ボケるな執事!俺は異世界でも真面目に生きたいんだ!

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第19話:近すぎて、見えない距離

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「クラウス、お茶。って、うわああああ!?」

「ご安心ください、レオン様。茶葉は宙に舞っても味に変化はございません。」

「舞わせるなああああああ!!!」

朝からリビングに響く悲鳴と爆音。

紅茶を淹れるだけで小爆発を巻き起こすのは、いつものこと――のはずだった。
だが、最近のレオンはいつにも増して“反応が鈍い”。

「……まったく、油断も隙もないな、お前は……。」

「レオン様の視線が先ほどから窓の外ばかりを泳いでいたため、少々刺激的な演出を追加いたしました。」

「やめてくれ。俺の心拍数がマジで乱れる……物理的に。」

そう、最近のレオンは少し様子がおかしい。

表面上は変わらないが、何かに集中しているとき、ふいにクラウスのことを“ぼんやり”見つめているのだ。

しかも――

「なあ、クラウス。お前、今夜って空いてるか?」

「空いておりますが。」

「じゃあ、その、……庭で一緒に飯食わない?」

「はい、喜んで。」

なぜか急に“誘いがち”になってきた。

さらには――

「お前さ、髪、前より伸びた?」

「ええ。レオン様の好みに合わせて少々……。」

「好き。いや、好きっていうのは、あ、髪が、好きというか、その……。」

「レオン様?」

「この話は忘れてくれええええええ!!!」

――そして、意味不明な爆発も増えてきた。

最近のレオンを見ているクラウスの顔は、以前よりも柔らかい。

彼はあえて“自分から動くこと”をしていない。

レオンが、ゆっくりと、自分の気持ちに慣れていくのを、見守っているからだ。

「なぁクラウス。なんでお前、最近そんな優しい顔してんの?」

「私、今、世界一幸せなので。」

「いや、即答すんなあああああ!!!」

レオン・フェルドリン、19歳。

いまだ“恋人未満”のくせに、毎日ときめかされすぎて情緒が忙しい。

クラウス・イーデン、27歳。

主の戸惑いさえも愛しく思う天然執事。

――そんなふたりの日々は、今日もボケとツッコミと、ときどき本気のドキドキで彩られている。
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