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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
158.お願い……目覚めて……欠片でもいい……私に魔法の才覚を……聖女の力を引き出す才覚を!!!(SIDE:アーデル)
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『魔王』は『勇者』か『聖女の“祝福”を受けた者』でしか倒せない。
それは、30年前からクールーラオロウ帝国領土に不定期で現れる『魔王』との討伐記録で証明されていた。
実際、ペーターとユキとマイが放った殺人技は打倒魔王のために異世界から召喚された勇者すら蹴散らしたアーデルの殺人技『竜巻攪拌器』と同等の威力がある。
あくまで当たればの話であるも、当たりさえすれば一撃必殺になるだけの威力はでる。
その3人の攻撃を鎧袖一触とばかりに振り払われ、威力だけなら確実に『竜巻攪拌器』を超えるアムル辺境伯長兄オウラの『マオウケン』の直撃を受けて頭が吹っ飛んだにも関わらずピンピンとしていた。
極めつけはヨハン大司教補佐が呼び起こした審判の神による裁きの雷が全く効かなかった。
それらの事実は全て討伐記録の真実を証明していた。
どれだけ強大な力をぶつけようとも、『魔王』を倒せるのは『勇者』本人か『聖女の“祝福”を受けた者』だけなのだと……
そうした情報はアムル家の祖先がかつての魔王との戦いで勇者のお供として同行していた戦士の子孫であり、当時の戦いの記録を代々受け継がせていた事もあってアムル家の者はある程度把握していた。
しかし、情報こそあってもフランクフルト王国には打倒魔王の鍵となる『勇者』も『聖女』も存在しない。
通常ならここで万事休すだろう。
だが、アーデルが纏っているウェディングドレスは聖女が作り出した『神器』とされている。
すなわち、打倒魔王の鍵となる聖女の“祝福”の力が込められてる可能性が高かった。
そんな聖女の力を秘めた『神器』が、今このタイミングでアーデルを主人と認めた。
おそらく、ウエディングドレスは予見していたのだろう。
フランクフルト王国に『魔王』が現れる事を……
そのためにアーデルは選ばれた。
『魔王』を倒す『勇者』として……
アーデルはその事実を理解していた。
自分がこの状況を打破する鍵である事を理解できていたが、その鍵を差し込むための鍵穴を見つける事が出来なかった。
(駄目……私にはウェディングドレスの……聖女の力を引き出せない!!)
アーデルは俗にいう脳筋だ。
頭の中まで筋肉が詰まってるというわけでなく、しっかりとした教養や知識はあっても魔法の才覚に関しては絶望的としか言わざるを得ない意味での脳筋だ。
これは別にアーデルだけでない。
アムル家は元から脳筋の者が生まれやすく、現当主であるアムル辺境伯ロンケンは魔法抜きで世界最強という脳筋の極地にまで至ってしまうほどの身体能力を持ってるのだ。
そんな辺境伯家に嫁いだ母ユリアも分類としては脳筋。
教養はあっても魔法の才覚は皆無。さらにいえば『M・B・S・B』すらも極める事が出来なかった。ただ、母はそんなハンデを技量と知識で補った。
医療のために人体構造の理解を深める中で派生した、もっとも効率のよい人体の動かし方や壊し方を実戦レベルで活用できるまで高めたのだ。
それゆえに、平時だと世界最強とされるアムル辺境伯すら勝ててしまうわけだが……
逆に言えば、辺境伯ロンケンが『M・B・S・B』を使用したらもう家族総出でなければ到底かなわないほどの化け物。具体的にいうと10メートルを超える大猿と化してしまう。
ぶっちゃけた話、そんな辺境伯であればあの魔王と化したクズを倒すまでは出来ずとも無力化は出来るかもしれない。
その変わり、王都が瓦礫の山になってしまう可能性が極大。よって、今回の騒動は強制的に留守番させられた。
その判断は間違ってたのかどうかは…………わからない。
辺境伯が出てくればクズ諸共王都を吹っ飛ばしかねないだけに、被害がより拡大する可能性あるだけに正解かどうかは判別できない。
とまぁそんな話はとにかく、現在のアムル辺境家の子ども達は両親のせいで皆魔法の才覚が皆無という遺伝を例外なく引き継いでいた。
だから魔法の力を……『神器』ともされるウェディングドレスが備えてるであろう聖女由来の力を引き出す事が出来ないのは別にアーデルの責任というわけでない。
この世界の魔法は生まれながらの才覚に左右されやすい、努力では覆せない分野なのだから仕方ないのだ。
まぁそれで『はいそうですか』なんて諦められるかは別。
ここでアーデルが諦めたら全滅を意味する。
アーデルが『絶望』すればその時点で全てが終わってしまう。
(お願い……目覚めて……欠片でもいい……私に魔法の才覚を……聖女の力を引き出す才覚を!!!)
『M・B・S・B』
「えっ?」
「お義姉ちゃん……『M・B・S・B』……使って……」
「わ、わかった……わ」
いつの間にか目覚めていたクラーラから促されるように、アーデルは気合を入れる。
『M・B・S・B』は身体強化の一種であり、その起源は100年前に大暴れしていた魔王の対抗手段として編み出された、魔力とはまた別の力を使う体系の技とされていた。
一体どんな力が働いてるのか、そのメカニズムは謎が多かった。
仮説として魔王が配下の魔物や魔獣を強化させる秘術、それを人間が甘受できるように改良したものとされるいわば“闇”に属する邪道の技。
“光”とは対極に位置する可能性がある技なだけにアーデルは使用を躊躇してたが……
この段階まで来たのだ。
試すしかない。
例えウェディングドレスに宿ってる“光”の力と反発してしまおうとも……
両親や兄達から歴代屈指の才覚だとべた褒めされた『M・B・S・B』にかけるしかない。
覚悟を決めたアーデルは……
「ふんぬぅぅぅぽんぷあっぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
『M・B・S・B』を発動させた。
それは、30年前からクールーラオロウ帝国領土に不定期で現れる『魔王』との討伐記録で証明されていた。
実際、ペーターとユキとマイが放った殺人技は打倒魔王のために異世界から召喚された勇者すら蹴散らしたアーデルの殺人技『竜巻攪拌器』と同等の威力がある。
あくまで当たればの話であるも、当たりさえすれば一撃必殺になるだけの威力はでる。
その3人の攻撃を鎧袖一触とばかりに振り払われ、威力だけなら確実に『竜巻攪拌器』を超えるアムル辺境伯長兄オウラの『マオウケン』の直撃を受けて頭が吹っ飛んだにも関わらずピンピンとしていた。
極めつけはヨハン大司教補佐が呼び起こした審判の神による裁きの雷が全く効かなかった。
それらの事実は全て討伐記録の真実を証明していた。
どれだけ強大な力をぶつけようとも、『魔王』を倒せるのは『勇者』本人か『聖女の“祝福”を受けた者』だけなのだと……
そうした情報はアムル家の祖先がかつての魔王との戦いで勇者のお供として同行していた戦士の子孫であり、当時の戦いの記録を代々受け継がせていた事もあってアムル家の者はある程度把握していた。
しかし、情報こそあってもフランクフルト王国には打倒魔王の鍵となる『勇者』も『聖女』も存在しない。
通常ならここで万事休すだろう。
だが、アーデルが纏っているウェディングドレスは聖女が作り出した『神器』とされている。
すなわち、打倒魔王の鍵となる聖女の“祝福”の力が込められてる可能性が高かった。
そんな聖女の力を秘めた『神器』が、今このタイミングでアーデルを主人と認めた。
おそらく、ウエディングドレスは予見していたのだろう。
フランクフルト王国に『魔王』が現れる事を……
そのためにアーデルは選ばれた。
『魔王』を倒す『勇者』として……
アーデルはその事実を理解していた。
自分がこの状況を打破する鍵である事を理解できていたが、その鍵を差し込むための鍵穴を見つける事が出来なかった。
(駄目……私にはウェディングドレスの……聖女の力を引き出せない!!)
アーデルは俗にいう脳筋だ。
頭の中まで筋肉が詰まってるというわけでなく、しっかりとした教養や知識はあっても魔法の才覚に関しては絶望的としか言わざるを得ない意味での脳筋だ。
これは別にアーデルだけでない。
アムル家は元から脳筋の者が生まれやすく、現当主であるアムル辺境伯ロンケンは魔法抜きで世界最強という脳筋の極地にまで至ってしまうほどの身体能力を持ってるのだ。
そんな辺境伯家に嫁いだ母ユリアも分類としては脳筋。
教養はあっても魔法の才覚は皆無。さらにいえば『M・B・S・B』すらも極める事が出来なかった。ただ、母はそんなハンデを技量と知識で補った。
医療のために人体構造の理解を深める中で派生した、もっとも効率のよい人体の動かし方や壊し方を実戦レベルで活用できるまで高めたのだ。
それゆえに、平時だと世界最強とされるアムル辺境伯すら勝ててしまうわけだが……
逆に言えば、辺境伯ロンケンが『M・B・S・B』を使用したらもう家族総出でなければ到底かなわないほどの化け物。具体的にいうと10メートルを超える大猿と化してしまう。
ぶっちゃけた話、そんな辺境伯であればあの魔王と化したクズを倒すまでは出来ずとも無力化は出来るかもしれない。
その変わり、王都が瓦礫の山になってしまう可能性が極大。よって、今回の騒動は強制的に留守番させられた。
その判断は間違ってたのかどうかは…………わからない。
辺境伯が出てくればクズ諸共王都を吹っ飛ばしかねないだけに、被害がより拡大する可能性あるだけに正解かどうかは判別できない。
とまぁそんな話はとにかく、現在のアムル辺境家の子ども達は両親のせいで皆魔法の才覚が皆無という遺伝を例外なく引き継いでいた。
だから魔法の力を……『神器』ともされるウェディングドレスが備えてるであろう聖女由来の力を引き出す事が出来ないのは別にアーデルの責任というわけでない。
この世界の魔法は生まれながらの才覚に左右されやすい、努力では覆せない分野なのだから仕方ないのだ。
まぁそれで『はいそうですか』なんて諦められるかは別。
ここでアーデルが諦めたら全滅を意味する。
アーデルが『絶望』すればその時点で全てが終わってしまう。
(お願い……目覚めて……欠片でもいい……私に魔法の才覚を……聖女の力を引き出す才覚を!!!)
『M・B・S・B』
「えっ?」
「お義姉ちゃん……『M・B・S・B』……使って……」
「わ、わかった……わ」
いつの間にか目覚めていたクラーラから促されるように、アーデルは気合を入れる。
『M・B・S・B』は身体強化の一種であり、その起源は100年前に大暴れしていた魔王の対抗手段として編み出された、魔力とはまた別の力を使う体系の技とされていた。
一体どんな力が働いてるのか、そのメカニズムは謎が多かった。
仮説として魔王が配下の魔物や魔獣を強化させる秘術、それを人間が甘受できるように改良したものとされるいわば“闇”に属する邪道の技。
“光”とは対極に位置する可能性がある技なだけにアーデルは使用を躊躇してたが……
この段階まで来たのだ。
試すしかない。
例えウェディングドレスに宿ってる“光”の力と反発してしまおうとも……
両親や兄達から歴代屈指の才覚だとべた褒めされた『M・B・S・B』にかけるしかない。
覚悟を決めたアーデルは……
「ふんぬぅぅぅぽんぷあっぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
『M・B・S・B』を発動させた。
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