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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
15⑨.何なの?これ何なの??何が起こってるの???(SIDE:アーデル)
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『M・B・S・B』は一度発動させたら、体内にはちきれんばかりの力があふれ、その力を受け止めるために自身の身体を一時的に全く別の物へと作り変えられる。
その作り変えられる身体だが、人によっては脂肪が膨れたり、全身に毛が生えたり、額に謎の紋様が現れたり、実に様々。
アーデルの場合は一部の髪が硬質化する以外は上手く筋肉を膨張させるだけにとどまってくれた。
その膨張した筋肉は常人を遥かに超えた力を十全に発揮できる器として機能してくれる。
力の増幅と受け止める器の生成。
その二つが合わさる事でアーデルは『勇者』すら超える力を手にする。
はずであったが……
「あれ?」
身体が……筋肉が全く膨張せず、その代わり黄金に輝くオーラに包まれた。
普段なら内部から力があふれんばかりに湧き上がるというのに、しっかり意識を保たなければ肉体を壊しかねないほどの暴力的な力にさらされるというのに、今回は暴力的な力を全く感じない。
感じるのは……嵐の前の静けさともいうべき、強大な不動の力だった。
「お義姉ちゃん……成功したようだね」
クラーラはアーデルの変化に……膨れ上がった筋肉の変わりとして現れた黄金に輝くオーラをみて満足げに笑う。
「クラーラ。何なの?これ何なの??何が起こってるの???」
「あーお義姉ちゃん聞こえないんだ……まぁ仕方ないね。お義姉ちゃん達は魔法全く使えない脳筋だし」
「うぐぅ……事実だけに言い返せないわ」
「いいよ。私が代わって届ける……ウェディングドレスに宿ってる意志の声……私が作った人形、デール……いや、デールマンちゃんの声を……だから私の言う通りにして」
「……いいわ。詳しい説明は後にしてもらうから、私はこれから何をすればいいの」
「んっと……『ファルコンパンチ』……アムル家に伝わる48の殺人技の一つ……『ファルコンパンチ』を全力で……」
「………わかったわ」
なぜここでそれをチョイスされたのかわからない。
だが、クラーラの声はウエディングドレスの……腰にぶら下がってる人形デールの代弁。
アーデルはウェディングドレスの力を引き出すどころか声すら聞けないのだ。
ならば言葉通りに動くしかない。
アーデルは抱え込んでいたクラーラを横たえさせてから、立ち上がって『ファルコンパンチ』の構えを取る。
『ファルコンパンチ』
それは48の殺人技の一つでもあり、その実態はただの『正拳突き』
クラーラが先ほどクズにトドメを刺した拳も分類とすれば『正拳突き』だ。
腰を落とし、まっすぐに右拳を突き出すだけの……ただそれだけの技。
だが、極めた者が放てば『どんな装甲でも打ち貫く』無敵の矛と成す。
この一撃で大岩どころか、あらゆる攻撃をはじき返す無敵の鱗を持つドラゴンに大穴を穿ったとも言われてる一撃必殺技。
アーデルはそこまでの極地までは至れなかったが、自らを『拳王』と名乗る程に拳を極めた長兄オウラがもっとも得意とする殺人技だった事もあって型そのものは何度も見てきた。
子供の頃は面白がって、何度か見様見真似で放った事もある。
打ち貫くというより全てを吹き飛ばす一撃にあこがれて何度も真似て放った拳。
だから、今回も長兄オウラを真似るようにして……先ほど無数の闇の炎の槍を拳圧で吹っ飛ばしつつクズの頭をえぐり取った、あの拳をイメージする。
腰を深く落とし、精神を集中。
静の心でもって拳に全ての力を集結させるかのように……
アーデルはこの静の心が性に合わなかった。
直情的な性格ゆえに『正拳突き』の真価を発揮させる事ができなかったのだが、今は違った。
ウェディングドレスがアムル家での修行時代に着ていた道着へと変化し、それに伴って心身にも変化が出た。
普段の落ち着かない心が不思議なほどに落ち着く、静の心を極めた者がたどり着く『明鏡止水』の精神へと至れたのだ。
これによって今まで制御が出来なかった力の流れを……アーデルが得意とする『竜巻攪拌器』は力を暴れさせれば暴れさせるほどに威力が増す事もあって好き放題に暴れさせていた力が淀みなく右拳へと萃まっていくのがわかる。
その過程で金色に覆われていたオーラは髪にまで移り、不吉な漆黒だった髪が淡い金色へと変わっていく。
遥か昔に王国含むフーズ大陸中を恐怖に陥れた魔王を倒すべく、異世界から召喚された初代勇者と共にした初代聖女の髪、金色へと………
その様は静かでありながらも圧倒的な力を秘めており、民衆達と化け物達は思わず戦闘を中断して見入ってしまうほどだった。
“『勇者』……いや違う、『聖女』だ……”
誰かが呟いた。
その声は誰のものかわからない……も、今までずっと成り行きを見守ってきた民衆達はアーデルの変化をみて、ついに目覚めてくれたのだと察した。
アーデルが真に『聖女』として目覚めたのだと……
その作り変えられる身体だが、人によっては脂肪が膨れたり、全身に毛が生えたり、額に謎の紋様が現れたり、実に様々。
アーデルの場合は一部の髪が硬質化する以外は上手く筋肉を膨張させるだけにとどまってくれた。
その膨張した筋肉は常人を遥かに超えた力を十全に発揮できる器として機能してくれる。
力の増幅と受け止める器の生成。
その二つが合わさる事でアーデルは『勇者』すら超える力を手にする。
はずであったが……
「あれ?」
身体が……筋肉が全く膨張せず、その代わり黄金に輝くオーラに包まれた。
普段なら内部から力があふれんばかりに湧き上がるというのに、しっかり意識を保たなければ肉体を壊しかねないほどの暴力的な力にさらされるというのに、今回は暴力的な力を全く感じない。
感じるのは……嵐の前の静けさともいうべき、強大な不動の力だった。
「お義姉ちゃん……成功したようだね」
クラーラはアーデルの変化に……膨れ上がった筋肉の変わりとして現れた黄金に輝くオーラをみて満足げに笑う。
「クラーラ。何なの?これ何なの??何が起こってるの???」
「あーお義姉ちゃん聞こえないんだ……まぁ仕方ないね。お義姉ちゃん達は魔法全く使えない脳筋だし」
「うぐぅ……事実だけに言い返せないわ」
「いいよ。私が代わって届ける……ウェディングドレスに宿ってる意志の声……私が作った人形、デール……いや、デールマンちゃんの声を……だから私の言う通りにして」
「……いいわ。詳しい説明は後にしてもらうから、私はこれから何をすればいいの」
「んっと……『ファルコンパンチ』……アムル家に伝わる48の殺人技の一つ……『ファルコンパンチ』を全力で……」
「………わかったわ」
なぜここでそれをチョイスされたのかわからない。
だが、クラーラの声はウエディングドレスの……腰にぶら下がってる人形デールの代弁。
アーデルはウェディングドレスの力を引き出すどころか声すら聞けないのだ。
ならば言葉通りに動くしかない。
アーデルは抱え込んでいたクラーラを横たえさせてから、立ち上がって『ファルコンパンチ』の構えを取る。
『ファルコンパンチ』
それは48の殺人技の一つでもあり、その実態はただの『正拳突き』
クラーラが先ほどクズにトドメを刺した拳も分類とすれば『正拳突き』だ。
腰を落とし、まっすぐに右拳を突き出すだけの……ただそれだけの技。
だが、極めた者が放てば『どんな装甲でも打ち貫く』無敵の矛と成す。
この一撃で大岩どころか、あらゆる攻撃をはじき返す無敵の鱗を持つドラゴンに大穴を穿ったとも言われてる一撃必殺技。
アーデルはそこまでの極地までは至れなかったが、自らを『拳王』と名乗る程に拳を極めた長兄オウラがもっとも得意とする殺人技だった事もあって型そのものは何度も見てきた。
子供の頃は面白がって、何度か見様見真似で放った事もある。
打ち貫くというより全てを吹き飛ばす一撃にあこがれて何度も真似て放った拳。
だから、今回も長兄オウラを真似るようにして……先ほど無数の闇の炎の槍を拳圧で吹っ飛ばしつつクズの頭をえぐり取った、あの拳をイメージする。
腰を深く落とし、精神を集中。
静の心でもって拳に全ての力を集結させるかのように……
アーデルはこの静の心が性に合わなかった。
直情的な性格ゆえに『正拳突き』の真価を発揮させる事ができなかったのだが、今は違った。
ウェディングドレスがアムル家での修行時代に着ていた道着へと変化し、それに伴って心身にも変化が出た。
普段の落ち着かない心が不思議なほどに落ち着く、静の心を極めた者がたどり着く『明鏡止水』の精神へと至れたのだ。
これによって今まで制御が出来なかった力の流れを……アーデルが得意とする『竜巻攪拌器』は力を暴れさせれば暴れさせるほどに威力が増す事もあって好き放題に暴れさせていた力が淀みなく右拳へと萃まっていくのがわかる。
その過程で金色に覆われていたオーラは髪にまで移り、不吉な漆黒だった髪が淡い金色へと変わっていく。
遥か昔に王国含むフーズ大陸中を恐怖に陥れた魔王を倒すべく、異世界から召喚された初代勇者と共にした初代聖女の髪、金色へと………
その様は静かでありながらも圧倒的な力を秘めており、民衆達と化け物達は思わず戦闘を中断して見入ってしまうほどだった。
“『勇者』……いや違う、『聖女』だ……”
誰かが呟いた。
その声は誰のものかわからない……も、今までずっと成り行きを見守ってきた民衆達はアーデルの変化をみて、ついに目覚めてくれたのだと察した。
アーデルが真に『聖女』として目覚めたのだと……
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