義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

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第三章 義姉妹拉致からの帰還、そしてクズインガオホーからの超ざまぁ編

174.クズを魔王に変えてしまうような薬まで作れてしまうのだから、世間から隠れるようにして暮らすのも当然よね(SIDE:アーデル)

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「あらあら。顔に出ちゃうなんて私もまだまだかしら」

 クラーラからの指摘で鋭い目を解除し、笑顔になる魔女のお姉さん改め魔女クレア。
 だが、その笑顔は貴族によくある上辺の笑み。本心はまた別だろう事が透けて見えていた。

 その事実はクラーラも見抜いてるらしく、ならばっとクラーラはあえて本心からの笑み※ んなわけねぇだろを浮かべはじめた。

「そんなことありませんよ。それに、本気で隠したいならタルトなんて出したりしないでしょう。なにせこのタルト、サクラ商会に『クレア』名義で卸してるものじゃないですか」

「意外とバレないものよ。世の中の食通って作り手の名前と食材の価値だけしかみてないのだし」

「つまり、私を試したっと……そう捉えていいのでしょうか?」

「試すという意味では肯定するわ。といっても、それで不合格だからといって別にどうこうするつもりないからそこは安心なさい」

「そんな言葉だけで安心できるとでも?」

「ならどうすれば安心してもらえるかしら?」

「私達を五体満足で無事に帰してくれるなら、安心できるのだけど~~にやにや」

「それを希望するならいいわよ。さすがに今すぐは無理でも、五体満足で無事に帰してあげる事だけは約束してあげる」

「もう一声……って言いたいとこだけど、今の所は帰してくれるって確約できただけで良しとしようか。そういうわけでお義姉ちゃん、最低限の退路の確保は出来たから後の交渉はよろしく」

 こうしてクラーラはアーデルも気にしていた事柄の一つ。退路の確保を口先だけで解決させてしまったのだ。
 その事実につい唖然としてると、クラーラはアーデルに向けてやりきったZEと言わんばかりな表情を浮かべながら一息つくかの如く、お茶を一口飲んでからタルトを口に運んだ。
 一口一口をじっくり味わっては至福顔を浮かべる辺り、このタルトは相当に美味なのだろう。

(そういえば、このタルトってつい勢いで食べちゃったけどよくよく考えるとすっごい美味だったわよね。さすがに帝国で食べたタルトには劣るとはいえ、このタルトのすごい所は材料。
 なにせ帝国で食べたタルトは多種多様な新鮮もぎたてフルーツをふんだんに使ってるから美味しい代わりにそれなりのお値段してたけど、これはモモと生クリームのみで仕上げたから原価が恐ろしいほど安い。
 さらに使われてるモモはよく熟したものといえば聞こえいいけど、悪く言えば新鮮とはほど遠い腐りかけ。だからこそ抜群の熟し具合を見極め、それに合うような生クリームと生地を用意している。
 つまり、帝国のタルトは一見乱雑にみえても一級品の素材の良さを一切損なわないよう計算され尽くされた至高の美術品ともいうべき逸品に対し、このタルトはありふれた素材の旨味を互いに高め合う形で融合された⑨極の錬金術ともいうべき逸品……
 まずったわ。これほどの品だったならもっと味わって……)

「お代わりがほしいならあるわよ」

「あるの!?」

「実はこれ試作品なのよ。だから感想と引き換えなら好きなだけ提供したげるわ」

「いいですとも!!」






 そして、30分後……

 アーデルの目の前には山積みとなった空の皿が築かれたのであった。


「はぁぁ……もうお腹一杯。ご馳走さまでした」

「そりゃぁ10個も食べれば当然だろ。どんだけ腹減ってたんだって思ったが、よくよく考えるとあんな大技竜巻推進器出した後なんだから当然っちゃー当然か」

「なんか食いしん坊な義姉ですんません」

「いいのいいの。その分有意義な意見もらえたし、あれだけ美味しそうに食べてもらえればタルトも本望でしょ」

「えぇ、最初は熟したモモが最高の旨味を出すタイミングを見極めてたのだと思っていたけど、実際はそこまでタイミングにこだわってない。こだわってるのは生クリームと生地。それぞれがモモの熟し具合に合わせた配分にしてるからこそ味の差異は出ても美味しさそのものは変わりない……いや、毎回味が違うのだから、どれだけ食べても飽きがないってことに!!」

「いやいや、クレア様のタルトって予約待ちが発生するぐらいの人気商品だから、飽きがこないだけ食べるなんて普通出来ないからね!!
 でも、このタルトって滅多に手に入らない特別なナニカを使ってるからこそ生産数が少ないのだと思ってたけど、実際は安価で手に入るようなありふれた材料だけで作れるものだったなんて……なら、これを大量生産してもらえたらぼろ儲けが」

「残念だけど、卸す数と価格は今まで通り。だってタルト作りはあくまで趣味。趣味にかまけて本業を疎かにできないもの」

「本業……それって薬作りの事なんでしょうか?」

 アーデルはちらりと戸棚にあった薬瓶をみる。
 そこにあるの『傷薬』や『風邪薬』に『胃薬』といった一般に流通されてる薬もあれば、国を大混乱に陥れた魔性の薬と知られる『惚れ薬』やありとあらゆる怪我や万病に効く『霊薬』もある。
 かと思えば、一口で確実な死が訪れる『毒薬』に『眠り薬』、『痺れ薬』に『自白剤』といった物騒なものもある。
 その他、『若返りの薬』や『生き返りの薬』といった夢物語でしか語られないような薬もある。

 本来なら偽物だっと疑いたいところであるも、その効力はすでに実現済み。
 若返りもそうだが、『生き返りの薬』もあの日死んだ……正確にいうと仮死状態となってたアーデルとクラーラに投与させて生き返らせてくれたのだ。

 ⑨年前時点ではこれらの薬の価値がいまいち理解できずとも、多くの知識を得た今となってどれだけの価値があるかわかってしまう。

(でも、この人はクズを魔王に変えてしまうような絶対外に出してはいけない薬まで作れてしまうのだから、世間から隠れるようにして暮らすのも当然よね。
 帰り際に記憶を消されたのも当然の処置と思えるぐらいに……)

 そんな考えを見通したのか、クレアお姉さんはくすりと笑う。

「まぁ、私の本業は薬の処方や治療だけじゃないのは確かよ。なにせ私は聖女ではなく悪い魔女だもの。この世の中、神様じゃなく悪い魔女にお願い事をするような悪い人間が多いし、一部の仕事を配下に委託してなんとかまわしてるのが現状なのよね」

「全くだな。なんせ“ボス”は俺みたいな悪魔を何匹も従えていろいろと暗躍してるお方だぜ。具体的に言うと王国での調停式、あそこでクズを魔王化させただけでなく化け物達も送り込んで暴れるよう命令したのは“ボス”だもんな」

「そういう事。世間では私の事を聖域の聖樹を守る聖女とか言われてるけど、その実態は悪魔を従えて世界に破壊と混乱をもたらす悪い魔女なのよ。ふふふふ」

「俺も帝国では魔王を裏で操る黒幕。『悪魔王』として知られてるが、その実態は悪い魔女様に顎でこき使われてるただの使い魔だぜ。はははは」

 邪悪に笑う魔女と悪魔だが、その笑いはどことなく胡散臭いものがあった。
 それに、黒幕と称するならもう一つの事例に関して聞く必要がある。

「あの……笑ってるところすいません。一つ質問ですけど……私が以前クラーラの病を治す代償として差し上げた人形、デールがなぜウェディングドレスの付属品になってたのでしょうか?
 それと、あのウェディングドレスを作ったのはクレア様なのでしょうか?」
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