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二回目の金曜日
8※
しおりを挟むぐったりとしたまま晴香は動けない。腰から下など特にそうだ。全く力が入らないので、これはまたしても腰が抜けてしまったのではなかろうかとそんな不安さえ頭を過る。
だってまさかあんなにも気持ちいいだなんて、と言うか勢いに任せてなんてことを口走ってしまったのか。今し方の己の痴態に悶絶してしまう。
こんな時は枕に逃げるしかない、と探すが大事な相棒はすでにベッドの下に落とされていたのを思い出す。ならば自分の腕、と動かそうとしてみるがそれすらもままならない。後はもうきつく瞳を閉じている事しかできない。
そうやって晴香が一人羞恥に悶えている間、葛城は手早く服を脱ぎ捨てていく。ベッドサイドから避妊具を取り出し、それを口に咥えたまま下着を脱いで装着しようとすると小さく息を飲む音が聞こえた。
軽く顔を上げた晴香と視線ががっつり絡み合う。
「……むりでは……?」
「だから見るなって言っただろ……」
葛城は軽く溜め息を吐くが、晴香はそれどころではない。初めて目にした葛城のソレ、があまりにもこう、なんと言うか――想像を超えていた。
「せんぱい」
「なんだ」
「無理」
「無理じゃない」
「物理的に無理ですよ!」
「物理的」
「だってそんなに大きいの……無理でしょう!?」
「こんなの標準だ標準、普通サイズ」
「それで!?」
「それでって言うな」
「本当に標準なんですか!?」
「多分な」
「また適当言ってる!」
「少なくともXLとかじゃねえから大丈夫だよ」
「……なにが?」
「……コレのサイズが」
晴香の顔の横に手を着き、上から見下ろしてくる葛城の目元が若干赤い。流石にこの会話は先輩も恥ずかしいんだなと、こちらはすでに羞恥心から現実逃避しかかっている晴香がぼんやりそんな事を考えていれば不意に手を掴まれた。
そのままグイと引かれた先で触れたモノ。
え、となって葛城を見つめる。葛城も同じく晴香を見つめたまま手を動かし、晴香の指を開いてしっかりと握らせた。
「コレが今からお前の中に入るから」
「う……あ、はい……え、はい? これ、って、あのその」
「知らないからビビってるだけだ。ちゃんと触って確かめたら少しは安心するだろ」
「あんしん」
安心? と首を捻りつつも先輩がそう言うのなら、と混乱の極みにいる晴香は素直に葛城の言葉に従う。
ちゃんと触って、確かめる。
そっと指を動かせば葛城の肩がピクリと跳ねた。一瞬だが眉根が寄ったのを晴香は見逃さず、これは痛かったのかと問えば短く「違う」と返される。痛くないのならば、と先程よりももっと指を緩やかに、触れるか触れないかの位置で動かしていると葛城の息が徐々に上がっていく。
「先輩?」
「……もう少し、力入れて」
「でもそしたら痛いんじゃ?」
「大丈夫……気持ちいいから、もっと」
握って、と晴香の手の上に葛城の手が重なる。そのままゆっくりと上下に扱き、少しして葛城は手を離す。晴香は教えられた通り、そして求められるままに手を動かし続ける。
じわじわと握った物の大きさと硬さが増していく。それと同時に先端からヌルヌルした液体が流れ始めた。これは大丈夫なのだろうかと葛城の様子を伺うと、薄く開いた口から熱い息を漏らし、軽く眉間に皺を寄せている。
「先輩、これ……気持ちいいです、か?」
「ああ」
返ってくる言葉は短いが、葛城の顔はこれまでの余裕を感じさせるものではない。時折きつく瞼を閉じているのは、きっと自分と同じく快感を逃しているからだ。
「なんとなく先輩の気持ちが分かった気がします……」
気持ちいいかと尋ねられるのは恥ずかしい。こちらの羞恥を煽って楽しんでいるのだとばかり思っていたが、どうやらそれだけではないのだとこの瞬間理解した。
自分の愛撫で感じている姿を見たいと同時に、言葉でも欲しくなる。だからあんなにも訊いてしまうのだ。
こんな拙い動きでも葛城が気持ちよくなってくれている。それが無性に嬉しい。
晴香は掌が汚れるのも構わず、先端から溢れる液体を全体に広げる様に塗り込む。片手で触れていたはずがいつの間にか両手で包み込む様に握り、根元から上までを丁寧に撫でる。 晴香の指が窪みに触れると一際大きく葛城が身動いだ。やばい、と短く呟き晴香の手を掴む。
「え、痛かったです?」
「逆だ逆、気持ちよすぎて出そうになった」
「出そ……う、てわかったわかりましたさすがに分かったので説明は大丈夫です!」
「イキかけた」
「だからーっ!! 大丈夫って言ったのにー!!」
「ヤバいな、お前の手で扱かれてるってだけでイキそうになるとか」
「先輩だまって!?」
「危うく掌に出すとこだった」
「先輩!」
「でも出すならお前のナカがいい」
葛城の掌が晴香の腹に触れる。
「念入りに解したつもりだけど、それでもどうしたって痛みはあると思うから無理はさせたくねえんだけど……俺がもう無理」
葛城の視線が熱を帯びる。それと同時に晴香の掌の中にある欲の象徴がドクリと動き、晴香は知らず喉を鳴らした。
「晴香、お前が欲しい。なあ、俺にくれるか?」
先週の金曜の夜から今のこの瞬間まで、いつだって葛城は晴香を好きにする事ができた。そもそも男女の力の差だってあるのだから、葛城がその気になれば晴香に抵抗できるはずもない。
けれど葛城は無理矢理行為に及ぼうとはしなかった。晴香の意思を何よりも優先してくれていた。所々強引な場面はあったけれども、それでも。
こんなにも大切にしてくれて、こんなにも求められて、そして自分も求めている相手なのだから答えは一つしかない。
「――クーリングオフできませんけどいいですか!?」
言い方ぁっ! と渾身の突っ込みが自分自身に入る中、「するわけねえだろ」と葛城は嬉しそうに笑みを浮かべた。
ベッドがギシリと音を立てる。
避妊具に覆われた葛城の熱の塊が秘所に触れ、晴香は思わず息を飲んだ。
「ゆっくりするから」
不安に怯える晴香の頬を優しく撫で、そうして葛城は言葉通りゆっくりと腰を推し進める。
「ふ……ッ、ぅ……ん……」
念入りに解されたお陰か痛みはあまり感じない。何度も高みに押しやられ下半身にほぼ力が入っていないのもあるのだろう。
だが、それでも晴香の胎内は狭かった。圧迫感がとにかく凄まじい。無理矢理押し入ってくる異物を拒むかの様にギチギチで、その苦しさに晴香は息をするのも忘れそうになる。苦悶に顔が歪む。
「痛いか?」
「痛いの、は平気、なんですけ、ど……くる、し、い、です……」
「息を止めるな。深呼吸できるか?」
「う……がんばり、ます」
どうにか呼吸を整えようとするが上手くいかない。苦しい、熱い、あとやっぱりちょっと痛いかも、と意識が混濁しそれに呼吸が釣られてしまう。
は、は、と浅く短い呼吸を繰り返していると葛城の手がゆるゆると晴香の太股を撫でる。しばらくそうやって撫でられていると、強張った脚から徐々に力が抜けていく。その間に唇にも労りのキスが落とされ、晴香の息は少しずつ落ち着き始めた。
やわやわと唇を食まれ、舌で味わうように何度も舐められる。晴香は腕を伸ばし葛城の首に回した。軽く引き寄せ自らも唇を合わせる。深く舌を絡めるキスはまだ慣れないけれど、この軽く触れ合うキスは気持ちがいい。好き、もっと、と晴香が求めると、葛城もそれに応えて唇を重ねる。体温までもが混ざり合い、晴香はいつしか夢中になっていった。
「ぅ、んッ」
不意に体の奥にこれまで感じた事のない衝撃が走る。晴香は思わず唇を離し声を漏らした。 何事かと驚く晴香に、葛城はゆっくりと息を吐いて正面から見詰める。
「全部……入った」
葛城は少しばかり身を起こすと晴香の頭を優しく撫でた。
「頑張ったな」
「ぜん、ぶ……?」
「奥まで入ったよ」
奥、と晴香は呟く。確かに体の中奥にこれまでになかった熱量が存在している。
「落ち着くまでしばらくこうしてるから」
葛城の言葉に頷きながらも晴香の脳はあまり意味を理解していない。それよりも今感じている事の方が気になって仕方が無い。
「すごい……」
なにが、と不思議そうに葛城が見つめてくるのに対し、晴香は自分の腹を撫でながら感嘆の声を上げる。
「中に……先輩がいる」
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