義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

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第三章 義姉妹拉致からの帰還、そしてクズインガオホーからの超ざまぁ編

207.ねぇ……その生き地獄ってもうざまぁってレベルじゃないでしょ……(SIDE:アーデル)

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「ねぇロッテン。クズ処刑時には絶対なにかトラブルが起きるっと終始気を張ってたのが馬鹿らしいぐらいに何も起きなかったわね」

「ええ。本来ならうれしい誤算なのに、今までが今までだったせいでおかしいっと思う私はおかしいはずよね?アーデル」

「大丈夫。私も同じ想いをしてるし、案外当日ではなく気を抜いた翌日以降に何かが起きるという時間差なのかも」

「あーあーそれはありうるわ。王国軍との戦争も当日より翌日の方が予想外過ぎて戦後処理に頭悩ませられたし、気を抜くのはまだまだ早いって事ね。マイヤーのせいで余計な禍根を残してるし、余計に!!余計に!!!」

「大事なことなので二回言ってるので再度意図を説明しますが、クズの遺体を火葬ではなく壺に詰め込んでの封印に変更させたのは愚かな馬鹿を呼び寄せるためです。
 それに封印といっても中身は空っぽですから、万が一封印が破られようとも実害なんて発生しませんよ。くいくい」

「クズの身柄は悪魔達に引き渡す約束だったし、普通に考えれば空っぽでしょうね。でも……本当は空っぽじゃないのでしょう?オニオンさん」

「けっけっけ。中が空っぽなのは本当だが、仕掛けあるのは確かだぜ。どんな仕掛けをしたか聞きたいか?」

「…………断るわ。聞いたら聞くんじゃなかったなんてすっごい後悔しそうな気配するし、もう好きにしなさい」

「ほぅほぅ。未来の宰相さんは気が強い女と思いきや、意外と男を立てる物分かりのいい女でもあったんだな」

「物分かりがいいのは宰相として欠点でありますが、その欠点を補うのが宰相補佐であり伴侶たる私の役目。以後も裏の汚い部分は我々裏方にお任せください」

「そういうこった。それに、俺もむやみやたらと混乱引き起こすつもりはないぜ。その証拠に処刑で余計なちょっかい出さなかっただろ。だから“聖女王セイントクィーン”様も裏方面は俺達にお任せでいいよな?」

「はぃはぃ、私もそっち方面は一切口出さないからもう好きになさい」

 ロッテンと同様に投げやり的な対応をするアーデルであるも、これには一応意味はある。
 アーデルはオニオンと接した事で修行以外の日常的な出来事の記憶も鮮明になってきたからだ。

 その記憶の中には温泉宿でお世話になっていた従業員悪魔達との対戦の約束を取り付けた物もあり……

 結論から言えば、すでにトラブルが一個大隊クラスで順番待ちされてる状態だ。

 これでは多少の問題に対して目を瞑りたくなってもおかしくないであろう。

 それに、マイヤーは言動(と性癖)こそあれであっても超有能な人材。
 特にアーデル達の同期で国政の裏部分を任せられる人材は彼ぐらいしかいない。

 他に選択肢がないのであれば、うじうじ悩まずすぱっと割り切ってしまう方が得策というものである。

「そうよ、うじうじ悩むなんて私らしくない!!クズの一件はもう終わったのだから次の問題に取りかかる方がよっぽど建設的!!さしあたって次に緊急性の高い問題は……」

「でしたら、この案件をお願いします。これはアムル家絡みなので我々では判断しづらく、先方もこちらの事情を汲んで保留にしてくれてました。
 ですが、アーデル様が目覚めた以上、近日中には催促されるでしょうからその前に着手して印象操作してしまいましょう」

「相変わらずあくどい事。でも、そういった印象操作も為政者には重要な事。催促される前に片付けてやるわよ!!」

 こうして前向きとなったアーデルは長らくロッテンに預けていた王専用の執務机に向かって書類を裁き始める。

 アーデルは戦闘特化の脳筋で内政関係が苦手と公言してるといっても、別に執務能力が低いわけでない。
 頭脳面こそ並程度であれも、並外れた動体視力と反射神経と集中力を持つせいで集中すれば常人の3倍近い速度で動けるゾーンの世界に突入出来るのだ。
 アーデルの体感としては常人と同じ速度で書類を裁いてるつもりであっても、他者からみれば常人の3倍の速度で書類を裁いてるようにみえるのである。

 その代わりに体力やカロリー消費が3倍を通り越した5倍になるという燃費面での欠点はあれど、そこは無尽蔵ともいえる体力と毒物を平然と消化してしまう鋼の胃袋を持つアーデル。
 血液や内臓や骨といった本来捨ててしまうような部分を使ったまかない料理でも平然と食してカロリー補給できるから食費にかかるコストそのものは常人と大差ない。

 アーデルが帝国の皇帝から事実上の王としての才覚が認められているのは、それなりの根拠あっての事である。

 ただ、才覚はともかく振る舞いが王として相応しいかは別問題であるのだが……
 皇族の血筋であるハイドをみればわかるとおり、実力主義を掲げる帝国にとっては多少の欠点も実力を示せばある程度見逃されるようだ。


「アーデル様、これの裁決お願いします」

「これもお願いします」

「これも……」

 次から次へと運ばれてくる書類の山。
 だが、仕事が国のトップであるアーデルへと集中するのはいつもの事。全てを自分で抱えるような事をせず、自分の手に余るような案件はロッテンやマイヤーといった少々癖はあれど優秀な側近に回してしまえばいい。

 実際、アーデルの目標としていたブリギッテ王妃もそのようにして執務をこなしていたのだ。だから、アーデルも素直に周囲の手を借りるのである。

 こうして世間ではクズの散り際の言葉を真に受けてしまう者や良からぬ考えを持つ者が一定数いる中、王城の中核ではクズの事を頭から完全に追い出しながら日々の政務をこなしていくのであった。


 そうした日々の中、オニオンから『生き地獄』へと落とされたクズの末路が報告された。

 その報告を聞いたアーデル達は……





「ねぇ……その生き地獄ってもうざまぁってレベルじゃないでしょ……」

 『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
 これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な有様にドン引きすると同時に、その生き地獄の詳細を知ってしまった事を後悔するのであった。
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