ようこそ異世界転生案内所へ

縁 遊

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7. 宿泊客

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 文化の違いとはややこしいものですよね。今日のお客様はどうやらヨーロッパ圏の人でした。

 普段は日本人のお客様が多いので異世界転生の話しもスムーズに進むのですが、違うとなるとお話が難しいのです。

 日本では異世界転生の漫画やライトノベルなどが流行っているので日本人は異世界に対しても抵抗なく、職業の説明も簡単にすむのです。

 しかし、他の国ではそうはいかず…。

 ほとんどの方は異世界の話から始まり職業の説明も1つひとつ丁寧に説明しないといけないのでものすご~く時間がかかります。人によっては3日もかかった人がいましたね。

 そこで私は考えました。

 時間を短くするためにここに宿泊してもらい、その際に日本の異世界転生の漫画を読んでもらうようにしたのです。

 それは大当たりでした。

 説明の時間が少なくなったのです。今までの半分以下です。それが…今日のお客様は少し違いました。

「なぜ、ココにず~といてはだめ?」

 金髪にグレーの瞳の大柄なお客様は先程からずっとこの調子なんです。

「ここは次の世界への中継場所であって、目的地ではないからです。」

「私はココでず~とマンガを読んでいたいです。」

 そうなんです。本日のお客様はマンガを気に入ってしまったらしく、全部読み終えるまでずっとここにいたいと言って聞かないのです。

 はぁ~。

 はじめての事すぎてどうして良いか…。

「日本のマンガおもしろい!知らなかった!」

 私も面白いと思いますが、ずっとここにいられるのは困ります。

 そうだ!

「では、今から行く世界で本屋をしてみてはいかがですか?」

「本屋?」

「はい。本屋さんを開くのであれば仕入れはお手伝いさせていただきますよ。」

「そこにマンガを置くのか?」

 それをしてしまうと文化の違いがあるので大変な事になるでしょうね。

「残念ながら店頭に置くのは無理ですがお一人で楽しまれるならご自宅に送らせていただきますよ。本屋をしてるなら家に変わった本があってもおかしくありませんからね。」

「なるほど、そういうことか。」

 分かっていただけたみたいですね。良かったです。

「わかった。本屋するよ。」

 やっと決めていただけたみたいですね。

「ではどんな国が良いとかの希望はありますか?」

「平和な国なら嬉しいです。」

 そうですね。

「見た目の希望は?」

「今とあまり変わらなくても大丈夫ならこのままで良いな。」

 今のご自分に満足されていいるのですね。珍しいですね。ほとんどの人がもっと背を高くとか目をパッチリにとか色を変えたいとかおっしゃるのですが。

「お名前はどうします?」

「それも変えなくていいなら今のままが良い。」

 そうですか…まあ今のままでも大丈夫でしょう。

「他にこんなスキルが欲しいとかありますか?」

 お客様が急に目を輝かせて顔を近づけてきました。

「それも聞いてもらえるのですか?!マンガの様になれるのですね。」

 どのマンガをさして言っているのかはわかりませんが、ある程度の希望は叶えられます。

「何かあるのですね。」

「私…憧れていたのです。ハーレムに!」

 そっちでしたか…。

 ですが、勇者様でハーレムならありますが本屋の店主でハーレムは…難しいですね。どう設定すれば上手くいきますかね。

「私は趣味で絵を描いていました。沢山の綺麗な女性を描いてみたいと思ったまま、ここに来てしまった。だからハーレムを作り綺麗な女性達を描いてみたいです。」

 あ~、少し目的が違うのですね。

 そうですね~、本屋でモテる男…。知的な男性がモテる国を探してみましょうか。

 ついでにスキルに記憶保持を加えて現世の記憶も活かしてもらいましょう。

「ありましたよ、ご希望の国。」

「ホント?!」

「はい。」

「そちらの扉を開けていただいたらその国に繋がっています。準備ができたらご自分で開けてくださいね。」

 驚いた顔をしてますね。

「え…この扉を開けたら異世界なのか?スゴいな。」

 あれ?戸惑っていますか。

 大きく深呼吸してますね。

「よし!行くよ。ありがとね。楽しんでくるよ!」

「宜しいですか?」

 どうやら違ったみたいですね。楽しみでワクワクしているみたいです。

「では、バ~イ!」

 軽い感じですね。

「クロード様、良い転生人生をお過ごしください。ご利用ありがとうございました。」

 クロード様は笑顔で一度手を振ると後ろを見ること無く扉を閉じられました。

 宿泊最長記録にならなくて良かったですよ。

 次回のお客様はマンガ好きな方だと助かります。



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