龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

文字の大きさ
16 / 86

16. 逃亡計画立案中

しおりを挟む


「工場で作っているのは…王都の貴族の間で流通している幻覚薬です。」

 真留さんは言いにくそうに話し出した。

「え!?今、世間を賑わせている幻の薬のことですよね?」

 これが怪しい商品なんだよ。「ドリーム」っていう商品名で睡眠薬として人伝に売っていたみたい。売り文句も「あなたの見たい夢が見れます!」って言っていたらしいけど、実際は分かりやすく言えば中毒症状を引き起こす悪魔の薬だったんだ。

 それが分かったのは最近になってから。流行ったのは少し前だったから、今頃気がついても手遅れ状態の中毒者が沢山出て大変な状態になっているらしい。新聞の一面に載っていたよ。

 騒ぎになった途端にその薬は手に入らなくなったみたいで中毒者が暴れたり、高値で売買されていたりするので「幻の薬」と今は言われているんだ。

「私達も知らなかったんだ。本当に薬だと思って製造していたんだが…。」

「いつ気がついたんですか?」

 あの薬はかなり高価で農民の皆さんの買える様な薬ではないはず。気がつかなくても当然だ。

「それが…薬を黙って持ち出して飲んでいた村人がいて、そいつの様子がおかしくなって気がついたんだよ。」

 どこにでもそんな人はいるんだね。

「その人はどうなったんですか?」

「分からない…。半狂乱の状態になっているのを見て工場の見張りの奴らに気がつかれたんだけど、その後何処かに連れて行かれて…そのまま姿を消したんだ。」

 うわぁ~、ブラックな感じですね。たぶん、残念ですが生きてはいないでしょうね。少しの興味で身を滅ぼしてしまったのですね。

「俺達はそれくらいから24時間をこの地下で過ごさないといけなくなったんだ。それまでは何時間か外に出て農地を耕す時間をもらえていたんだけどそれも今は無くなってしまった。」

「この生活を強制されているのですね。」

「ああ。俺達はどうすればこの生活から抜け出せるのかを話し合っていたんだが、俺達だけではどうにもならないと諦めかけていたんだが、そこに君が現れた。」

 おお!俺が救世主になるわけだね。いや、正確には父さんかな。

「それで皆さんが立てていた計画というのは?」

「実は見張りの奴らに見つからないように抜け穴を作っていたのが最近やっと外と繋がったんだ。だからそこから少しずつ人を外に逃がそうかと考えていた。でも、問題があって…」

「問題って、外に出てからの避難経路と安全確保ですね。」

 黙って話を聞いていた、青年団(勝手につけました)の男性が驚いた顔をして俺を見た。

「あんた何歳なんだ!?」

 いけね。俺はこの世界ではまだ8歳の子供だった。まあ、神童って事にしてくれないかな?ここは笑顔で誤魔化しておくか。

「へへっ…。」

「どうやら話が分かる子供の様だな。」

 真留さんもね。

「そう、問題は女性達と子供を先に逃がす事になるがアイツらに見つからないように逃げられる事だったんだ。俺達は最後にしないとすぐにアイツらに気がつかれてしまうからな。一緒に逃げる事も考えたが…遠くまでは子供を連れて逃げる事はできないと判断して止めたんだ。」

 確かにそれが賢明だと思う。馬車でも使えれば良いけど地下にいて手配なんてできないだろし、徒歩だと逃げられる距離はしれている。すぐに捕まってここに帰ってくることになるよ。

「僕達が逃げられる様に馬車を手配します。その方が遠くまで逃げる事ができますよね。」

「有難い。そうしてもらえると助かる。」

 これは父さん達にまた連絡をしないといけないな。他にも必要な物は…。

「そうだ!良いことを思いつきました!」

「え?良いことですか…」

「はい!皆さんがもっとも安全にここを逃げ出せて安心して住める場所まで行く方法です。」

 そうだよ。何でこんな簡単な事を思いつかなかったんだろう!

「そんな方法があるんですか?」

「あります。僕を信じて下さい。」

 俺は集まっている青年団のみなさんに計画を話した。

「計画は………。」

 みんな真剣に俺の話を聞いてくれていた。

「そんな方法があったなんて…。」

「たしかに盲点だったな。」

「いや、俺達だけではこれはできなかった。」

「そうだな、身分が高くないとできないぞ。」

「これなら心配いらないよな。」

 青年団のみなさんは納得してくたみたいだ。

「質問はありませんか?大丈夫ですか?」

  手を挙げたのは真留さんだった。

「あの…本当に俺達は捕まらないんだよな?」

「はい。心配はいりません。ただ、事情聴取はされると思いますが牢屋に入れられることはありませんよ。」

 俺の話を聞いて青年団のみんなの顔つきが変わった。

「それならこの計画にかけるよ」

「「「「「俺達も!!!!」」」」」

 青年団のみなさんは全員賛成してくれました。俺の計画で決行だ!

 楽しくなってきた~!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...