22 / 43
4章
21話《落胆》
しおりを挟む「やっちゃった……」
俺は2階に下り休憩スペースの自販機で炭酸飲料を買い、椅子に座って頭を抱えた。
「米沢と一緒にいる所は見られてるし、あんな言い方して逃げてきちゃうし……どうしよう、今の状況で戻るのもあれだしな」
どう考えても悪いのは俺だが、言い残したのがあれだから謝るにも謝れない。
「やっぱりこの会社俺に合ってないのかな……」
雅斗さんの誘いに乗らなければこんなことにならなかったはずだ、なんて今更ながら思う。
買っていた飲料も飲み終え、することを失ってしまった俺は呆然と立ち尽くした。
そろそろ戻ってみようかなんて思った時に、1人誰かが入ってきた。
「お、可愛い先客じゃん。えっと愁里君、だったっけ?」
「はい、そうですけど……」
「俺、この階で働いてる桝谷っていうの、よろしくね。……ふーん、愁里君って噂通りいい顔してるね~」
いきなり隣に来た彼は俺の頬に手を添え、ニヤリと笑った。
「何言ってるんですか……しかも噂通りってなんなんですか?」
「あれ、知らない?新しく来た子がめっちゃ可愛いって噂になってるんだけど」
「そ、そうなんですか」
「うん、あと色気がヤバいっていうのも一緒に広まってるかな?」
「え……」
「ほんとに知らなさそうだね、でも俺にもわかる気するな……」
桝谷さんは俺の背筋をつぅ、と指で撫でた。
「ひぅっ……」
「ん、どした?感じちゃった?」
「そんなことないです!すいません俺行かなきゃなので、失礼しま……」
そう言って逃げようとしたのだが、腕を捕まれてしまいそれを阻まれた。
「離してくださいって……」
「やだね」
彼は俺の腕を握ったまま、休憩スペースを出ていく。
強引に引かれ、たいした反抗も出来ずに俺は多目的トイレに連れ込まれた。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる