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10. 領地の謎
しおりを挟む分かったかな?そう…八岐大蛇と同じ。何て読むかって?ヤマタノオロチと読むんだ。
聞いたことはあるよね?俺も山田じゃなくて八岐?変わった名字だなと思っていたくらいで分かっていなかったんだけど、龍達に色々と教えてもらいながら龍使いの勉強をしていくうちにアレ?って気がついた。
これはきっと龍神様の仕業だと思ったよ。我が家には先祖は龍と交わりがあったと言い伝えられていることを考えても異世界とはいえ繋がりはあるのかもしれないと俺は思っている。
まあ日本では悪者だったからね。あまり深くは聞かないことにしているんだけどね。
おっと、話がそれていたね。本題に戻さないと…。
「そちらは…。」
執事は僕が誰だか気になるみたいだな。それはそうか。子供が一緒に調査に来るなんて事は普通はないよね。
「初めまして、八岐の息子の竜と申します。」
僕は子供らしく見えるように可愛らしい声を意識しながら挨拶をした。
「失礼しました。御子息だったのですね。しかし…今回はどうしてご一緒に来られたのでしょうか?」
はい、予定通りの質問がきました。父さん準備してきた通りに頼んだよ!
「実は息子は龍の研究をしていましてね。今回の件でお役に立てるかもしれないからついて行きたいと言って聞かなかったんです。いや~、申し訳ないですが邪魔はさせませんので同席させていただきたいと思うのですが…」
これは両親と一緒に考えた作戦。名付けて「親バカ作戦」だ。相手を油断させる事ができるだろう、ということで決定したんだけど…上手くいくかな。
ここはもうひと押しが必要かな。
「僕、大人しくしています!龍と僕は友達なのです!友達が怒っているなら助けたいのです!お願いしますからここに居させて下さい!」
俺は子供らしく目を潤ませながら執事の前に行き両手を顔の下で組んでお願いポーズをした。
これでなかなか断れないだろう!
うん、中身は大人だから許されるが…これが本当の子供なら性格が悪すぎるな。自分でも自覚はしてるから何も言わないで優しく見守ってほしい…。
「そうなのですね。分かりました。」
よっしゃ~!
俺は父さんとチラッと目を合わせて笑った。父さんの笑いは時代劇で見た悪代官の悪い顔になってる。ここで俺がセリフを言うなら「おぬしも悪よの~」かな(笑)
何はともあれ、了解をもらえて良かったよ。これを拒否されるとこの後の調査ができなかったからね。
俺達は執事に案内されて応接室に通された。やはり思っていた通り領主は帰ってきていないみたいだ。
「申し訳ないですが王都で急用ができこちらには来ることができないとの事で、私に皆さんに協力するようにと言われました。私にできる事でしたら何なりとお申し付け下さい。」
慣れているよね。いつもこんな感じなんだろうなっていうのが分かる。
王都で急用?父さんに対してもその理由で通そうとしているのが凄いよね。やはり噂通りの人なのかと想像させるな。
「早速で悪いが聞きたいことが何点かある。まずは川の近くに建っている建物について聞きたい。」
川に大量の汚れた何かを放出していた建物だね。
「あれは旦那様が進められている領地の事業の1つで、製造工場となります。」
「製造工場?何の?」
「申し訳ありません。何を製造しているのかは私には教えてもらっていないのです。知っているのは旦那様と工場で働いている者だけなのです。」
執事の中条さんは顔色を変えずに淡々と話している。
怪しすぎる…。誰も知らない製造工場なんていかにも人に言えない物を製造しています!って感じだよね。
「それではもう1つ、農地を見に行ったのだが…今は農業は行っていないのだろうか?」
中条さんの目元が少しピクッと動いたのが俺には分かった。
「…そうですね。今日視察に行かれた場所では何も作っていません。」
やっぱりね。あんなに荒れた土地では何も作れないよね。
「僕からもお聞きしたいことがあるのですが良いですか?」
どうしても納得が出来ないことがあるんだよ。
「ここの領民は何処に住んでいるのですか?」
中条さん、今度は口元がヒクヒクしていますよ。
「…大変申し上げにくいのですが、領民は地上には住んでいません。先程申し上げた工場の地下に暮らしています。」
「工場の地下に?!」
いやいや、身体に悪いだろ。…と言うか工場の為に拘束しているのか?
「領民達は自由に外に出る事はできないのですか?今日ここに来るまで誰一人見なかったので気になっていたのです。」
中条さんは黙っているけど、まばたきが多くなっている。これは嘘をつく時にでやすいんだよね。
「…そんな事はないと思います。」
何かは知っていそうだな。実はここに来て初めて龍の姿を確認したんだけど…。それは中条さんについている龍なんだ。
その龍が俺に話しかけてくるんだ。
『こいつを助けてやってくれ…』ってね。
中条さんについている龍はかなり弱っている。これは中条さん自身の心と身体が弱っている事と繋がる。
龍使い(見習い)としては助けないといけないよね。
さあどうやって助けようかな。
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