70 / 77
異世界ブルーインパルス~異世界で稲作はじめました?
第三話
しおりを挟む
「たっか!」
鞍にまたがって下を見て思わず声が出る。
「なに言ってるんすか。普段もそのぐらいの高さでしょ」
坂崎が笑いながらこぶしで俺の足を叩いた。
「さすがにこんなむき出しの状態でこの高さは怖いで。しかもベルトは無しなん? こんなん、宙返りしたら落ちてまうやん?」
「ご安心ください。ちゃんと固定用ベルト装備の鞍です」
脚立で上ってきた坂崎が、鞍についていたベルトを引っ張り上げる。見た感じT-4についているようなものではなく革製のようだ。
「さすが隊長の夢!と言いたいところやけど、それ大丈夫なんか? 途中でプチッてならへん?」
「まあ隊長の夢なんで大丈夫だと思いますけど、なった時はなった時ですよ。その時は五番機君の出番です」
「は?」
五番機君がこっちを向いてガウガウと言った。
「鞍から落ちても、地面に落ちる前にキャッチするから心配するな、だそうです」
「ほんまかいなぁ……」
「ま、大丈夫だと思いますよ。なにせ隊長の夢ですし、最終手段として地面に落ちる直前に目が覚める安全装置つきかも」
そんなことを言われても、あえて落ちる気にはなれない。ここは隊長がベルトの頑丈さを考えてくれていると祈るしかなさそうだ。
「あ、これゴーグルです。これがないと風圧で目があけられないので。ではご安全に!」
ベルトの装着具合を確認した坂崎はゴーグルを俺に押しつけると脚立からおり、それを担いで離れていく。
「ドラゴンがいて脚立がある夢てどないやねん。しかも滑走路やのうて野っぱらやし」
そんな俺のぼやきをよそに、ドラゴンたちは普段通りという具合に軽く羽ばたきながら縦一列に並んだ。どうやらここでは一頭ずつ離陸するらしい。
「は~~、夢の中でまでなんで飛ばなあかんねんしかもドラゴンやて。ほんま飛びたないで」
ため息をつきながらゴーグルを装着すると、五番機君が俺の言葉に反応してガウガウと声をあげた。
「なにゆーてるか分からへんけど、わいは黙らへんからな。せやから我慢しておとなしゅう飛びや。火ぃはなし! 焼きおにぎりは堪忍やで!」
首をポンポンと叩くと鼻からチョロッと火を吐いて前を向く。そうこうしている間に一番機君が軽く助走をつけて飛び立った。滑走距離はほぼゼロに近い。
「なるほど、短距離で離陸するんはライトニング君なみやな」
一番機君に続いて次々とドラゴンが飛び立ち、五番機君も空にあがった。
「おおおお、これはなかなか~~」
あっという間に地面が遠くなる。羽ばたいているのでそれなりの揺れはあるが、飛んでいるという実感が普段以上に感じられた。
「これはなかなかおもろいかもしれんな。飛びたないけど」
「めちゃくちゃ楽しいですね、影山さん!」
横に並んだ葛城がニコニコしながら声をかけてくる。
「ちょっとお互いの声が聴こえにくいのが玉にキズやけどな! 隊長のタイミングの声が聴こえへんと、アクロするの難しいんちゃうん?」
「それは確かに! しかも俺達は初めてですし!」
それは夢の配信元の隊長も同様だったようで、一回目のフライト(?)では編隊飛行のみの飛行となった。さすがに夢だったとしても、いきなりドラゴンで普段のアクロはできそうにない。編隊飛行ができただけでもほめてほしいぐらいだ。
「隊長、俺、ワンタイムアクロを自分にリクエストします!」
だが怖いもの知らずな葛城は違ったようで、最後の最後に自分でワンタイムアクロを宣言すると、隊長の了解を待たずにドラゴン版スローロールをしてみせた。
「ちょいオール君や! 無茶しすぎちゃうん?!」
「どうしてもやってみたくて! 意外とちゃんとできてますよね! 偉いぞ、六番機君!」
楽しそうに笑いながら六番機君をほめている。その誉め言葉に六番機君も嬉しそうに吠えた。
「あー……これは次のフライトからはヤバいんちゃうん?」
なにせ今のブルーは隊長を筆頭に負けず嫌いが多い。一番若いオール君のこんな姿を見せられたら、負けず嫌い精神に火がつくのは間違いなかった。次のフライトからは大変なことになりそうだ。
「わいには火ぃつかへんけどな……て、五番機君! 鼻息あらすぎや! 火が出とるで!!」
五番機の場合は俺よりもドラゴンのほうに火がつきそうだ。イヤな予感しかしない。
「鼻から火はあかんゆーてるやん! 他の子みてみい? ちゃんとや行儀ようしてるやろ?」
だが五番機君は不満げに首を振るばかりだ。この様子だと大人しく着陸してくれそうにない。さてはてどうしたものか。
「まったくもーどないせえっちゅうねん! 隊長~~! なんや知らんけど五番機君ワンタイムアクロせなあかんみたいなんで~~!」
隊長の了解の手が上がった。
「ほな五番機君、何をしたいんや?」
五番機君は元気よく吠えるといきなり急上昇を始める。こ、これは~~!!
「バーティカル・クライム・ロールをいきなしすなぁぁぁぁぁ!!」
なんちゅードラゴンやねん!!
鞍にまたがって下を見て思わず声が出る。
「なに言ってるんすか。普段もそのぐらいの高さでしょ」
坂崎が笑いながらこぶしで俺の足を叩いた。
「さすがにこんなむき出しの状態でこの高さは怖いで。しかもベルトは無しなん? こんなん、宙返りしたら落ちてまうやん?」
「ご安心ください。ちゃんと固定用ベルト装備の鞍です」
脚立で上ってきた坂崎が、鞍についていたベルトを引っ張り上げる。見た感じT-4についているようなものではなく革製のようだ。
「さすが隊長の夢!と言いたいところやけど、それ大丈夫なんか? 途中でプチッてならへん?」
「まあ隊長の夢なんで大丈夫だと思いますけど、なった時はなった時ですよ。その時は五番機君の出番です」
「は?」
五番機君がこっちを向いてガウガウと言った。
「鞍から落ちても、地面に落ちる前にキャッチするから心配するな、だそうです」
「ほんまかいなぁ……」
「ま、大丈夫だと思いますよ。なにせ隊長の夢ですし、最終手段として地面に落ちる直前に目が覚める安全装置つきかも」
そんなことを言われても、あえて落ちる気にはなれない。ここは隊長がベルトの頑丈さを考えてくれていると祈るしかなさそうだ。
「あ、これゴーグルです。これがないと風圧で目があけられないので。ではご安全に!」
ベルトの装着具合を確認した坂崎はゴーグルを俺に押しつけると脚立からおり、それを担いで離れていく。
「ドラゴンがいて脚立がある夢てどないやねん。しかも滑走路やのうて野っぱらやし」
そんな俺のぼやきをよそに、ドラゴンたちは普段通りという具合に軽く羽ばたきながら縦一列に並んだ。どうやらここでは一頭ずつ離陸するらしい。
「は~~、夢の中でまでなんで飛ばなあかんねんしかもドラゴンやて。ほんま飛びたないで」
ため息をつきながらゴーグルを装着すると、五番機君が俺の言葉に反応してガウガウと声をあげた。
「なにゆーてるか分からへんけど、わいは黙らへんからな。せやから我慢しておとなしゅう飛びや。火ぃはなし! 焼きおにぎりは堪忍やで!」
首をポンポンと叩くと鼻からチョロッと火を吐いて前を向く。そうこうしている間に一番機君が軽く助走をつけて飛び立った。滑走距離はほぼゼロに近い。
「なるほど、短距離で離陸するんはライトニング君なみやな」
一番機君に続いて次々とドラゴンが飛び立ち、五番機君も空にあがった。
「おおおお、これはなかなか~~」
あっという間に地面が遠くなる。羽ばたいているのでそれなりの揺れはあるが、飛んでいるという実感が普段以上に感じられた。
「これはなかなかおもろいかもしれんな。飛びたないけど」
「めちゃくちゃ楽しいですね、影山さん!」
横に並んだ葛城がニコニコしながら声をかけてくる。
「ちょっとお互いの声が聴こえにくいのが玉にキズやけどな! 隊長のタイミングの声が聴こえへんと、アクロするの難しいんちゃうん?」
「それは確かに! しかも俺達は初めてですし!」
それは夢の配信元の隊長も同様だったようで、一回目のフライト(?)では編隊飛行のみの飛行となった。さすがに夢だったとしても、いきなりドラゴンで普段のアクロはできそうにない。編隊飛行ができただけでもほめてほしいぐらいだ。
「隊長、俺、ワンタイムアクロを自分にリクエストします!」
だが怖いもの知らずな葛城は違ったようで、最後の最後に自分でワンタイムアクロを宣言すると、隊長の了解を待たずにドラゴン版スローロールをしてみせた。
「ちょいオール君や! 無茶しすぎちゃうん?!」
「どうしてもやってみたくて! 意外とちゃんとできてますよね! 偉いぞ、六番機君!」
楽しそうに笑いながら六番機君をほめている。その誉め言葉に六番機君も嬉しそうに吠えた。
「あー……これは次のフライトからはヤバいんちゃうん?」
なにせ今のブルーは隊長を筆頭に負けず嫌いが多い。一番若いオール君のこんな姿を見せられたら、負けず嫌い精神に火がつくのは間違いなかった。次のフライトからは大変なことになりそうだ。
「わいには火ぃつかへんけどな……て、五番機君! 鼻息あらすぎや! 火が出とるで!!」
五番機の場合は俺よりもドラゴンのほうに火がつきそうだ。イヤな予感しかしない。
「鼻から火はあかんゆーてるやん! 他の子みてみい? ちゃんとや行儀ようしてるやろ?」
だが五番機君は不満げに首を振るばかりだ。この様子だと大人しく着陸してくれそうにない。さてはてどうしたものか。
「まったくもーどないせえっちゅうねん! 隊長~~! なんや知らんけど五番機君ワンタイムアクロせなあかんみたいなんで~~!」
隊長の了解の手が上がった。
「ほな五番機君、何をしたいんや?」
五番機君は元気よく吠えるといきなり急上昇を始める。こ、これは~~!!
「バーティカル・クライム・ロールをいきなしすなぁぁぁぁぁ!!」
なんちゅードラゴンやねん!!
65
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今日も青空、イルカ日和
鏡野ゆう
ライト文芸
浜路るいは航空自衛隊第四航空団飛行群第11飛行隊、通称ブルーインパルスの整備小隊の整備員。そんな彼女が色々な意味で少しだけ気になっているのは着隊一年足らずのドルフィンライダー(予定)白勢一等空尉。そしてどうやら彼は彼女が整備している機体に乗ることになりそうで……? 空を泳ぐイルカ達と、ドルフィンライダーとドルフィンキーパーの恋の小話。
【本編】+【小話】+【小ネタ】
※第1回ライト文芸大賞で読者賞をいただきました。ありがとうございます。※
こちらには
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/999154031
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『ウィングマンのキルコール』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/972154025
饕餮さん作『私の彼は、空飛ぶイルカに乗っている』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/812151114
白い黒猫さん作『イルカフェ今日も営業中』
https://ncode.syosetu.com/n7277er/
に出てくる人物が少しだけ顔を出します。それぞれ許可をいただいています。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
十年目の結婚記念日
あさの紅茶
ライト文芸
結婚して十年目。
特別なことはなにもしない。
だけどふと思い立った妻は手紙をしたためることに……。
妻と夫の愛する気持ち。
短編です。
**********
このお話は他のサイトにも掲載しています
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる