巡る旅の行き着く先は終焉と呼べるのか

ユミグ

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召喚されたけど引きこもっててもいいですか?

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出発から7日間で変わったのは景色だけで最初に居た部屋とあまり変わらない日常を過ごしてる。
勉強したり裁縫を習ったりみんなと仲良くしたり…………
馬車だって魔法で浮かせているからか酔いもなければ揺れもない、眠くなったら簡易のベッドに横になるし、夜は立派なテントで眠る。
最初に心配していた食事も美味しいし、お米もタイ米みたいなのがあるから特に恋しくなる事もない、漬物や煮物とかは元々食べないから出て来なくても疑問にすら思わなかった。
なんだかとってもゆったりした毎日を過ごしている。

「もうすぐ着くの?」
「そうだよ!ちゃんと準備もさせてるから心配しないでね」
「そういう心配はしてないんだけど、もうすぐ淀みが見れるんだよね?」
「ああ、魔獣も活発に動いているが決してユイの前に現れる事もないから心配するな」
「そういう心配もしてないんだけど、私がずっと見てた景色は淀みが消えた場所だからちょっとワクワクしてる…………は不謹慎か」
「聖女であるユイだけは何を言っても問題ないよ」
「聖女って凄いなぁ…………」
「もう2時間もすれば浄化されていない範囲に入りますからその時になればお教えします」
「うん」

基本的に馬車内は5人で居る、生活は共にしてるんだけどゴミ出しをしてないとか食器洗いを忘れてるとか、そういう事が起こり得ないから喧嘩も不満もないので心穏やかだ。
きっとそういう配慮もされてるんだろうけど、気付けるほど気配りでもない。
外に出ると守護神官達に守られてるけど毎日感謝を伝えるだけで特に会話はないし、あちらから話しかける事もない…万が一話しかけられるとしても夫を通して伝えられるらしい。
大切に守られてるなぁって毎日感じる。
それと意外にも裁縫はフィフィじゃなくてエルが上手で、今も教えられながら裁縫をしてる。本当はこういう事もしなくていいらしいんだけど私が暇なのに気付いて提案してくれた。
毎日スマホ生活だったから手持ち無沙汰なんだよね。

「そろそろですよ」
「カーテン開けてもいい?」
「問題ないよ、待っててね」

私ってカーテンすら開けてもらう立場なのか………………

「ふ、わあっ!これが淀み、なの?」
「そうだよー!僕たちにとってはこの光景が当たり前で今までの景色は異様だったんだけどねぇ」

まだ午後なのに薄暗く砂が降り続いてるような景色が続く、今までもあまり草花はなかったんだけど過ぎ去る景色の中に花もなければ木も枯れている。

「息苦しそうだねぇ……」
「……ええ、淀みが多い場所は息がしずらいのですが……どうしてそう思われたんですか?」
「よく分かんないけど木とか生えてないと酸素がなくなるっていうから」
「そう…なのですか?」
「え?うん、私の世界も都会に木が少なくなっちゃわないようにわざわざ埋めるって聞いた事があるようなないような?」
「なるほど……」

これって本当に神殿を出る頃には綺麗になってるのかな?

「少し夕食は過ぎるが今日中には神殿に着く」
「お腹空いたら言ってね?甘い物なら僕常備してるから」
「ありがとう」

本当に野宿ってなんだろう?って感じ。
お菓子も暇つぶしもあれば、夜風がテント内に入り込んで寒いなんて事もない。

「ユイはなんでもない事でもお礼を言うね?」
「へ?そうなのかな?……意識した事なかったかも」
「守護神官達にも気を遣ってるし、疲れない?」
「ええ!?私気遣った事ないんだけど」
「「「「え?」」」」

ええ?守護神官達とはほとんど話もしないから気遣いなんてする暇もなければ、する必要もないからそんな事ないんだけど。

「え……なんだろ、常識の違いかな?変な事してない?」
「し、してないよ!むしろみんなから心優しい聖女様って毎日のように言われてるんだよ!?」
「え、誰それ」
「「「「ユイに決まってる(でしょう)!」」」」

本当に誰だそれは。

「はえー……異世界は怖いねぇ………」
「「「「………………」」」」

海外でも常識が違うのに、異世界はもっとさっぱりだ。
何も考えてなければ優しくもないのにそんな風に思われるなんて………あ、あれかぁ、きっと聖女フィルターみたいなのがかかってるんだなぁ。

「無意識に取り込めているのは聖女としての素質があるという事でいいのか?」
「ありすぎだよ!どれだけ誑し込んでるか!」
「これが無意識とは………」
「先々でこれだと王族までも心酔してしまいそうですね」

4人は度々こんな風に私を放って会議をし出す。
それって親バカっていうんだよって教えてあげたいけどどうせ言いくるめられるから黙って裁縫に戻る。








「もう着きますよ」
「え!?」

あれから集中して裁縫をしていたみたい、私って意外と細々した事するの好きみたい。

「あう、目がしゅぱしゅぱする」
「少し休憩させれば良かったね、ほら目に当てて」
「ん」

エルが出したほかほかタオルを目に当てられて気持ち良さに脱力する。
収納出来るのはわずからしいんだけど、それでも空間収納を扱えるみたいでいつも何もない所から色々な物が出てくるからその度に驚く。

手に持っていた裁縫道具も仕舞われ服も整えられる、みんなの俊敏な動きにいつもされるがままだ。
いいのかな?これで…妻失格なんじゃないかな?なにもしてないよ!?

「出たら神官達が出迎えに出てるけど気にしなくていいからねぇ?」
「お部屋の準備はしてもらっていますから食事をしたらお風呂に浸かりましょう」
「怖い事はないから安心してくれ」
「歩くのが嫌になったら抱っこするからいつでも言って?」
「う、うん…ありがとう」

なんかどんどん過保護になっていってる気がするし最初からのような気もするし………私も感覚が麻痺しそう。

「聖女様、お手を」

馬車の扉が外から開いてネイサンがエスコートしてくれる。
今日はこの間みたいに大勢の人達は居ないけど、神官達がずらっと階段の上で待っているのを見て少しだけ後ずさる私を導いてくれるかのようにネイサンが笑いかけながら横に居てくれる。
階段を上がると下がっている頭をより深々と下げられて少し腰が引けた。ていうかビビる。

「聖女様はお疲れのご様子、すぐに食事と湯あみを」
「ブルームフィールド神官長、聖女様に挨拶と感謝を申し上げたいのですが……」
「明日にしてくれ」
「実は大公様もいらっしゃっておりまして」
「それがなんだ、聖女様には関係ない事だろう」
「………そのようにお伝えしておきます」
「好きにしろ」

ピリピリとした空気にネイサンを掴む手に力が入る。
場所の把握もしているのか、神殿は全て同じ造りなのか分からないけどスタスタと前を歩くエルとフィフィの足取りに迷いはなさそう。

10分程歩いた先の部屋が今日から私達が使う場所らしい。
中に入るとエルだけが残りみんなはどこかに行ってしまった。

「もう大丈夫」
「はああぁぁぁ………」
「よく頑張ったね」

私が感謝のしすぎならみんなは私を褒めすぎだと思う。

「食事はここに届けてもらうからもう少し待っててね」
「それはいいけど、みんなはまた忙しくなるの?」
「どうだろうね」
「ご飯ちゃんと食べれるかな?」
「大丈夫だよ、ユイが心配するの分かってるからきちんと食べるよ」

心配しなかったら食べ忘れるのか………………

「あふ………」
「おいで」
「ん」

膝の上に乗せるのが好きなのかみんな乗せたがる。

「それとも………」
「ん?」
「ん-ん、膝の上に乗せるのって夫として当たり前なのかなぁって考えてた」
「そんな事はないよ、俺たちはユイに触ってないと落ち着かないんだ」
「落ち着かない………確かに心地はいいけど」
「俺も」
「ん」

膝の上に乗せられてエルといちゃいちゃしてたら部屋の扉が勢いよく音を立てて開く。


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