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19. やっと来た
しおりを挟む「あ、どうもこんにちは!」
俺は必殺技の最高の笑顔攻撃でかわそうと試みた。
「あ~ん?お前見ない顔だな?何をへらへら笑って挨拶なんかしてんだ。」
うっ…笑顔攻撃は通用しないか。残念。
「大きな畑を見つけたら何かなって思って見てたの~。」
次なる作戦は子供攻撃。子供だから分からないや~を押し通すというものだ。
「はあ?お前…もしかして外から来たのか?」
「…お外?って…」
ここは惚(とぼ)けるに限るだろう。
「外を知らないのか?」
「僕…お家から出ないから。」
その時だった急に外から大きな音が聞こえてきた。
バアーン!ドオーン!!
「な、何だ?!何事だ?!」
見張りの男は慌てて地下の入り口の方に確認に向かった。
「やっと来たのか…。」
たぶんあの大きな音は父さん達が来た合図だと思う。そうなると俺がすることは…。
「村のみなさ~ん!準備をしてくださ~い!」
俺は叫びながら村中を走り回った。皆に聞こえてるかな?
「うわぁ!なんだお前らは!!兄貴~!!!大変だー!!!」
さっき入口に走っていった男が大声をあげている。
「暴れるな!じっとしていろ!我々は警備隊だ!」
やっぱり父さん達がきたみたいだ。
そう、俺の考えた作戦は名付けて"逃げないで堂々と出ていこう作戦"だ。
どういうことかって?
作戦は簡単なんだ。ここから逃げるとなれば前にも話に出たように色々と大変な事があるから、どうにかしてもっと簡単にここからでる事は出来ないかと考えていたら思いついたんだよ。
王都の警備隊が捕まえに来てくれれば悪い奴らは手を出せないし、身の安全も保証される。
それに歩いてここを出なくてよくなる。馬車に乗せられるからね。まあ、王都に行けば父さんの力で後はなんとかなるからね。
取り敢えずここの領民を他から手を出されずに安全にここから脱出させる手段としてはこの方法が最適だと思ったんだよね。
いかに王妃といえども人が大勢いる前で領民達に手出しはできないだろうし。
「竜!大丈夫だったか?!」
「お父様…。ありがとうございました。こんなに早く手配してくださるなんて…さすがお父様ですね!」
頑張ってもらったから誉めておかないとね。父さんお疲れ様です。
「お前に何かあったら…と考えただけでゾッとした。一刻も早く兵を出すように王様に訴えたんだ。王妃がかなり邪魔だったがな…。」
父さん最後は悪い顔になってるけど、何をしたの?俺達家族には優しい父さんだけど敵には容赦ないからな…。後で調べよう。
「竜くん…。」
咲里ちゃん家族が俺達の所にやって来た。
「お父様、僕がお世話になっていた家族の皆さんです。」
「初めまして、竜の父です。竜がお世話になりました。感謝します。」
父さんが感謝の言葉を述べると真留さんはどうしていいか分からない様な感じになっていた。
そうだよね、普通この世界の身分の高い人間は身分が下の人達にお礼など言わない。態度がでかすぎる人が多いのだ。だが、俺の父さんは違う!身分で人を見てはいけない。礼儀は大切だという人なのだ。
そんな父さんを俺は尊敬している。
「い、いえ、そんな…頭を上げて下さい。お礼なんて…。俺達に言わなくても良いです。俺達こそ最初は竜くんが身分の高い子供だと知らなくて…その…すいません。」
真留さんも頭を下げて謝っている。謝る必要なんてないのに…。
「真留さん、頭を上げて下さい。今は悠長に構えている時ではありません。」
僕が父さんとは真留さんの間に立って話をしていたら大声が聞こえてきた。
「うわぁ~!やられたぞー!!」
その時畑の方が真っ赤になった。
「どうしたんだ!」
父さんが部下に確認したら、どうやら畑に火を着けた奴がいるらしい。証拠を燃やそうとしたんだね。思った通りというか…。
「あ!父さん!この先に工場があります。そちらも危険かと…。」
「何!そうだな。急ぐぞ!」
「俺が工場まで案内します。」
真留さんが案内役をかって出てくれた。父さん達は真留さんと共に工場に向かった。
「私達は畑の火の消火活動に参加してくるわね。あなた達はここにいてね。」
真留さんの奥さんは畑へ向かう。
咲里ちゃんが俺の手を取り繋いできた。不安なのかな?
「大丈夫だよ。すぐに皆は帰ってくるよ。」
俺は安心させようと咲里ちゃんに話しかけた。
「…うん。」
その時、地下なのに信じられないくらいの大きな風を感じた。体を飛ばされそうな程の凄い突風だ。
「何だこの風は!?咲里ちゃん大丈夫?」
手を繋いでて良かったよ。咲里ちゃんが飛ばされている所だったな。もしそうなっていたら俺は真留さんに殺されるな…。ハハッ…冗談にならない。
それにしても何だったんだ?
『龍使いよ。あれは私が起こした風だ。』
声と共に現れたのはとてつもなく大きい銀色の龍だった。
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