αで上級魔法士の側近は隣国の王子の婚約者候補に転生する

第1章

第2話（3）転生先は王子の婚約者候補

「こちらの広間でお待ちくださいませ」

案内された広間には、煌びやかなドレスに身を包んだ妙齢の女性が十数人程いた。
談笑している者、椅子に腰を掛けて読書に興じている者、それぞれ自由に過ごしているようだ。
当然だが、男はいない。

広間へ入室すると、彼女達の視線が一斉に集まる。
ジロジロと品定めをするような視線に、僕はとりあえず微笑んだ。
あまり歓迎されていないようだ。
婚約者候補同士で言わばライバルなのだから致し方ないけれど。
居心地の悪さを感じて、広間の隅っこに佇んでいると、突然肩を叩かれた。

「あなたΩでしょ！」

振り向くと、女性が二人立っていた。
栗色の髪に赤い瞳の溌溂とした女の子は興味津々に僕を見上げ、金髪碧眼の大人しそうな女の子はオドオドとした様子で彼女を嗜めている。
僕は思わず目を見張った。
二人とも目を疑ってしまうほどの絶世の美少女だったからだ。
呆気に取られたまま僕は頷く。

「やっぱり！めちゃくちゃ綺麗な人が来たなぁって思ってたんだ！」

あなた達には言われたくないけどね。
心の中で突っ込んでしまうほどには、二人は他の女性達とは別格に美しかった。

透けるような白い肌と、宝石のように煌めく瞳。
瞳を縁取るまつ毛は、長く綺麗なカールを描いている。
サラサラと絹のように綺麗な髪が、動く度にしなやかに揺れた。
骨格は細身で頭身が高く、スタイルも良い。
まるで精巧に作られたビスクドールみたいで、本当に同じ人間なのかと疑ってしまう。

「うち、男のΩって初めて見たけど、そこら辺の女の子なんか目じゃないほど可愛くて綺麗だね～！」
「え？」
「でも寝癖がついてるのが残念！」
「え！？」

こっちこっち～と彼女達に案内され、壁掛けの鏡の前に立たされる。

「ほら、ここ。せっかくの美男子が台無しだよ～」

鏡を見て言葉を失った。
艶のある濡羽色の髪に、澄んだ蜂蜜色の瞳。
鼻筋の通った鼻や桜色の薄い唇が、小さな顔に美しく配置されている。
濃く長い睫毛は瞳を縁取り、中世的な雰囲気を醸し出していた。

アデルも綺麗な顔をしていると思ったけど、僕達3人の容姿はその比じゃない。
鏡に映る3人は一線を画した美しさを持ち、其の空間だけ異国の地のようだった。

「私達もΩなの。Ω同士仲良くしましょ！」

ニコリと笑った彼女に僕は頷いた。

「私はカミラ、んで、こっちが」
「アリシアです。よろしくお願いします」
「僕はルカ。よろしくね。ちょっと聞きたい事があるんだけど」

その時カツンと床を突くハイヒールの音が聞こえた。
振り向くと、僕達を蔑むような目で睨む女性が立っていた。