真摯に向かう相手にうずくまった状態では失礼にあたる。
(大丈夫だ。クラーラは王族なのだから、王族としての責務を理解してるはず!!
それに、クラーラはやさしいんだ!俺のような不遇な立場にある者の気持ちをわかってくれるのだから、きっと俺の手を取ってくれるはずなんだ!!!)
そう思い、告白の言葉をつむごうとするも……
ガシッ!!
その言葉は発せられなかった。
「あ……が……」
先ほどの焼き直しかのごとく、再度右手で首を締められながら持ち上げられるトリネー。
一体なぜっと思うも、クラーラからはもうそんな疑問を解決させてくれるような余暇を与えてくれなかった。
余暇の代わりに与えてくれたのは、ただ一言。たった一言の……
「 死 ぬ が よ い 」
死の宣告であった。
ごきゃぁ!!
首から何かが砕けるような音が響く。
何が砕けたのか、わからない。
いや、本当はわかってるが、認めればその瞬間全てが終わると思い込んでいた。
だが、トリネーは勘違いしていた。クラーラの粛清はまだ全て終わってなかったのだ。
ぼやける視線がいきなり回転したと思うと
どごぉ!!!
「ガフッ!?」
全身に凄まじい衝撃が走った。
一体何が起きたかわからないまま、大理石と共に全身の骨が砕かれる音が響く。
口から大量の血が吐き出されたというのに、ほとんど痛みを感じない身体に自分の運命を悟らされてしまった。
“……そ……そんな……おれは………おれ……は”
死を覚悟していたはずなのに、いざその時が来ればつい怖気づく。
意識が死の淵へと沈んで行く中、辛うじて動く右手を必死に伸ばす。
何かを求めるかのように伸ばした手。
最期につかみ取ったもの、それは……
“あぁ……そうか……俺はまた選択肢を………道を……間違えたんだ”
トリネーは伸ばした手を掴んでくれた者……
自身に引導を渡した、王族としての決意を固めた王女としてのクラーラではなく……
自身の境遇に同情し、共に憤慨しつつも決して道を間違えないよう助言を与えてくれていた辺境伯令嬢としてのクラーラに看取られながら……
「クラーラ……すまない……許されるなら……アーデル様の治世に……俺のような者を生まないよう……進言を……」
後悔こそあれど、恨み辛みを抱くことなくその生涯を終えた。
……………………
トリネーは死んだ。
クラーラに首をへし折られ、大理石で出来た床に叩きつけられて死んだ。
虫を殺さないような、常に微笑んでいる癒しの女神とも称されるクラーラが人を殺した。
そんな事実を馬鹿達は信じられなかった。
これが悪い夢だと思い込もうとするも、そうは問屋が降ろさないっとばかりにクラーラの口が開く。
「私が人を殺す事がそんなに意外でしたか?」
死の直前に伸ばしたトリネーの手を両手で優しく握り返しながら、その最期を見届けたクラーラはくすっと笑う。
その際の笑顔は彼等の記憶にあるクラーラの笑顔。
皆の心を癒してくれる女神のごとき笑顔のはずだが、トリネーが死に際に吐き出した血反吐が顔や服にべったりと降りかかったせいで死神の笑顔にみえてしまった。
目に見えておびえだすも、クラーラは顔についてる血をぬぐい取りながら淡々と話しはじめる。
「王位をめぐっての争いで殺人沙汰がないなんて、ありえないでしょう。今までの王国の歴史からみて、一切の血が流れず王に就けた者はほんの一握り。
表向き平和でも裏では王位継承者とその派閥間での凄惨な殺し合いなんて日常茶飯事。無数の屍の上で築かれた血まみれの王座に座る事だってある。
30年前の大粛清によって血塗られた事実上の王座に就いたブリギッテ王妃様がまさにそれ。その王妃様から私の出自を明かされると同時に決断を迫られ、悩んだ末に私はアーデルお義姉様と共に誓いを立てました。
お義姉様が国の実権を握る覚悟を決めたのであれば、私はお義姉様が絶対の権力を手に入れられるように、お義姉様の治世を万全とするために、不安要素を……
私の王家の血筋を利用して権力を握ろうとする不埒者を………この手で潰す覚悟を」
クラーラは血をぬぐった事で赤く染まった右手を……つい先ほど、トリネーの命を奪い去った右手の指をごきごきと鳴らしながら馬鹿達に問いかけた。
「では、貴方達にも問いましょうか。これでもなお、私が王位に就くべきと進言する人はいますか?」
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