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裸足の花嫁~日陰の王女は愛に惑う~⑪
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奥方のそんな態度に、チュソンが傷つかないはずはなかった。奥方にとっては〝望み通りの良い子〟でいるときだけ、チュソンは愛すべき対象なのだ。
その癖、チュソンの一挙手一投足に眼を光らせ、あれをしろ、これは駄目だと口出しをする。チュソンも八歳、そろそろ母親のこの身勝手ぶりには愛想を尽かしかけている。チュソンが母親に対して距離を置こうとすることが、余計に母子関係を複雑なものにしている。そのことについて、チョンドクは心を痛めていた。
チョンドクの心なぞ知らぬげに、チュソンは元気よく言った。
「チョンドク、ついに女神が降臨したぞ」
チョンドクは半ば呆れ顔で返した。
「何を訳の判らないことを言ってるんですか」
「それがだな」
チュソンは下町で出逢った少女ジアンの話を早速、兄とも思う乳兄弟に打ち明けた。
ジアンの話ついでに、彼女が身を挺して庇おうとしたセナについても話した。
「そういうわけだから、もしセナという女の子が僕を訪ねてきたら、追い返さずに取り次いで欲しい」
「やれやれ、若さまのお節介がまた始まりましたね」
溜息をつくチョンドクに向かい、チュソンは林檎を放り投げた。
「そなたこそ、ぶつぶつと口煩い奴だ。やはり当分の間、〝男乳母〟という呼び名は返上してやれないな」
チョンドクは林檎を発止と受け止める。
「何ですか、まだ男乳母なんて言ってるんですか。だったら、〝男乳母〟を早く卒業させて下さい。今し方だって、俺は本気で心配しましたよ」
「何を?」
チュソンはさも美味しそうに林檎を囓っている。チョンドクは頭を抱えたくなった。
「いきなり女神降臨だなんて言うものだから、勉強のしすぎで本当に頭がイカレちまったのたかと」
チョンドクが人差し指で自分の頭をつついた。チュソンが言った。
「何だ、失礼な奴だな」
言葉とは裏腹に、チュソンは笑っていた。
「心配するな。僕は狂うほど勉強はしていない」
と、チョンドクが至極あっさりと納得した。
「確かに、今日も怠けましたもんね」
「ますますもって、失礼だ」
笑い出したチュソンめがけて、林檎が寄越された。チュソンも器用に片手で林檎を受け止める。
乳兄弟は、それぞれが相手に林檎を渡そうと二個の林檎をちゃんと持ち帰っていたのだ。それはそのまま、互いを想い合う二人の心、繋がりを表している。
チュソンにとって、ジアンとの出逢いはまさに初恋であった。
恐らくと、チュソンは考える。こういうのを人はひとめ惚れと呼ぶのだろう。
チョンドクが先に築地塀によじ昇り、塀の向こうへと消えた。続いてチュソンも塀を猿のように器用によじ登り、無事、地面に着地する。丁度、この辺りには広大な庭の最奥部に当たり、使用人たちも滅多とここまでは来ない。
そのため、悪童二人が抜け出すには格好の場所となっている。
チュソンは頭上を振り仰いだ。今は何も無い木の枠組だけが天井のように広がっている一角だ。初夏になれば、この木枠には蔓が絡みつき、小さな花たちが集まった花房が重たげに垂れ、藤の花が満開になる。藤の花が満開になると、この辺り一帯は噎せ返るような甘い花の香りで満たされる。
今、藤の樹は葉はすべて黄色く紅葉し、落ち始めている。花が咲いている華やかな時期とはかけ離れた、ひっそりと淋しげな佇まいだ。
今この瞬間、チュソンの眼裏には爛漫と咲き誇るふた色の藤が艶やかに清楚に咲き誇っていた。いつかここで満開の藤の花を彼女と眺められたならー。
彼女の笑顔は僕が守る。
改めて決意を胸に蘇らせる。恍惚りと何も無い寒々とした藤棚を見上げるチュソンを、チョンドクが心配げに見ているのにも気づかない。それほど、天才と呼ばれる少年の心はジアンのことしかなかった。
「若さま、とにかく室に戻りましょう。きっと先生はもうお帰りでしょうし、奥方さまがお待ちですよ」
いつものように、まずは乳母のヨニにこってりと油を絞られ、最後に母からお説教を喰らうのは勉学の時間にこっそりと抜け出した日はいつものことだ。最悪、今日は帰るのも遅かったから、母が鞭を持ちだしてくるかもしれない。
脹ら脛を細い鞭で幾度も打たれるのは、何度経験しても嫌なものだ。数日間は、歩く度に悲鳴を上げそうになるほどの傷を追わねばならない。
チュソンがいつも母にこっぴどく鞭で打たれた後、乳母のヨニは哀しそうな表情でチュソンの脚を冷やし、傷によく効くという塗り薬を塗ってくれる。その度にヨニは
ーお願いですから、奥さまを怒らせるようなことは慎んで下さいまし。
と言い、チュソンはもう二度としないと約束する。ーが、約束を守った試しはない。
「若さま!」
チョンドクが前方からせき立てるように呼んでいる。どこかで、花の甘い香りがかおったような気がして、チュソンは名残惜しげに後方をもう一度振り返った。
十年の後
だが、チュソンは己れの認識を改めざるを得なかった。八歳のチュソンの読みは明らかに甘すぎた。その辺り、やはり神童と呼ばれてはいても、所詮は八歳の子どもの考えにすぎなかったのだ。
チュソンは後年、認識の甘さを嫌というほど知ることになった。
そう、結局、パク・ジアンと名乗るあの美少女に再びあいまみえることは叶わなかったのである。
並外れた美少女であったこと、自分とほぼ同年齢であったこと、パク・ジアンという名、あの娘について知っているのは、ただそれだけだった。都にはパク・ジアンという名の女の子は珍しくはない。両班家に限定して心当たりは探してみたけれど、やはり同名のその歳頃の少女は見つからなかった。
更に間の悪いことに、ジアンと出逢った二年後、父は政変に巻き込まれてしまった。正しくいえば、起こるはずだった政変は内通者の密告により、未然に防げたのだ。父はその政変に荷担していたわけではなかったのだが、一味の一人とは酒を酌み交わすほどの親しい間柄であった。
そのことで痛くもない腹を探られ、祖父の領議政は大事を取って末息子を一時、都から遠ざけることにしたのだった。要するに都落ち、左遷である。父は全州の県監を八年間務め上げた。彼(か)の地では前任の県監の暴政により、民たちの不満が暴発寸前だった。父は民たちから代表を選ばせ、彼らを役所に呼んで一人一人から実状を詳しく聞いた。その上で改めるべきところは改め、民に寄り添う政治を行ったため、
ー新しい県監さまは鬼のような冷酷非道な前の県監に比べて、神さまのようだ。
と、民たちに慕われた。
名代官としての父の評判は都にも届き、八年後、父は左遷前に勤務していた兵曹の長官として朝廷に返り咲いた。
領民たちは民思いの父が離任し都に戻ると知るや、涙を流して別れを惜しんだ。
政変未遂の余波も静まり、ほとぼりも冷めた頃合いと見た祖父の計らいでもあった。チュソンは父が任地に下向するのに従い、母と共に全州に向かった。そこで八年を過ごし、兵曹判書に躍進した父と再び都の地を踏んだのである。
一家が全州にいる間も、都の屋敷には使用人が残っていた。そのお陰で、一家はまた何事もなかったかのように、屋敷に落ち着くことができた。屋敷は八年前と変わらず、掃除もゆき届き、広い庭には美しい花が咲き乱れていた。
折しも一月の下旬とて、庭には寒椿の艶やかな真紅の花を盛りと咲かせていた。家の前から続く石段を辿り、門から敷地内に足を踏み入れた刹那、母は堪えていたものが溢れていたように足を止め、落涙した。
チュソンはそんな母の肩を労るように抱き、自分も八年ぶりに見る我が家を感慨深く眺めたのだった。
翌日から母はまた女中たちにてきぱきと指図し、屋敷内の改装に追われた。八年間、使用人たちはよく屋敷を守ってくれた。しかし、家具なども流行遅れになっているもの、窓に下げる帳など色褪せているものもある。
母は綺麗なものに囲まれて暮らすのが好きなのだ。そんな母にとっては耐えがたいことなのだろう。また、かつての色彩を失った品々は、任地で過ごした忍従の八年を母に改めて思い起こさせたようだ。チュソンには田舎暮らしもなかなかに興味深いものであったけれど、母はいつも華やかな都を恋しがっていた。地方での日々は、あまり思い出したくないものなのかもしれない。
父は連日のように王宮に出仕し、チュソンもまた吏曹正郎として父と共に宮仕えを始めた。昨年、科挙が大々的に行われ、チュソンは全州からはるばる都に上った。都にいる間は父の屋敷ではなく、領議政たる祖父の屋敷に滞在し、科挙を受験したのだ。
その癖、チュソンの一挙手一投足に眼を光らせ、あれをしろ、これは駄目だと口出しをする。チュソンも八歳、そろそろ母親のこの身勝手ぶりには愛想を尽かしかけている。チュソンが母親に対して距離を置こうとすることが、余計に母子関係を複雑なものにしている。そのことについて、チョンドクは心を痛めていた。
チョンドクの心なぞ知らぬげに、チュソンは元気よく言った。
「チョンドク、ついに女神が降臨したぞ」
チョンドクは半ば呆れ顔で返した。
「何を訳の判らないことを言ってるんですか」
「それがだな」
チュソンは下町で出逢った少女ジアンの話を早速、兄とも思う乳兄弟に打ち明けた。
ジアンの話ついでに、彼女が身を挺して庇おうとしたセナについても話した。
「そういうわけだから、もしセナという女の子が僕を訪ねてきたら、追い返さずに取り次いで欲しい」
「やれやれ、若さまのお節介がまた始まりましたね」
溜息をつくチョンドクに向かい、チュソンは林檎を放り投げた。
「そなたこそ、ぶつぶつと口煩い奴だ。やはり当分の間、〝男乳母〟という呼び名は返上してやれないな」
チョンドクは林檎を発止と受け止める。
「何ですか、まだ男乳母なんて言ってるんですか。だったら、〝男乳母〟を早く卒業させて下さい。今し方だって、俺は本気で心配しましたよ」
「何を?」
チュソンはさも美味しそうに林檎を囓っている。チョンドクは頭を抱えたくなった。
「いきなり女神降臨だなんて言うものだから、勉強のしすぎで本当に頭がイカレちまったのたかと」
チョンドクが人差し指で自分の頭をつついた。チュソンが言った。
「何だ、失礼な奴だな」
言葉とは裏腹に、チュソンは笑っていた。
「心配するな。僕は狂うほど勉強はしていない」
と、チョンドクが至極あっさりと納得した。
「確かに、今日も怠けましたもんね」
「ますますもって、失礼だ」
笑い出したチュソンめがけて、林檎が寄越された。チュソンも器用に片手で林檎を受け止める。
乳兄弟は、それぞれが相手に林檎を渡そうと二個の林檎をちゃんと持ち帰っていたのだ。それはそのまま、互いを想い合う二人の心、繋がりを表している。
チュソンにとって、ジアンとの出逢いはまさに初恋であった。
恐らくと、チュソンは考える。こういうのを人はひとめ惚れと呼ぶのだろう。
チョンドクが先に築地塀によじ昇り、塀の向こうへと消えた。続いてチュソンも塀を猿のように器用によじ登り、無事、地面に着地する。丁度、この辺りには広大な庭の最奥部に当たり、使用人たちも滅多とここまでは来ない。
そのため、悪童二人が抜け出すには格好の場所となっている。
チュソンは頭上を振り仰いだ。今は何も無い木の枠組だけが天井のように広がっている一角だ。初夏になれば、この木枠には蔓が絡みつき、小さな花たちが集まった花房が重たげに垂れ、藤の花が満開になる。藤の花が満開になると、この辺り一帯は噎せ返るような甘い花の香りで満たされる。
今、藤の樹は葉はすべて黄色く紅葉し、落ち始めている。花が咲いている華やかな時期とはかけ離れた、ひっそりと淋しげな佇まいだ。
今この瞬間、チュソンの眼裏には爛漫と咲き誇るふた色の藤が艶やかに清楚に咲き誇っていた。いつかここで満開の藤の花を彼女と眺められたならー。
彼女の笑顔は僕が守る。
改めて決意を胸に蘇らせる。恍惚りと何も無い寒々とした藤棚を見上げるチュソンを、チョンドクが心配げに見ているのにも気づかない。それほど、天才と呼ばれる少年の心はジアンのことしかなかった。
「若さま、とにかく室に戻りましょう。きっと先生はもうお帰りでしょうし、奥方さまがお待ちですよ」
いつものように、まずは乳母のヨニにこってりと油を絞られ、最後に母からお説教を喰らうのは勉学の時間にこっそりと抜け出した日はいつものことだ。最悪、今日は帰るのも遅かったから、母が鞭を持ちだしてくるかもしれない。
脹ら脛を細い鞭で幾度も打たれるのは、何度経験しても嫌なものだ。数日間は、歩く度に悲鳴を上げそうになるほどの傷を追わねばならない。
チュソンがいつも母にこっぴどく鞭で打たれた後、乳母のヨニは哀しそうな表情でチュソンの脚を冷やし、傷によく効くという塗り薬を塗ってくれる。その度にヨニは
ーお願いですから、奥さまを怒らせるようなことは慎んで下さいまし。
と言い、チュソンはもう二度としないと約束する。ーが、約束を守った試しはない。
「若さま!」
チョンドクが前方からせき立てるように呼んでいる。どこかで、花の甘い香りがかおったような気がして、チュソンは名残惜しげに後方をもう一度振り返った。
十年の後
だが、チュソンは己れの認識を改めざるを得なかった。八歳のチュソンの読みは明らかに甘すぎた。その辺り、やはり神童と呼ばれてはいても、所詮は八歳の子どもの考えにすぎなかったのだ。
チュソンは後年、認識の甘さを嫌というほど知ることになった。
そう、結局、パク・ジアンと名乗るあの美少女に再びあいまみえることは叶わなかったのである。
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ー新しい県監さまは鬼のような冷酷非道な前の県監に比べて、神さまのようだ。
と、民たちに慕われた。
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領民たちは民思いの父が離任し都に戻ると知るや、涙を流して別れを惜しんだ。
政変未遂の余波も静まり、ほとぼりも冷めた頃合いと見た祖父の計らいでもあった。チュソンは父が任地に下向するのに従い、母と共に全州に向かった。そこで八年を過ごし、兵曹判書に躍進した父と再び都の地を踏んだのである。
一家が全州にいる間も、都の屋敷には使用人が残っていた。そのお陰で、一家はまた何事もなかったかのように、屋敷に落ち着くことができた。屋敷は八年前と変わらず、掃除もゆき届き、広い庭には美しい花が咲き乱れていた。
折しも一月の下旬とて、庭には寒椿の艶やかな真紅の花を盛りと咲かせていた。家の前から続く石段を辿り、門から敷地内に足を踏み入れた刹那、母は堪えていたものが溢れていたように足を止め、落涙した。
チュソンはそんな母の肩を労るように抱き、自分も八年ぶりに見る我が家を感慨深く眺めたのだった。
翌日から母はまた女中たちにてきぱきと指図し、屋敷内の改装に追われた。八年間、使用人たちはよく屋敷を守ってくれた。しかし、家具なども流行遅れになっているもの、窓に下げる帳など色褪せているものもある。
母は綺麗なものに囲まれて暮らすのが好きなのだ。そんな母にとっては耐えがたいことなのだろう。また、かつての色彩を失った品々は、任地で過ごした忍従の八年を母に改めて思い起こさせたようだ。チュソンには田舎暮らしもなかなかに興味深いものであったけれど、母はいつも華やかな都を恋しがっていた。地方での日々は、あまり思い出したくないものなのかもしれない。
父は連日のように王宮に出仕し、チュソンもまた吏曹正郎として父と共に宮仕えを始めた。昨年、科挙が大々的に行われ、チュソンは全州からはるばる都に上った。都にいる間は父の屋敷ではなく、領議政たる祖父の屋敷に滞在し、科挙を受験したのだ。
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