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第三章 義姉妹拉致からの帰還、そしてクズインガオホーからの超ざまぁ編
175.クズが魔王となって大暴れだけでも十分過ぎる程の大事件なのに、それを物足りないとか言い切るなんてどういう神経してるのこの人!?(SID
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「一つと言ってる割には質問二つあるわね。特に後者はどうしようかしら」
アーデルの質問に答えるべきかっと悩み始めるクレアお姉さんであるも、そこをオニオンが横から口を出してきた。
「あー後者はただの噂だ。なんせボスは傷口の縫合なんかだと完璧にこなせるのに、なぜか繕い物が全く駄目だ。どれぐらい駄目かというと、サツマ博士が言うには毎回指をグサグサ刺しまくって血染めにするぐらいだ。
それぐらい酷いあり様だから当然ウェディングドレスの制作には一切関わらせてもらえなかったそうだ。
おまけに、当時のボスはその扱いが不服だったらしく、せめてウェディングドレスの制作者達に差し入れを提供して貢献しようと思い立って熱々のシチューを持っていったら、足元不注意で思いっきりずっこけてシチューを制作途中のドレスにぶちまけ。
さすがの俺も『ありえない。何かの間違いじゃねーのか?』って耳疑ったんだが……」
「うふふふふふふ、人の黒歴史を勝手にほじくり返すなんて馬鹿なの?死ぬの?頭グシャーして血塗れにしてあげようかしら?」
「っとまぁ、ボスが黒歴史って言ってるように本当の話だったらしい。ただ、俺達にとっては完全無欠と思えたボスにもそんな欠点があったと知って、逆に親近感湧いたわけなんだけどな。お前らもそう思うだろ」
「えっと……私に振られても困るというか……」
「えっ?これ喜ぶところでしょ。だってお義姉ちゃんも繕い物苦手だけど、さすがに血染めまではしないもんね。下には下が居るなんて万々歳じゃない」
「あ~うん。私の場合は針が指に刺さっても針の方がぐにゃって曲がっちゃうからさすがに……ってそんな評価はさすがにクレア様に失礼でしょ!!」
「心配いらないわ。だってあの一件はもう様々な所で散々酒の肴としてからかわれてきた失敗談だし、私自身もまだ皆が生きていた頃の大切な思い出エピソードの一つとしてるもの。懐かしむキッカケにはなっても怒るキッカケにはならないわよ。
それよりもう一つの質問だけど、前提から話すわ。聞く準備できてるかしら?」
オニオンの横やりのせいで空気が少々緩んでしまうも、これから聞き逃せない話となるならっとアーデルは姿勢を正す。
その態度の変化にクラーラから『マイヤー様の時と偉い違いじゃん』なんて視線で突っ込まれたが、あれは身内だからこそ出来た事だ。
目上相手にはそれ相応の礼儀が必要っとばかりに姿勢を直す。
その態度に満足したのか、クレアお姉さんはにっこり笑いながら語り始めた。
「まず、前提として魔王と勇者は表裏一体の存在。世界に魔王が現われるなら魔王を倒す勇者もしくは聖女も現われるのが世界の習わしなの。
だからオニオンちゃんを派遣してあのクズを魔王化させた後に聖女の力に目覚めたアーデルちゃんでトドメさせようと考えたのよね。
でも、ただ倒させるだけじゃ物語的に面白味がないし、何かいい演出できないかなっと皆で考えてたら娘のサクヤからあのウェディングドレスの持ち出しに関して相談の連絡が来たの。
さっきオニオンちゃんが言った通り、製作者は私じゃないしドレスも遺品としてあくまで私が一時預かってただけ。だから、サクヤへ正式に譲った今となっては逐一私に話を通す必要性全くないのだから当初は好きになさいって返事しようと思ってたけど、話をよくよく聞いてみるとドレスの送り先がアーデルちゃんって判明してね。それでピコーンと頭に電流が走るかのごとく思いついちゃったの。ウェディングドレスを利用して大々的に聖女誕生から魔王討伐の筋書を……ね」
(いやいや、クズが魔王となって大暴れだけでも十分過ぎる程の大事件なのに、それを物足りないとか言い切るなんてどういう神経してるのこの人!?)
話途中でアーデルはついつい突っ込みそうになるも、相手はそもそも悪魔を従えてるような魔女だという事を思い出す。
一般常識なんて当てはめてはいけない人種なのだから、突っ込んでも無駄なのだっと気持ちを切り替えて続きを聞くこととした。
「それで質問の答えだけど、デール君はあのウェディングドレスに宿ってる神霊とアーデルちゃんが意思疎通できるようにっと橋渡しのために付属させたの。
デール君は付喪神……わかりやすく言うと精霊として目覚めてまだ⑨年程度だけど、すでに100年の年月を重ねた中堅クラスの力を持ってたし、これなら私がちょっと力を付与させるだけでドレスに宿ってる神霊と融合できると思ってたけど……
実は、当日の本番で思わぬ問題発生しちゃったのよね」
「具体的に言うと、デールが神霊と融合した際にデールが主軸となれるよう“ボス”が直々に『デールマン』と名づけたせいで元の持ち主のパスが弱くなって意思疎通が出来なくなったんだよな。
あの時のデールマンは『元ご主人に僕の声が全く届いてない!?どうしよどうしよ!!助けておにえも~ん!!』とかすっごいテンバってたぞ。俺が元の持ち主でなく製作者にパスつないで通訳させろって代案出してなかったらどうなってたやら……」
「そうだったんだ。あの時の切羽詰まった声は想定外は想定外でも別の意味での想定外だったの……というより、私も聞きたいわ。クレア様は一体どこからどこまで関わってるの?よもやクズの暴走は全て……」
元からある程度の事情を知ってるらしきクラーラからの指摘。
その視線は傍からみて殺気が籠ってるのはわかるも、クレアお姉さんはいたって涼しい顔で答えた。
「残念ながら、私が関与したのはアーデルちゃんのマッサージかっこごうもんで再起不能にされた辺りからよ。それまでは諸都合もあって介入するわけにはいかなかったから不定期に様子を探らせる程度しかやってないわよ。
まぁでも、その諸都合のおかげで今こうやってがっつり介入出来たのよね。
具体的にいうと、再起不能となってたクズにそこの戸棚にある『霊薬』を投入できるぐらいに……」
「なるほど……お義姉ちゃんが確実に再起不能とまで追い込んだクズが短期間で復帰したのはクレア様の『霊薬』のせいっと」
「でも、取り巻きはともかくあのクズは『霊薬』を使ってなお癒せなかったそうよ。クズの治療と都合のよい傀儡として誘惑するために派遣させたニーアちゃんとミーアちゃん曰く、『これもうトドメ刺してから『蘇生薬』で生き返らせた方が手っ取り早くない?』とか言ってたぐらいだもの。
その際にあのオブジェクトはどうやって組み立てたのか気になるとも言ってたし、どうやったのか聞いてみてもいいかしら?」
「えっと……それはその、勢い任せで適当にやったから再現は無理かと」
アーデルとしては、そう応えるだけで精一杯だった。
アーデルの質問に答えるべきかっと悩み始めるクレアお姉さんであるも、そこをオニオンが横から口を出してきた。
「あー後者はただの噂だ。なんせボスは傷口の縫合なんかだと完璧にこなせるのに、なぜか繕い物が全く駄目だ。どれぐらい駄目かというと、サツマ博士が言うには毎回指をグサグサ刺しまくって血染めにするぐらいだ。
それぐらい酷いあり様だから当然ウェディングドレスの制作には一切関わらせてもらえなかったそうだ。
おまけに、当時のボスはその扱いが不服だったらしく、せめてウェディングドレスの制作者達に差し入れを提供して貢献しようと思い立って熱々のシチューを持っていったら、足元不注意で思いっきりずっこけてシチューを制作途中のドレスにぶちまけ。
さすがの俺も『ありえない。何かの間違いじゃねーのか?』って耳疑ったんだが……」
「うふふふふふふ、人の黒歴史を勝手にほじくり返すなんて馬鹿なの?死ぬの?頭グシャーして血塗れにしてあげようかしら?」
「っとまぁ、ボスが黒歴史って言ってるように本当の話だったらしい。ただ、俺達にとっては完全無欠と思えたボスにもそんな欠点があったと知って、逆に親近感湧いたわけなんだけどな。お前らもそう思うだろ」
「えっと……私に振られても困るというか……」
「えっ?これ喜ぶところでしょ。だってお義姉ちゃんも繕い物苦手だけど、さすがに血染めまではしないもんね。下には下が居るなんて万々歳じゃない」
「あ~うん。私の場合は針が指に刺さっても針の方がぐにゃって曲がっちゃうからさすがに……ってそんな評価はさすがにクレア様に失礼でしょ!!」
「心配いらないわ。だってあの一件はもう様々な所で散々酒の肴としてからかわれてきた失敗談だし、私自身もまだ皆が生きていた頃の大切な思い出エピソードの一つとしてるもの。懐かしむキッカケにはなっても怒るキッカケにはならないわよ。
それよりもう一つの質問だけど、前提から話すわ。聞く準備できてるかしら?」
オニオンの横やりのせいで空気が少々緩んでしまうも、これから聞き逃せない話となるならっとアーデルは姿勢を正す。
その態度の変化にクラーラから『マイヤー様の時と偉い違いじゃん』なんて視線で突っ込まれたが、あれは身内だからこそ出来た事だ。
目上相手にはそれ相応の礼儀が必要っとばかりに姿勢を直す。
その態度に満足したのか、クレアお姉さんはにっこり笑いながら語り始めた。
「まず、前提として魔王と勇者は表裏一体の存在。世界に魔王が現われるなら魔王を倒す勇者もしくは聖女も現われるのが世界の習わしなの。
だからオニオンちゃんを派遣してあのクズを魔王化させた後に聖女の力に目覚めたアーデルちゃんでトドメさせようと考えたのよね。
でも、ただ倒させるだけじゃ物語的に面白味がないし、何かいい演出できないかなっと皆で考えてたら娘のサクヤからあのウェディングドレスの持ち出しに関して相談の連絡が来たの。
さっきオニオンちゃんが言った通り、製作者は私じゃないしドレスも遺品としてあくまで私が一時預かってただけ。だから、サクヤへ正式に譲った今となっては逐一私に話を通す必要性全くないのだから当初は好きになさいって返事しようと思ってたけど、話をよくよく聞いてみるとドレスの送り先がアーデルちゃんって判明してね。それでピコーンと頭に電流が走るかのごとく思いついちゃったの。ウェディングドレスを利用して大々的に聖女誕生から魔王討伐の筋書を……ね」
(いやいや、クズが魔王となって大暴れだけでも十分過ぎる程の大事件なのに、それを物足りないとか言い切るなんてどういう神経してるのこの人!?)
話途中でアーデルはついつい突っ込みそうになるも、相手はそもそも悪魔を従えてるような魔女だという事を思い出す。
一般常識なんて当てはめてはいけない人種なのだから、突っ込んでも無駄なのだっと気持ちを切り替えて続きを聞くこととした。
「それで質問の答えだけど、デール君はあのウェディングドレスに宿ってる神霊とアーデルちゃんが意思疎通できるようにっと橋渡しのために付属させたの。
デール君は付喪神……わかりやすく言うと精霊として目覚めてまだ⑨年程度だけど、すでに100年の年月を重ねた中堅クラスの力を持ってたし、これなら私がちょっと力を付与させるだけでドレスに宿ってる神霊と融合できると思ってたけど……
実は、当日の本番で思わぬ問題発生しちゃったのよね」
「具体的に言うと、デールが神霊と融合した際にデールが主軸となれるよう“ボス”が直々に『デールマン』と名づけたせいで元の持ち主のパスが弱くなって意思疎通が出来なくなったんだよな。
あの時のデールマンは『元ご主人に僕の声が全く届いてない!?どうしよどうしよ!!助けておにえも~ん!!』とかすっごいテンバってたぞ。俺が元の持ち主でなく製作者にパスつないで通訳させろって代案出してなかったらどうなってたやら……」
「そうだったんだ。あの時の切羽詰まった声は想定外は想定外でも別の意味での想定外だったの……というより、私も聞きたいわ。クレア様は一体どこからどこまで関わってるの?よもやクズの暴走は全て……」
元からある程度の事情を知ってるらしきクラーラからの指摘。
その視線は傍からみて殺気が籠ってるのはわかるも、クレアお姉さんはいたって涼しい顔で答えた。
「残念ながら、私が関与したのはアーデルちゃんのマッサージかっこごうもんで再起不能にされた辺りからよ。それまでは諸都合もあって介入するわけにはいかなかったから不定期に様子を探らせる程度しかやってないわよ。
まぁでも、その諸都合のおかげで今こうやってがっつり介入出来たのよね。
具体的にいうと、再起不能となってたクズにそこの戸棚にある『霊薬』を投入できるぐらいに……」
「なるほど……お義姉ちゃんが確実に再起不能とまで追い込んだクズが短期間で復帰したのはクレア様の『霊薬』のせいっと」
「でも、取り巻きはともかくあのクズは『霊薬』を使ってなお癒せなかったそうよ。クズの治療と都合のよい傀儡として誘惑するために派遣させたニーアちゃんとミーアちゃん曰く、『これもうトドメ刺してから『蘇生薬』で生き返らせた方が手っ取り早くない?』とか言ってたぐらいだもの。
その際にあのオブジェクトはどうやって組み立てたのか気になるとも言ってたし、どうやったのか聞いてみてもいいかしら?」
「えっと……それはその、勢い任せで適当にやったから再現は無理かと」
アーデルとしては、そう応えるだけで精一杯だった。
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