αで上級魔法士の側近は隣国の王子の婚約者候補に転生する

結川

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第1章

第2話(7)転生先は王子の婚約者候補

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翌朝、朝食会場に集まった僕とカミラとアリシアの三人は、揃って疲れを隠せない顔で視線を交わし、同時に重たい溜息をついた。
昨日の課題をヨハンに認めてもらえたのは、夜もすっかり更けた頃、日付が変わる直前だった。


魔法の使えない僕らは、早々に三人で分担して力を合わせることを選んだ。
僕は不要な家具を倉庫へと運び、カミラは汚れた布類をランドリーへ。
その間にアリシアは窓拭きや掃き掃除など、部屋の清掃を進めていった。

魔法が使えないというハンデに加え、僕らの寝室は他よりも一際汚れている。
昼過ぎから清掃を始めたというのに、ある程度片がついたのは日が暮れる頃だった。
休憩らしい休憩も取れず疲労困憊な僕らは、よろよろとした足取りでヨハンにチェックを頼む。
ところがヨハンはそんな僕らに、姑よろしくといった態度で窓枠を人差し指でなぞり、こうのたまったのだ。

「埃が残っています」

喉まで出かかった文句を必死に飲み込み、僕らは再び掃除道具を手に取る。
夕食時もお腹の虫を鳴かせながら清掃していると、わざわざベネット嬢が取り巻きを引き連れて現れた。

「魔法が使えないなんて、Ωは本当に可哀そう」

そんな嘲笑を投げつけて、愉快そうに通り過ぎていく。
北棟に用なんてあるはずもないのに。よほど暇らしい。
その後も何度かヨハンの不合格をくらいながらも、日付が変わる少し前に僕達はようやく課題から解放されたのだった。


疲れ切った僕らの顔とは対照的に、大広間にはうららかな朝陽が差し込んでいた。
ここでの食事はバイキング形式らしく、壁際には色とりどりの料理がずらりと並んでいる。
令嬢たちは楽しげに料理を皿へ取り分け、広間に点在する円卓で談笑している。
本来なら美味しそうな料理に僕も舌鼓を打ちたいところだが、今は空腹よりも疲労感の方が勝ってしまい、食欲はほとんど湧いてこない。

「みんな、昨日は本当にお疲れ様…」
「ルカくんこそお疲れ様です…力仕事を引き受けてくれて、とても助かりました…」
「ほんとそれ…私とアリシアだけだったら無理だった…魔法が使えたらいいのになぁ…何でΩは使えないんだろ…」

"魔法が使えない"
カミラの言葉に、僕はふと考え込む。

確かに昨日、僕は魔法が使えなかった。
けれど、その理由に心当たりがあるのだ。
といっても、その心当たりに気付いたのは、昨夜清掃のチェックを終え、お風呂に入る前のこと。
もっと早く思い至っていればとは思うが、昨日は余裕がなかったし、"それ"を身に着けるのは当然のことだったから、考えもしなかった。

「アリシア、カミラ、ちょっとお願いがあるんだけど」

話を切り出そうとした瞬間、大広間の扉が開いた。
ヨハンを含む王家の側近たちが現れ、場の空気が引き締まる。

「本日の課題について説明します」
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